読んだ本の感想など

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住野よる『この気持ちもいつか忘れる』ネタバレ感想

住野よる『この気持ちもいつか忘れる』新潮文庫 2023年7月刊

 

 

※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

法事で広島県へ新幹線で往復したときに、帰りの新幹線の中で読みました。最後、品川駅に着くころにちょうど読み終わるかどうかギリギリで、このまま乗り過ごして東京駅まで行って最後まで読み切ろうか迷うぐらいだったのですが、さすがにきちんと降りて山手線の中で読破しました。

好きな作家は?と聞かれたときにずっと井上真偽と住野よると答えていたのですけど、この住野よるの最近の作品は読んでいませんでした。麦本散歩の~~みたいな感じのタイトルのやつがまったく馴染めず、もう作者の思春期が終わって別物になってしまったのだなーと勝手に思ってました。でも久々に買ってみたら、やっぱりめちゃめちゃ良かったです。最高でした。

思春期っぽい雰囲気は消えたなぁとは思います。キャラクターも完全に記号的というか、リアリティや切実さは無く、エンターテイメントという感じの小説になっていると思います。田中さん斎藤さんの名前オチはおもしろかったですし、どういう展開になるのだろうというわくわくはかなりありました。犬が死んでしまった件に斎藤さんがかかわっているという匂わせはありましたけど、結局真相は謎のまま終わりましたね。異世界人のチカの設定もぼんやりしたまま終わってしまったなぁと感じました。まぁこれはこれで。良かったと思います。

とにかく言葉のセンスが最高ですよね。この作者は。言葉運びが美しすぎる。「一瞬の鼓動が俺の中の本物の濃度をあげていた。」みたいな文章とか、主人公の高まらないようにしているけど高まっている感じがとても伝わってくる。微妙な心理描写の表現がとても上手いですよね。読んでいて、文章表現すごいなあという感動が常にありました。

やっぱりこれからも好きな作家はと聞かれたら住野よると答えていこうと思います。何冊か読んでいなかった作品があるはずなので、それも今から読んでいこうかな。