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講談社現代新書『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』感想

小林美希『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』講談社現代新書 2022年12月刊

 

 

今月出たばかりの新刊ですね。年収443万円というのは国税庁が公表している給与所得者の平均の数字らしいです。正社員も非正社員も含めての数字なので、正社員だけの平均は508万円らしいです。

けっこう絶妙にリアル感ある数字というか、感覚としてもこれくらいなのだろうなぁという数字と思いました。正社員の平均で500万円、たぶん東京都内だともっと高くなるのでしょうけど、500万円稼いでいたらすごいなぁという感覚です。私は20代30代のころいくつかの税理士事務所で正社員をしていましたけど、年収500万円になったことがなかったです。300万円とか400万円とかでした。低いなぁと思いながら働いていました。今は40代になって独立開業して、当時とそんなに変わらない人間だと思いますけど収入は増えています。働く場所や働き方によって年収は変わるということなのでしょう。別に能力が高くなったから年収が増えたわけではなく。今が収入をもらいすぎているのか当時が買いたたかれていたのか。

この本は、平均年収くらいで働いている人たちの意外と苦しい生活実態と、平均年収より下で働いている人たちのとても苦しい生活実態について描かれた本でした。私も年収300万円とか400万円とかで働いていたときは貯金もできなかったですし、お金のかかる趣味も持てなかったですし、細々と暮らしている感じでした。

週5日で働いて生活がカツカツというのは、色々とおかしいですよね。社会がおかしいのか、そういう環境で働く自分がおかしいのか、暮らしていけない金額で雇おうとする雇用主がおかしいのか。まぁ全部おかしいと言えるかもしれません。私が社会人になったころもブラックな会社とかブラックな業界とかそういう話題がありますけど、いまだにブラック企業って無くなっていないですよね。時給も1000円くらいのままですし。ブラック企業を法律で規制して無くしていって利益を出せる会社だけを生き残らせていくべきとずっと言われていましたけど、2022年現在でまったくそうなっていないです。けっこう不思議な話だなぁと素直に思います。自己責任の社会だからですかね。2022年になってもこの本のような「安すぎる国の絶望的な生活」な社会という。

この本では、派遣や非正規で働く人口が増えたことや、結婚・出産をすることができない人が増えたことなどが述べられていました。閉塞感の漂う状況ですね。

これだけ何年も言われ続けていて状況が変わっていないということは、きっと10年後も20年後もブラックな働き方は残っていくのだろうと思います。少なくても私は、10年後も20年後も自分の会社はブラックにせずに運営していこうと思います。