読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

SB新書『伝え方の作法』感想

池上彰 佐藤優『伝え方の作法』SB新書 2021年3月刊

 

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対談形式の本でした。普段まったく読まない形態の本でしたけど、試しに手に取ってみました。ちなみにこの対談の2人とも、名前は知っているけど…という感じです。1~2世代前の人だからかな。Youtubeでも見かけない気がします。この人たちのテレビ番組とかも見たこと無いので、どういう仕事をしている方なのかよく知りませんでした。この本で初めて知りましたけど、元新聞記者の方と元外交官の方だったのですね。

対談形式の本って中身が薄い気がして敬遠していたのですけど、それなりに得るものはあったかなと思いました。内容が薄いのは間違いないと思いますけど。さらさら読めました。

コミュニケーション全般について、2人が語り合っている内容の本でした。相手に話すときでも相手の話を聞くときでも、色々な作法がありますよね。納得感のある話も多かったです。

おもしろかったのが、事情が変わったので約束を破るときに「約束はしたが、約束を守ることは約束していない」という言い回しがあるという話です。約束したときと今では考えが変わったときとか、約束を守ろうとしたけど物理的にきつかったときとかの言い訳としてこういう言い回しもあるらしい。なるほどおもしろいなぁと思いました。

色んなコミュニケーション作法について具体例を挙げて話されている本なので、読みやすい本でした。さらさら読めました。

映画「海辺の彼女たち」感想

映画「海辺の彼女たち」感想

 

『海辺の彼女たち』公式サイト

https://umikano.com/

 

東中野ポレポレ東中野という映画館でみてきました。初めて行きましたけどドキュメンタリー作品を多く公開している映画館のようですね。

この映画は日経新聞で紹介されていて知りました。ベトナム人技能実習生の問題を描いた作品という感じで。この技能実習生の問題については興味はありました。かなり前から過酷な労働状況や低賃金がニュースになって、現代の奴隷制度とか言われていて。将来的に慰安婦問題みたいに国際問題になったりするんじゃないかとも言われていますよね。国が推奨しているのは間違いないですし。でも、ニュースになる割にはそのまますぐに話題が消えていく印象です。前に今治タオルの工場で実習生の人たちが過酷な労働環境で働いているとかで今治タオル不買運動があったと思いますけど、今はどうなったのかわからないですね。労働環境は改善されているのだろうか…。

最近だと夕張メロンの農家が今年はコロナで技能実習生が来なかったので収穫量が減って大変とかそういうニュースがありましたね。日本人のアルバイトを募集しても集まらなかったとか。農家は実習生頼みだとか。

それはそれとして、この「海辺の彼女たち」、見る前はドキュメンタリー作品を見るくらいの感覚で映画館へ行ったのですが、ドキュメンタリー要素は少なく感じました。普通にドラマ作品というか。技能実習生の生活の一部分を切り取った感じというか。上映後のトークショーで後半部分の話題についてはSNSでネタバレは控えてほしいという趣旨のお話がありましたが、その後半部分が長尺でしたし。あとは、映像の物寂しい感じとか薄暗い感じとかがとても雰囲気を作っていて良かったと思いますけど、そのあたりの演出もあってドラマチックに感じたのかもしれません。

そういえば上映後のトークショーでも技能実習生の労働問題について熱く語るみたいなのは無く、多国籍の制作が大変でしたみたいなほんわかしたトークが繰り広げられていました。上映後にトークショーのある映画ってお得感があって良いなと思いました。楽しかったですね。

この作品は、技能実習生の問題を知ってもらうとか世に投げかけるとかそういう趣旨の作品なのかなと思いました。私も久しぶりに技能実習生問題について考えましたし、またこの問題についての書籍が出たりしたら読んでいきたいと思いました。外国人技能実習生の労働環境が今も過酷なのだとしたら改善されるべきですし、もう労働環境全般について、日本人のアルバイトの労働環境なんかも改善されていくべきだなぁと思っています。

辻村深月『かがみの孤城』ネタバレ感想

辻村深月かがみの孤城』ポプラ文庫 2021年3月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

すごい評判が良くて文庫化されたら絶対買おうと思ってました。発売してすぐに購入していたのですけど、ようやく読めました。下巻は一気読みでした。これは本当に評判通りめちゃめちゃおもしろかったです。久しぶりに、続きが気になりすぎて本を読むのが止められない状態でした。『スロウハイツの神様』がこの作者の最高傑作と思っていましたけど、これが超えたかもしれない。それくらいおもしろかったです。

なぜか漫画版だけは前にwebで少しだけ読んだことがありました。いつか小説で読もうと思っていたのであまり読みたくなかったのですけど、第1話の完成度はすごい高いと思います。

 

 

たしか漫画版で読んだときは2話以降はあまり盛り上がらなくて、こんなものかーという感じだったと思います。実際この小説版の方でも、上巻の途中くらいまでは盛り上がっていなかったですね。上巻の後半から一気におもしろくなって、下巻はおもしろすぎて一気読みって感じでした。

スロウハイツの神様も最終章が神でそれまでの章はすべて最終章のためにあるという感じでしたけど、かがみの孤城もそういうところありましたね。最後に伏線がつながる感じがすごかったです。

以下ネタバレで語ります。

転校生とはじめから顔見知りというのを夢見るエピソード、ここから始まってここで終わるというのが完璧すぎて感動でした。ハッピーエンド感がすごかったですね。このエピソード自体もわかりみがありますし。こういう共感できる感じがこの作者のすごいところだと思います。

主人公が全員の心情をとてもよく察しているとか、喜多嶋先生が主人公のことを完璧に理解してくれていたり、救いのある物語って感じで安心して読めましたね。7人がだんだん仲間になっていく過程とかも、とても納得感がありました。このあたりが丁寧に描かれていましたので、中盤以降の7人の仲間意識にひたすら共感しながら読めました。応援という感覚で読めました。

クラスの女子や担任の先生の嫌な感じとかも、絶妙にうまく描かれていたと思います。本人の心情を親も他人も理解してくれない感じとか。リアル感ありましたね。逆に喜多嶋先生は理解してくれすぎているせいでファンタジーキャラ感があって、この人の能力で城が生まれてるオチなのかなとも思ったりしました。最後は本当に納得でしたけど。

年代がばらばらだというのは察しがついたのですけど、匂わせすぎていて逆にひっかけなのかなとも思いました。そもそも年代がばらばらだと出会えないのでハッピーエンドにならないんじゃないか…とかも思いましたね。でも結果的には、記憶はなくなった状態で繋がりができるという感じで、とても良い落としどころだと思いました。最後のリオン君が話しかけてくるシーンは本当に泣けました。きっとそれぞれの子供たちが前向きに大人になっていったのだろうと予感させる終わり方で、そういうハッピーエンド感にも泣けました。

全小説の中でトップクラスにおもしろい小説だったなと思います。大人が読んでも超絶楽しかったですけど、たぶん中学生が読んでもおもしろいと思います。安心して人に薦められる小説と思いました。

次もまた評判の良さそうな作品があったら絶対買っていこうと思います。