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日経プレミア『どうすれば日本人の賃金は上がるのか』感想

野口悠紀雄『どうすれば日本人の賃金は上がるのか』日経プレミア 2022年8月刊

 

 

Kindleで購入しました。本を電子書籍で買うようになってから街の本屋にお金を落とせなくなって悲しいですね。Kindleの代金の一部を本屋へ送れるような仕組みがあればいいのにと思います。気持ちとしては作者、本屋、電子書籍製作者で5:3:2くらいの比率でお金を支払いたい。現状だとどれくらいなのだろう、5:0:5くらいなのかなぁ。

ということで、この『どうすれば日本人の賃金は上がるのか』という本、めちゃめちゃおもしろかったです。今日買って今日中に読破してしまいました。サラリーマン時代は自分の収入が賃金でしたし経営者の今は従業員へ賃金を支払う側として、賃金の仕組みについての話はとても興味深いです。あと、最初の「はじめに」のところでこの本の構成について述べられているのですが、その説明文章がめちゃめちゃ端的でわかりやすくてすごかったです。しかも、この話題のあとはこういう疑問が沸いてくるよなぁという論点がちょうど次章の内容になっていたりして、作者天才なのかなと思いました。

日本人の賃金が上がらない理由は稼ぐ力が無いからだというのがこの本の結論でしたが、とても納得感がありました。儲かっている会社や業界と儲かっていない会社や業界とで給料に差がありますよね。日本は全体的に儲かっている会社や業界が無いので賃金が上がらないと。納得感がありました。付加価値を高めていかないといけないと。

ちなみに私の事務所のアルバイトの時給は2000円ですけど、これは単にそういう社会にしていきたいからというだけの理由ですね。より良い社会のために、社会の持続可能性を考えて行動していくのがかっこいいからですね。1人あたりの付加価値を高めた結果とかではないですね正直。払えるから払っているだけで。

でもなんか、最低賃金で人を雇っているような会社は社会から退場すべきという意見は10年以上前からずっとありますけど、全然そういう社会になっていないですよね。従業員の賃金を削って商品やサービスの値段を抑えて売っているような会社が競争に勝って生き残っていくような社会は良くない、みたいな。それだとブラック企業が蔓延することになってしまう、みたいな。今もたぶんそういうブラックな会社が普通に存続していますよね。まぁ私は従業員にしっかり賃金を支払う事務所を運営していきますけどね。社会が変わらなくても。

従業員1人あたりの固定資産が多い会社ほど賃金が高いという指摘は、興味深かったです。今までその視点で考えたことがなかったですけど、設備投資できる会社ほど利益が出て賃金を増やせるという理屈には納得感はありました。なるほどと思いました。Appleキーエンスのような有形固定資産が無くて利益の多い会社についてはビッグデータなどの帳簿に載らない資産があるのではないかという推測についても、めちゃめちゃおもしろかったです。従来の簿記のシステムでは表現できないものが存在しているのかもしれませんね。存在しているのなら数字で表わしていくしかないですけど、どうやって計上していけばよいのか…、ちょっとおもしろい話ですね。

「日本の生産性が低いのは零細企業が多いから」という言説に対して、むしろ零細・小企業は付加価値の比率が高いので積極的に育てるべきという意見も、おもしろかったです。感覚的には同意しづらい意見ではありますが。

パートタイマーが多いのも賃金が低い原因の1つと書かれてましたけど、パートタイマーの時給って低すぎますよね。時給1000円とかだと、フルタイムで働いて年収300万円に達しないですもんね。やっぱり時給2000円くらいでないと…と思ってしまいます。時給2000円でもフルタイム換算したらそこまで高くないわけですけど。

年功序列で賃金が上がっていくシステムが賃金が低い原因になっているという内容についても、なるほどーと思いました。年功序列のせいでデジタル化が遅れたり、新しい社会状況に適応できなかったり。私も60歳くらいになるころには第一線からは退かないとなぁと思ったりしています。仕事自体はずっと楽しくやっているでしょうけど。

この国の社会システムや風潮が変わっていかないと賃金が上がるのは難しいという話についても、そうだろうなーと思いました。全体的に納得できる内容が多くて、とても良い本だったなぁと思います。まぁ私は私で賃金高くてかっこいい事務所を作っていきたいと思います。