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くわがきあゆ『レモンと殺人鬼』ネタバレ感想

くわがきあゆ『レモンと殺人鬼』宝島社文庫 2023年4月刊

 

 

※小説の感想はすべてネタバレありで書いていこうと思います。

 

最近はのんびり読書する時間も取れるようになって、小説もいくつか読めています。良いことです。

レモンと殺人鬼。全然知らない作者の小説でしたけど、なかなかおもしろかったです。数日で一気に読破しました。終盤は意外性あるオチが続いて、怒涛の展開でした。

主人公の容姿が醜くて双子の妹は美人という描かれ方にずっと違和感がありましたけど、歯が抜けていただけということでなかなか納得感がありました。ずっとマスクなのもなるほどという感じで。

何度か心理描写が語られていた佐神が父親だったというオチもちょっとおもしろかったですね。子供のころの描写が妹視点だったというのも、おもしろかったです。佐神視点が急に入るのに違和感がありましたけど、実は妹視点もあって多重視点構造になっていて、色々と仕込まれた小説だったなと思います。蓮という名前を自分が勝手につけていたオチはさすがにちょっと無理があるように思いましたけど、蓮と呼んだとき「うん?」みたいな返事になっていて、読み返してみたらそうとも読めるようになっていましたね。

すべての登場人物が怪しいというか、ちょっとおかしいというか、そんな小説だったと思います。違和感がありながら読み進めていく感じというか。かなり騙されました。オチに色々と無理やり感はありましたけど、それぞれの登場人物に理由付けがあるのは良かったです。最後に主人公が日本刀を持った佐神相手に1対1で勝つのもかなり無理やりでしたけど、レモンを搾る手を持っているという描写や鶏の解体をずっとやっていた経験を応用してと描写されればまぁなるほどと思えるというか。

主人公の心理描写が丁寧で、読みやすかったです。他のキャラクターはミステリのための記号キャラみたいな感じが多かったと思いますけど、主人公の悩みや姉妹の間柄の話は普通に読み応えありました。この主人公の心理描写のおかげで最後までおもしろく読めたと思います。