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小林泰三『アリス殺し』ネタバレ感想

小林泰三『アリス殺し』創元推理文庫 2019年4月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

ずっと前からおもしろいらしいと聞いていた小説。最近ようやく文庫化されたので、井の頭線永福町駅啓文堂書店で、仕事の合間に買ってきました。もちろん目立つ位置で平積みされてました。

寝る前に少しずつ読んでいって、3~4日くらいで読み切りました。これはたしかに、かなりおもしろかったです。続きが気になって夢中で読みました。最後のオチも意外性があって、完成度の高い小説だったと思います。最初は不思議の国のアリス風(?)の会話文がいくらなんでも…という過剰さで、うざったく感じられたのですけど、途中からそういう文体も少なめになっていって、後半部分になるとむしろ読みやすい文体と思えてました。慣れたということかもしれません。ひたすら会話文だけで何ページも進むという、めずらしい文体でした。

ネタバレで語ります。

不思議の国のアリスの世界と現実世界がつながっているという設定、オチが読めなくっておもしろかったですね。すべてレッドキングの夢の出来事だからつながっているというのは、まぁ納得感はありました。理由付けが無いよりはこういう説明があった方が安心感があって良いと思います。

主人公がアリスではなかったオチはかなりおもしろかったです。真犯人が判明したあともページ数の残りが結構あったので、この後の展開どうなるんだろうと思いましたが。まさかそこからアリス死亡→眠り鼠だったオチという展開があるとは思いませんでした。

まだ昨日読み終わったばかりなのですけど二度読みしたら亜理=眠り鼠というのがわかる描写になっていてさらに楽しめるかもしれないですね。暗号を眠り鼠が聞いているみたいな展開や、主人公が自分の分身をなかなか警察2人に明かさない(バレバレのはずなのに)という展開なんかはありましたけど、まったく気づきませんでした。真犯人の広山准教授も主人公もどちらも実は別のアバターだったというオチは良かったですね。こういう物語構造だからこそのオチというか。

続編が2冊くらい出ているみたいですけど、この設定でどんな続編が作れるのか謎な気がします。アリスも死んでしまってますし。不思議の国のアリスではなくて別のものがモチーフになるとか? でもそれだと続編ぽくない気がしますね。とにかく、それも文庫化されたら買ってみようと思います。

そういえば、不思議の国のアリスの登場人物をまったく忘れていて、公爵夫人とかトカゲのビルとかメアリーアンとか、どんなキャラだったかなぁ…って感じでした。そういえばいたような…みたいな。スナークはブージャムだった、についてはまったくわからなかったですね。不思議の国のアリス由来のものなのか作者のオリジナルなのか、それすらわからなかったです。不思議の国のアリスの登場人物をしっかり把握したうえで読んでいたらさらに楽しめたのかもしれないですね。

追記。軽く二度読みしてみたのですが、亜理はずっと自分がアリスだとは言ってなかったり、眠り鼠が会話を聞いている風な描写があったり、亜理とハム美が毎日長く会話してるという描写もあったり、おもしろかったですね。