読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

映画「ソウル・オブ・ワイン」感想

映画「ソウル・オブ・ワイン」感想

 

ソウル・オブ・ワイン公式サイト

https://mimosafilms.com/wine/

 

吉祥寺アップリングで観てきました。パルコの地下2階の。ベンチスペースが広くてお気に入りです。早めに着いてものんびり待っていられる。

座席は狭いので隣に人が入るような映画だと窮屈になるかもしれません。このときは土曜日だったせいか半分以上の座席が埋まっていて、隣の人が大あくびをしてたり伸びをしてたりいびきかいて寝たりしていました。

というわけで、このソウルオブワイン、なかなかおもしろかったです。少なくともワンピースよりはおもしろかった。こういうドキュメンタリー映画も良いものですね。ロマネコンティが作られるまでの過程を丁寧に描いた作品で、ワイン畑の仕組みや生産者たちの思いなどが語られていて、とても興味深い内容でした。

ロマネコンティって一度も飲んだことは無いのですけど、1本200万円とかするらしいので、何かの大事な記念日で飲んでみたいですね。何周年かの結婚記念日とか、そういうレベルのタイミングにでも。

作中の映像を信じるなら、とてもとても人力で生産されているようでした。100年前の映像なのかなっていうくらい、すべてが人間の手によって作られている印象でしした。こういう作り方をしていたら出来栄えにブレができてしまうんじゃないかなぁと思ってしまうくらいでした。実際に作中でもこの年は日当たりがよかったので葡萄がよく育ったみたいに語られていたりして、フランスワインというのはそういうものなのかもしれません。現代人の感覚からすると、正直言って、ブレがあるような作品造りに対しては少し疑問が沸いてきてしまいますけども…。アナログすぎて信用できなくなってしまうというか。もしその年のワインが美味しくなくても同じ値段で売っているのだとしたら、嘘をつかれているような気分になってしまいそうです。私が現代日本人だからそんな風に思ってしまうのかもしれませんけど。少なくても私はそういう商売はしたことがないですし今後もするつもりないです。でも、もしかしたら日本の伝統文化的にはむしろ親和性が高い価値観なのかなとも思いました。一期一会というかワビサビというか、そのときそのときの出会いというか、自然災害なんかでその年の出来が悪かったとしてもそれはそれという思想というか、そういう考え方は日本社会にも有りそうな気がします。過去の信頼の積み重ねで許されるというか。

テロワールは地質学だという発言や、化学薬品を使わずに畑のミミズなどの微生物の働きまでも考慮するという話や、自分の畑がビオディナミ製法を続けていることに対するプライドの話など、色々と奥深くておもしろい作り手の話が多かったです。1つのワインが作られるまでに色々な思想や配慮があるのだなぁと思いました。自分は土地の所有者ではなく過去から続く土地を守る番人という意識だという話も、とても印象深かったです。

一つ圧倒的に気持ち悪かったのが、結構な年配の男性が素足のままワインの樽の中に入ってはぁはぁぜぇぜぇ言いながら樽をかき混ぜるシーンですね。まじで衝撃でした。本当に、今すぐに忘れたいというか、次にフランスワインを飲むときまでの間に忘れておきたいというか、そんなレべルのシーンでした。Tシャツ短パンのまま手も足もそのままでワインの樽の中に入って、必死に足を上下に運動させて樽をかき混ぜていました。というか今こうして書いていてそのシーンを思い出してしまってきついです。衛生的な意味でもきついですけど、単純におっさん(老人?)の体液とか体毛とかがロマネコンティのワインの中にめちゃめちゃ染み込んでいるのだということがよくわかってしまってきついです。本当に衝撃でした。これからフランスワインを飲むたびに思い出してしまいそうな映像でした。ロマネコンティやフランスワインに対する圧倒的なネガキャンなんじゃないかというレベルの映像でした。今後フランスワインを飲んでいる人に対して「おっさんの体液しみしみだけど良いの?」という突っ込みが入ることになりそうな映像でした。まぁ、そんなことを言ったら外食とかできなくなってしまうのかもしれませんけども。私が現代日本人だからこんなふうに思ってしまうのか…。でもこれはフランス人の衛生観念がきついという話なわけでもなく、何年か前の日本の映画で「君の名は」という作品があって、その中でお酒を造るためにお米を口に含んで吐き出すというシーンがあったのですけど、今回のフランスのおっさんの素足の体液しみしみのシーンと同レベルのきつさがありました。「君の名は」の作者は日本人で、たぶんそのお米を口に含んで吐き出すというシーンを気持ち悪いとは思っていなかったのだろうと思います。単純に感性の問題ですかね。国家の違いではなく。それか単純に世代差ですかね。

というか、その「君の名は」のシーンは少女だからセーフという作者の感性があったのかもしれません。それはまた別の種類のキモさがありますよね。少女だろうがおっさんだろうが体液しみしみはきついですよ。

あと、最後の方のシーンでものすごく違和感があったのが、日本人のソムリエとシェフが1945年のワインについて語るシーンですね。めちゃめちゃ長い尺をとって2人の日本人が日本語で「まじすごいっす」「何も言えないっす」「飲んだことある?」とかコミュ障全開の品評をするシーンが唐突に挿入されたのですが、うーん、尺が長すぎてめちゃめちゃきつかったですね。何も言うことが無いけど無理やり何か言おうとしている2人というシーンなのですけど、うーーん、せめて30秒くらいの尺だったらそのままスルーだったのですけど…。見ててめちゃめちゃきつかったです。たぶんですけど、本当にたぶんですけど、フランス人の製作陣から見て、ソムリエやシェフの人たちがここまで絶句してしまうくらいすばらしいワインなのだという意図のシーンだったのだろうと思うのですよね。ソムリエがこんな反応を示してしまうくらいのすばらしいワインなのであると。でも日本人視聴者の誰もが思ったと思うのですけど、言語化能力が無いだけですよね。もともとコミュ障なだけです。ごく普通の日本人男性というか。別にビールを飲んでも「まじうまいっす」「何も言えないっす」と言いますって。それが良い悪いではなく。むしろ料理についてはとても美味しいものを作る人たちなのだろうなぁと好感が持てます。

というわけで、久しぶりに映画館で映画を観ることができて、なかなか楽しかったです。映画を観たあとは近くの牛の蔵という焼肉屋さんに初めて食べに行ったのですけど、広くて綺麗な個室で話しやすくて雰囲気よくて大満足でした。そのあと近くのカラオケで二次会してタクシーで帰ってきました。たまに映画館へ映画を観に出かけるのも楽しいですね。

深木章子『敗者の告白』ネタバレ感想

深木章子『敗者の告白』角川文庫 2017年8月刊

 

 

※小説の感想はすべてネタバレありで書いていこうと思います。

 

お台場のダイバーシティの中の本屋で購入しました。一番目立つ棚にどーんと置かれていたので新刊なのかなと思って購入したら、だいぶ昔の小説だったみたいですね。なぜいま推されていたのだろう。全然知らない作者の知らない小説でした。読んでみたら、めちゃめちゃおもしろかったです。最初から最後までずっとおもしろかった。これは推されるのも納得というおもしろさでした。続きが気になって電車の中とかで少しでも空き時間ができたら続きを読む、という感じでした。

事件関係者の告白だけで話が進むという物語で、なので嘘を言っている人がいるのだろうなぁという前提で読み進めていった感じですけど、それぞれの話に少しずつ矛盾点とか不自然なところが出てくる感じで、結末が気になって最後まであっという間に読めました。

内容についてネタバレで語っていこうと思います。

子供が実は殺人鬼という内容はなかなかインパクトがありました。ただ、読んでいてどうしても違和感というか無理やり感は感じていました。なので、最後に全部が親の捏造だったというオチになったときはとても納得感がありました。すべてがすっきりした感覚でした。最後の自殺オチについても、完全犯罪が成立して終わるのも変ですし、良いオチだったなと思います。

序盤の母息子の死者の告発2つがどちらも父の捏造だったわけですけど、その後の父の告白とも一見して矛盾の無いストーリーになっていて、それでいて捏造する動機やオチも納得できる理由が用意されていて、良い構成の小説だったなぁと思います。一番最初の母の雑誌編集者への告発がものすごい矛盾だらけですぐに嘘がバレていたのも、すべて捏造とわかればそちらの方が納得がいきますし。

初めて読む作家でしたけど、これは他の小説も読んでみたいなと思いました。

講談社現代新書『ほんとうの定年後』感想

坂本貴志『ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う』 講談社現代新書 2022年9月刊

 

 

最近は仕事も落ち着いてきて、のんびり読書できています。こういう新書も何冊か読めていますし、小説を読んだり、ハンターハンターが連載再開されたので電子書籍で全巻購入して読み返したりも。

定年後の話についての本。興味深い話題です。仕事の顧問先で年配の方々って多いですし、とてもホットな話題です。70歳くらいまでは普通に働いている方が多い印象です。75歳とか80歳とかで働いている方も周りに普通にいます。個人的にはそれくらいの年齢になってきたら下の世代と一緒に仕事をして本人はアドバイザー的な立ち位置になるのが理想なんじゃないかなと思っています。メインプレイヤーで居続けるとミスの責任を負うことになりますし、年齢が上がるとミスがこわい。補助的な立場で仕事していくのが良いのだろうなぁと思っています。

というわけで、この『ほんとうの定年後』という本ですが、定年後の仕事や生活についてのデータの話や、定年後の生き方の事例の話などの内容で、読みやすくておもしろい本でした。何か小さな仕事をしていくことができればその収入+年金収入で問題なく生きていけるという話は納得感がありました。実際、年金収入だけだと少し厳しいという人が多いのではないかと思います。貯金を取り崩して生きていくというのも精神が持たないですよね。何年先まで生きるかわからないですし、大きな病気や怪我や事件などで一気にまとまったお金が出ていくこともあるでしょうし。この本では週3日くらい働いて月10万円くらいの収入を得るという生き方が提案されていましたけど、それくらい上乗せできればだいぶ良さそうだなぁと思います。いわゆる現場仕事と言われるような仕事が年をとっても可能な仕事として提案されていました。なるほど~という感じでした。定年後は小さな仕事をしていくのが良いという考え方は、とても納得でした。

私も自分が年を取ったときのために一緒に仕事をしてくれる税理士を探していかないといけないなぁと思っています。あと30年以内くらいで。できれば10年20年後には…。年をとったときに1人税理士の事務所でメインプレイヤーとしてやっていくのはリスクが大きすぎるように感じます。誰か他にメインの人がいてくれる環境でないときつい。うまくそういう人が見つかればいいですけど、見つからなかった場合は仕事をどんどん減らしていくのがやはり無難なのですかね。それこそ小さな仕事としてやっていく感じで。まぁ30年後とかの話ですのでそのとき社会がどうなっているかもわからないですけど…。私はきっと30年後も同じように人のお金の相談に乗る仕事をしているのだろうとは思っていますけど。