読んだ本の感想など

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朝倉秋成『俺ではない炎上』ネタバレ感想

朝倉秋成『俺ではない炎上』双葉社 2022年5月刊

 

 

※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

久々にゆっくり小説を読めています。最初の数ページだけ読んで止まってとか、5分の1くらい読んで止まってということが多かったのですが、この小説は最後まで読み切りました。

リアリティ的にギリギリのところを攻めている感じがとてもおもしろかったです。全体的にはとってもフィクションな小説なのですけど、リツイート27番目の興奮とか、26リツイートから27リツイートまでが4時間とか、ギリギリあるかもというところが絶妙だと思いました。リツイート2番目で興奮したとかそういう設定ではないのがとてもうまいと思います。普通はリツイートしただけの人が諸悪の根源にはならないと思いますけど、まぁなるほど?とギリギリ思える展開になっていたり。絶妙なところだと思います。

現代の話の中に10年前の話が挟まれるというのは最後まで気づきませんでした。娘は小学生と思って読んでました。意外性ありましたけど、うーんという感じというか、まぁそうでもしないと意外性のある話にならないし…?という感じでした。真犯人の動機や被害者女性3人などについてもぼんやりしたまま終わってしまいましたね。

主人公が逃亡しながら自分を省みるという展開はとても良かったと思います。完全に被害者なのでかわいそうな立場でありながら、結果的に本人にとってプラスになった部分もあって、終わり方としては綺麗でした。こういう主人公像の設定についても作者のバランス感覚の良さが表れていたと思います。安心して読める作家と思います。結構色んな作品を読んできていますけど、これからも新作が出たら買っていきたいですね。六人の嘘つきな大学生が一番おもしろかったかな~とは思いますけど。