読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

住野よる『青くて痛くて脆い』ネタバレ感想

住野よる『青くて痛くて脆い』角川文庫 2020年6月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

住野よるの新刊が本屋で並んでいて、見かけた瞬間に買いました。私の一番好きな作家がこの住野よると井上真偽です。

住野よるは過去3作すべて泣けました。感情の揺さぶられ具合がすごい。

今作は、前半部分は正直それほど惹かれませんでしたけど、後半は一気読みでした。おもしろすぎて、出かけるときに本を持っていって、移動中の電車の中で読んで、ちょっとした待ち時間で読んで、飲み会の集合時間20分前に着いたからカフェに入って読んで、という感じで読破しました。最後すごい泣ける感じでしたけど、カフェの中だからさすがに涙は流せなかった。

文体が毎回すごい良いのですよね。「喜びに似ていた。」とか、一行ですごいうまいなぁと思いました。あと、弁当は温めるとべちゃべちゃになるからそのまま食べる、みたいな文章が唐突にさらっと差し込まれる感じも、すごいうまいと思います。緩急があるというか。そういう文体も好きです。

今回の主人公像も、とても良かったです。毎回思春期の不器用さを優しく丁寧に描いている感じですけど、今回の主人公の不器用さも、読んでいてうわ~となる感じがあって、とても良かったと思います。前半部分は謎な描写も多かったですけど、だからこその後半部分で青さが爆発する感じ、とても良かったですね。

ネタバレで語ります。

前半部分は主人公の目的というか行動の趣旨がよくわからない感じがあって、あまり物語に入りこめませんでした。特に共感もできなかったですし。秋好さんと死に分かれでもしたのかなという感じの描写でしたけど、明言されていないから死に別れではないのかな、とも思ったり。モアイ代表のヒロという人が最初は男なのかなって思って読んでいたら途中で女と明かされて、思えばその時点で気づいても良かったのでしょうけど、途中で秋好さんと明かされるまでまったく気づきませんでした。ここはすごいおもしろかったです。だからあいまいな感じだったのかと、納得感がありました。とってもミステリ的でしたね。こういうのはすごい好きです。

そこから先の後半部分は、ひたすらおもしろかったです。前半部分のもやもや感がまったく無くなって、すべてスムーズに読んでいくことができました。主人公が実はめちゃめちゃこだわっていたことが明かされて、それですべてつながった感じがありました。このあたりから主人公に好感を持てるようになりました。それまでちょっとよくわからない主人公って感じでしたけど。

終盤、二人が2年半ぶりに対面して会話するシーンは、とても良かったです。緊張感がすごかった。このシーンは文章もとても良かったです。主人公の青さの表現というか、二人の会話がズレながらぶつかっている感じとか、読んでいて最高でした。うわあ~っていう感じがありましたね。

社会人と大学生の描かれ方も、良かったと思います。壁があるようでいて実際は変わらないというか。そのあたりの描写には共感できました。主人公は大学4年間の終盤の方まで何も無いつまらない大学生活を送っていたのに、社会人になったあとの交流会のスピーチではしっかりしたエピソードトークをしているところとか、うまいオチだと思いました。

最後の最後はどうなるかわからない感じで終わりましたけど、これもうまい落としどころだなぁと思いました。終盤の主人公が自転車で走り回ったあとに唐突に我にかえるシーンも、すごい納得感があって良かったです。このシーンは文章の描写もすごい良かったです。