読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

光文社新書『映画を早送りで観る人たち』感想

田豊史『映画を早送りで観る人たち』光文社新書 2022年4月刊

 

 

Amazonkindleで購入しました。電車の中で少しずつ読み進めて、1週間くらいで読破しました。ちなみに飛ばすところは飛ばしながら、まさにこの本でいうところの倍速視聴のような感じで読破しています。これはまぁ普通に、新聞を読むのと同じ感覚というか。

映画やドラマやアニメを倍速視聴したりネタバレを確認してから観たりしている若者たちの考え方や生活状況についての本でした。私はどれも倍速視聴したことがなくって、というか映画やドラマやアニメを観る習慣がなくって、倍速視聴やネタバレ後に視聴するテクニックについては、なるほど~それで充分だなぁと思いました。私が子どものころは倍速で快適に視聴できる環境が整ってなくって、なので敬遠していました。単純に遅すぎてきつかったです。テレビドラマは15分の内容を1時間にしていると感じていましたし、テレビアニメは5分の内容を30分にしていると感じていました。今はさすがに違うかもしれません。現代人はもっともっといそがしくなっていると思いますし。テレビアニメなんか前と後に毎回同じ曲が流れるという謎の構成でしたよね。あきらかに作り手が楽をするためのシステムですよね。ユーザーのためではなく。なんかユーザーのためを思っていないものに対してお金や時間を使うのって抵抗ありますよね。というのが、私の世代の(私の?)考え方でしたね。私はそれで漫画や小説やゲームばかり楽しんでいました。漫画や小説は自分のペースで読めますし。1ページを1分で読んでもいいし1秒で読んでもいいし飛ばしてもいい。倍速視聴どころか変速視聴ですね。楽で良いです。

この本の中で今の若い世代はいそがしすぎるという話題がありましたけど、本当に大変そうだなぁと思います。今の大学生は過去一番まじめに授業に出て、過去一番まじめにアルバイトをして、それで漫画や映画やドラマは過去一番の量で供給されているわけですから。まともに観てる時間ないですよね。睡眠にもSNSにも時間を取られますし。効率厨にならないと何者にもなれないですよね。

たぶん私の世代がすべての国のすべての世代の中で一番エンターテイメントに集中できた世代なのかなぁと思います。上の世代がテレビのバラエティ番組やスポーツ中継に使っていた時間を漫画に費やしてきましたし、下の世代がSNSに使っている時間を漫画に費やしてきました。ちなみにそんな世代の私がいま一番熱いと思う漫画は『龍と苺』です。この本の主旨に乗っ取って解説すると主人公の竜王戦トーナメント以外はすべて飛ばし読みで大丈夫です。が、本筋と関係ないところでも台詞回しや話のオチがおもしろすぎてニヤリと読んでしまいます。

とりあえず倍速視聴やネタバレを見てから視聴は、もっと積極的にやってもいいかなぁと思いました。それなら見れる作品も多そうです。梨泰院クラス、愛の不時着、あとゴースト何とかというやつ、七番防の何とかというやつ、この辺はすべて見たいのですけど途中で止まってます。

小野寺史宜『ひと』ネタバレ感想

小野寺史宜『ひと』祥伝社文庫 2021年4月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

吉祥寺キラリナ7階の本屋で購入しました。この本屋は新刊コーナーが見やすくて、好きですね。トイレも綺麗だし。

井の頭線直結なので、電車を1本ちょうど逃して次の電車が7分後という状況になったときにこの本屋に行ったりしています。そして7分過ぎてもう1本逃すという。

というわけで、新刊コーナーではなかったですけど目立つ場所に平積みにされていたこの『ひと』。まったく知らない作者の本でした。文庫ベストテン第1位のようですが、正直、そこまででも…という感じでした。別につまらなくはなかったですけど、1位というほどでは…。

会話がすべてテレビドラマみたいで、さすがにリアリティがなさすぎると思いました。なんだか全体的にテレビドラマのノベライズ的な雰囲気というか。最近のGoogleの広告動画で明け方の海辺を1人で歩いている男が「もう寝る?」「何度目のおやすみだよ」とかリアリティ0の棒読み会話をしている動画がありますけど、なんかそんな感じというか。友達に合い鍵を渡すシーンの会話文「お前、マジでいいやつだな。普通、友だちに部屋の合いカギを渡さないだろ」とか「どこの馬の骨かもわかんないおれだぞ」とかそういう。このあとこのキャラクターが合カギを使ってよくないことをするという展開なわけですけど、物語展開のための会話文という。

不幸な主人公が出会う人たちに恵まれて、というか主人公が恵まれたと感じながら、少しずつ目標を見つけていくという展開は好感を持てました。応援できる感じ。最後まですいすいと読めました。良い展開で良い終わり方だったなぁと思います。

お金をたかりに来る親戚のおじさんとか、いちいち性格の悪い発言をする元彼氏の人とか、絶妙にウザいキャラクターの描写がうまいなぁと思いました。リアリティは置いておいて、わかりやすいキャラクターって感じで、読みやすかったです。

鴨崎暖炉『密室黄金時代の殺人』ネタバレ感想

鴨崎暖炉『密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック』宝島社文庫 2022年2月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

吉祥寺アトレ2階の本屋で買いました。寝る前に少しずつ読み進めて、1週間くらいで読破しました。

最初はキャラクターの会話のノリにまったく馴染めなかったのですけど、最後の方は割と普通に読めました。慣れたというか。登場人物がどんどん死んでいって変な感じの会話劇が少なくなっていったからかもしれません。

完全にフィクションに振り切った設定で、序盤からずっと作者が「これはフィクションですよ」「こういうファンタジー世界観ですよ」と主張し続けているような作品でしたけど、そういうのは嫌いじゃなかったです。密室殺人が日本中で常におこなわれている世界観という。殺人に対する軽さとか。人を殺して「さて、では密室を作りますか」と言う犯人とか。おもしろかったです。密室以外のことは些細なことだから犯人は教える、とか。「すべてを密室に捧げなさい」とかパワーワードだなぁと思いながら読みました。すべてを密室に捧げないと密室の謎は解けない。

ここからネタバレで語ります。

密室の謎解きについては、1個目の「ドアを開けたタイミングで鍵が室内に滑り込んでいく」は結構わくわくしましたけど、2個目以降はあんまり…という感想でした。でも最後の扉を交換するのはおもしろかったですね。予想できなかったです。めちゃめちゃ無理があるオチでしたけど。1人で扉を抱えて階段を昇り降りして運んで交換するとか。作中の密室殺人のパターン分類でいうと「⑨合鍵を使う」に含まれそうな気もしますけど、扉を交換して「鍵を増やした(室内の鍵を合鍵にした)」というような感じですからまたちょっと違うのかな。

こういうトリック全開のミステリも、なかなかおもしろかったと思います。仕事も落ち着きましたし、これから色々と小説を読んでいこうと思います。