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アンソニー・ホロヴィッツ『カササギ殺人事件』ネタバレ感想

アンソニーホロヴィッツカササギ殺人事件』(上・下)創元推理文庫 2018年9月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

すごくおもしろいらしいとTwitterで教えてもらって購入しました。たしかに、これはかなりおもしろかったです。なんというか、よくできていた。いそがしい時期で読み切るまでに2週間くらいかかってしまいましたけど、時間に余裕があれば1週間以内に2冊一気読みしていたかもしれない。それくらいにはおもしろかったです。正直ものすごく心に刺さったということでもなかったのですけど、ランキング1位というのはけっこう納得できる感じでした。それくらい、よくできていたと思います。ミステリって感じの小説だったと思います。謎解き要素が主題になっていて、さらにそれに加えて物語構造的にもひねってあって、これこそがミステリって感じでした。

上巻の時点では正直、うーーんそこまででは…という感想でした。おもしろいらしいとオススメされていたから読み続けられたという感じだったと思います。前評判無しで購入していたら上巻の途中で放り出していたかもしれない。下巻に入ったときにこの物語の構造が初めてわかって、おお~これはおもしろくなりそうだと感じました。実際下巻はかなりおもしろかったです。

ネタバレで語っていきます。

でも結局、現実の人間をほぼそのまま登場人物にしていた意味って何だったのでしょうか。その辺が犯人特定の鍵になるのだろうと思って読んでいたのですけど、そこは犯行とは関係なかったぽいですし。例えばアラン・コンウェイは前々から自分が殺されるだろうと思っていて小説と現実をリンクさせることによって犯人を全世界に明らかにしようとしていたとか、あるいはアラン・コンウェイは現実で恨んでいる人物がいてその人物を攻撃するつもりで現実とリンクさせた小説を書いたとか、その手のオチが待っているのかと思っていました。特にそういうオチもなく、単に毎回色んな遊び心で登場人物の名前を決めていた中で今回は現実の人物を使っただけというように読めましたけど…。二度読み三度読みしたら何か意味があるのがわかるのかもしれませんけども…。上巻と下巻で小説と現実が対になっているという物語構造なので、わざわざ現実をそのまま舞台にして小説を書いたことに意味があるはずだと思うのですよね。

上巻が小説で下巻がその小説家・編集者の話という物語構造は、とてもおもしろかったですね。小説の登場人物と現実の人物がリンクしているという設定も、とてもわくわくできました。下巻の序盤で上巻の小説内の伏線が順番に並べられていったとき、こんな大量の伏線が未消化だったのかと驚きました。なんか伏線が未消化すぎて話がきちんとまとまるのか不安になりましたね。でも最終的にすべて納得できるオチが用意されていて、すごかったです。しかも、上巻の情報だけでも一応犯人や犯行の流れを特定できるようになっている。返り血が自転車についてそれが服について…みたいなのは無理がありすぎるとは思いましたけど…。

下巻主人公が犯人を推定していく流れがとても自然で、素直に読めました。思考回路に納得感があったというか。小説内の犯人候補を順番に挙げていくシーンと現実の犯人候補を順番に挙げていくシーンはどちらもおもしろかったですね。とってもミステリっぽかった。

あと、この翻訳文は読みやすかったと思います。翻訳文って変な文体になることが多いと思いますけど、この小説はかなり自然で読みやすい文体でした。でもやっぱりアナグラム系は翻訳文で読んだらおもしろさ半減ですね。いや半減というか9割減くらいですね。アティカス・ピュントの綴りとか言われても唐突感がすごかった。11年前から用意していたのだと言われても翻訳文で読んでる読者視点だと後付けみたいに見えてしまう。まぁそれはしゃーないですね。逆に吉祥寺が舞台の小説なんか私が読んだら臨場感あってそれだけでおもしろいですし、この小説もイギリス人が読んだら2倍3倍くらいおもしろいのだろうなと思います。