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小林由香『ジャッジメント』ネタバレ感想

小林由香『ジャッジメント双葉文庫 2018年8月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

吉祥寺アトレ2階のブックファーストで1ヶ月前くらいに購入していました。平積みでPOP付きで推されていたと思いましたが、1年前の作品だったのですね。まったく知らない作者の知らない小説でした。

犯罪の被害者の遺族が復讐として加害者を同じ方法で殺すことができる世界観という、なかなかファンタジーな感じの小説でした。でもこういう実験的な設定の小説って結構好きですね。極限状態で人間はどうなる?みたいな。

復讐者と犯罪者が普通に会話のキャッチボールしてるシーンが多くてそこにもファンタジーを感じましたけど、なかなか緊張感があって、各話とも一気読みに近かったです。寝る前に1~2話ずつ読みながらで、1週間かからず読み終えたと思います。

やっぱり最終話のジャッジメントが一番心に残りました。主人公?の応報監察官の人に愛着も出てきていましたし、餓死という長丁場で主人公や他の監察官の人たちのきつい心理状態に焦点が当たったところも良かったです。結局殺さなかったオチに対して多少の不満が残りながらも納得もできる物語展開になっていて、そのあたりは全体的にうまかったと思います。

読者というのは作中で言うところの匿名の意見を言う人たちの立場に近いですから、まさに復讐に対して肯定的な視点で読み続けることになるわけですけど、各話の遺族たちが悩んだ上で殺さなかったり殺し方を優しくしたり、そういうオチに対してもある程度納得できるような描写になっていたことが、とても良かったと思います。