伊藤朱里『きみはだれかのどうでもいい人』小学館文庫 2021年9月刊
※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。
品川駅の本屋の文庫新刊コーナーで平積みしてあって、購入しました。新幹線の中で何か小説を読もうと思って。広島への行きと帰りの新幹線の中で読破しました。そしていま新幹線の中でノートPCでブログ更新しています。新幹線すいていてとても快適ですね。
この作者の小説は初めて読みましたけど、めちゃめちゃおもしろかったです。というか、文庫化されているのはこの1冊だけなのですね。数か月前に初めての文庫が出た作家ということのようです。おもしろかったから他の小説も買おうと思って調べたら、他に無かった。
職場の人間関係で傷ついたり傷つけたり、そもそも自分の人生の中での家族の悩みなどもあったり、そういう内容の小説でした。4人の視点から順番に語られていく形式でしたが、結構あるあるな話が多くて共感できたり、人間関係で傷つくネタはやっぱり緊張感があって、はらはらどきどきしながら読み進めていく感じでした。4人の視点で語られていくので、この人から見たらこう見えるみたいなのもおもしろかったです。
私は男性なので女性間の立ち振る舞いあるあるなエピソード部分とかはそこまで深くは共感できなかったり、台詞回しがテレビドラマっぽい感じというか大げさというかリアル感無い部分などで共感しづらいところもありました。こんな人いるかな?という感じで。でも、心理描写に説得力はあって、この人の立場ならこう思うだろうと納得しながら読めました。なので、4人それぞれの立場に応援というか、そういう意味で共感しながら読んでいくことができました。
だんだん真相がわかっていく感じというか、須藤さんを4人がそれぞれ傷つけていたのだということがわかっていく感じも、おもしろかったです。倉庫の鍵をなくしたという話から、昔そこに閉じ込められた人がいて、実は現在の須藤さんもちょっと閉じ込められていたということが判明していって、このあたりミステリっぽかったですね。
第四章のForget, but never forgiveというタイトルの意味が複数の方向から解消されていく感じも、とても良かったと思います。色々な意味で複雑というか、この人からはこう見えるみたいなのがどんどん折り重なっていく感じが、良かったですね。読んでいてうまいなぁと思いました。
この作者の他の作品も読んでいきたいですね。文庫化されているのはこの作品だけっぽいのが残念です。これからの作品にも期待ですね。追いかけていこうと思います。