読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

講談社現代新書『ほんとうの定年後』感想

坂本貴志『ほんとうの定年後 「小さな仕事」が日本社会を救う』 講談社現代新書 2022年9月刊

 

 

最近は仕事も落ち着いてきて、のんびり読書できています。こういう新書も何冊か読めていますし、小説を読んだり、ハンターハンターが連載再開されたので電子書籍で全巻購入して読み返したりも。

定年後の話についての本。興味深い話題です。仕事の顧問先で年配の方々って多いですし、とてもホットな話題です。70歳くらいまでは普通に働いている方が多い印象です。75歳とか80歳とかで働いている方も周りに普通にいます。個人的にはそれくらいの年齢になってきたら下の世代と一緒に仕事をして本人はアドバイザー的な立ち位置になるのが理想なんじゃないかなと思っています。メインプレイヤーで居続けるとミスの責任を負うことになりますし、年齢が上がるとミスがこわい。補助的な立場で仕事していくのが良いのだろうなぁと思っています。

というわけで、この『ほんとうの定年後』という本ですが、定年後の仕事や生活についてのデータの話や、定年後の生き方の事例の話などの内容で、読みやすくておもしろい本でした。何か小さな仕事をしていくことができればその収入+年金収入で問題なく生きていけるという話は納得感がありました。実際、年金収入だけだと少し厳しいという人が多いのではないかと思います。貯金を取り崩して生きていくというのも精神が持たないですよね。何年先まで生きるかわからないですし、大きな病気や怪我や事件などで一気にまとまったお金が出ていくこともあるでしょうし。この本では週3日くらい働いて月10万円くらいの収入を得るという生き方が提案されていましたけど、それくらい上乗せできればだいぶ良さそうだなぁと思います。いわゆる現場仕事と言われるような仕事が年をとっても可能な仕事として提案されていました。なるほど~という感じでした。定年後は小さな仕事をしていくのが良いという考え方は、とても納得でした。

私も自分が年を取ったときのために一緒に仕事をしてくれる税理士を探していかないといけないなぁと思っています。あと30年以内くらいで。できれば10年20年後には…。年をとったときに1人税理士の事務所でメインプレイヤーとしてやっていくのはリスクが大きすぎるように感じます。誰か他にメインの人がいてくれる環境でないときつい。うまくそういう人が見つかればいいですけど、見つからなかった場合は仕事をどんどん減らしていくのがやはり無難なのですかね。それこそ小さな仕事としてやっていく感じで。まぁ30年後とかの話ですのでそのとき社会がどうなっているかもわからないですけど…。私はきっと30年後も同じように人のお金の相談に乗る仕事をしているのだろうとは思っていますけど。

日経プレミア『どうすれば日本人の賃金は上がるのか』感想

野口悠紀雄『どうすれば日本人の賃金は上がるのか』日経プレミア 2022年8月刊

 

 

Kindleで購入しました。本を電子書籍で買うようになってから街の本屋にお金を落とせなくなって悲しいですね。Kindleの代金の一部を本屋へ送れるような仕組みがあればいいのにと思います。気持ちとしては作者、本屋、電子書籍製作者で5:3:2くらいの比率でお金を支払いたい。現状だとどれくらいなのだろう、5:0:5くらいなのかなぁ。

ということで、この『どうすれば日本人の賃金は上がるのか』という本、めちゃめちゃおもしろかったです。今日買って今日中に読破してしまいました。サラリーマン時代は自分の収入が賃金でしたし経営者の今は従業員へ賃金を支払う側として、賃金の仕組みについての話はとても興味深いです。あと、最初の「はじめに」のところでこの本の構成について述べられているのですが、その説明文章がめちゃめちゃ端的でわかりやすくてすごかったです。しかも、この話題のあとはこういう疑問が沸いてくるよなぁという論点がちょうど次章の内容になっていたりして、作者天才なのかなと思いました。

日本人の賃金が上がらない理由は稼ぐ力が無いからだというのがこの本の結論でしたが、とても納得感がありました。儲かっている会社や業界と儲かっていない会社や業界とで給料に差がありますよね。日本は全体的に儲かっている会社や業界が無いので賃金が上がらないと。納得感がありました。付加価値を高めていかないといけないと。

ちなみに私の事務所のアルバイトの時給は2000円ですけど、これは単にそういう社会にしていきたいからというだけの理由ですね。より良い社会のために、社会の持続可能性を考えて行動していくのがかっこいいからですね。1人あたりの付加価値を高めた結果とかではないですね正直。払えるから払っているだけで。

でもなんか、最低賃金で人を雇っているような会社は社会から退場すべきという意見は10年以上前からずっとありますけど、全然そういう社会になっていないですよね。従業員の賃金を削って商品やサービスの値段を抑えて売っているような会社が競争に勝って生き残っていくような社会は良くない、みたいな。それだとブラック企業が蔓延することになってしまう、みたいな。今もたぶんそういうブラックな会社が普通に存続していますよね。まぁ私は従業員にしっかり賃金を支払う事務所を運営していきますけどね。社会が変わらなくても。

従業員1人あたりの固定資産が多い会社ほど賃金が高いという指摘は、興味深かったです。今までその視点で考えたことがなかったですけど、設備投資できる会社ほど利益が出て賃金を増やせるという理屈には納得感はありました。なるほどと思いました。Appleキーエンスのような有形固定資産が無くて利益の多い会社についてはビッグデータなどの帳簿に載らない資産があるのではないかという推測についても、めちゃめちゃおもしろかったです。従来の簿記のシステムでは表現できないものが存在しているのかもしれませんね。存在しているのなら数字で表わしていくしかないですけど、どうやって計上していけばよいのか…、ちょっとおもしろい話ですね。

「日本の生産性が低いのは零細企業が多いから」という言説に対して、むしろ零細・小企業は付加価値の比率が高いので積極的に育てるべきという意見も、おもしろかったです。感覚的には同意しづらい意見ではありますが。

パートタイマーが多いのも賃金が低い原因の1つと書かれてましたけど、パートタイマーの時給って低すぎますよね。時給1000円とかだと、フルタイムで働いて年収300万円に達しないですもんね。やっぱり時給2000円くらいでないと…と思ってしまいます。時給2000円でもフルタイム換算したらそこまで高くないわけですけど。

年功序列で賃金が上がっていくシステムが賃金が低い原因になっているという内容についても、なるほどーと思いました。年功序列のせいでデジタル化が遅れたり、新しい社会状況に適応できなかったり。私も60歳くらいになるころには第一線からは退かないとなぁと思ったりしています。仕事自体はずっと楽しくやっているでしょうけど。

この国の社会システムや風潮が変わっていかないと賃金が上がるのは難しいという話についても、そうだろうなーと思いました。全体的に納得できる内容が多くて、とても良い本だったなぁと思います。まぁ私は私で賃金高くてかっこいい事務所を作っていきたいと思います。

漫画『左ききのエレン』感想

漫画『左ききのエレン』感想(最新21巻まで)

 

 

なんか最近漫画ばかり読んでいる気がします。ワンピース以外にも、龍と苺、ミステリと言う勿れ、そしてこの『左ききのエレン』、めちゃめちゃおもしろかったです。ちょうど連載の方が完結らしいですね。はやく完結まで一気に読みたいですね。

というわけで、左ききのエレン。名前はずっと知っていてちらっと読んだことはありましたけど通して読んだのは初めてでした。めちゃめちゃおもしろかったです。龍と苺以来のおもしろさでした。広告代理店編も高校生編も大学生編も、どれもおもしろい。過去編も現代編も矛盾なくつながっていて、最初にすべて決めてから連載を始めたのかなぁと思いますけど、なかなかすごいですよね。途中の広告代理店パートで中だるみした感じもありましたけど、今の最終章に入ってからはまたおもしろいですね。光一が悪役みたいな顔になっていて、最終章のどこかで元の顔に戻るのでしょうけど、どういう展開になるのだろうというどきどきがありますね。

台詞回しがめちゃめちゃおもしろいのですよね。特に大学生編とか、台詞一つ一つのキレがすごい。よくこんな台詞おもいつくなぁと思いながら読めるというか。ここでそう来るかみたいな台詞や展開が多い。夢をあきらめるとかあきらめないとかいうストーリー展開もかなり共感しながら読めました。エレン&あかりの天才会話シーンなんかも台詞のキレがものすごいですけど光一という主人公の凡人視点が入るせいでファンタジー感が薄まるというか、日常の中の非日常というポジションで描かれているので自然に読めました。エレン&あかりだけのストーリーだったらファンタジーすぎて読みづらかったと思いますけど。そういう部分のバランスがとてもうまい漫画だなぁと思います。ちょいちょい凡人視点がはさまれたり、「天才になれなかった全ての人へ」という言葉とか、天才キャラがとてもわかりやすい天才キャラになっていてストーリー的にも自然に存在する感じで、説得力があって読みやすくておもしろかったです。

広告代理店の仕事のストーリーも、なんか読んでいて仕事がんばろうって気分になりますよね。自分の仕事に対して必死な姿ばかりが描かれていて。かなりテンションあがります。良い漫画だなぁと思います。ちょうど完結したみたいで、漫画の最終巻が出るのが楽しみですね。