読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

辻村深月『かがみの孤城』ネタバレ感想

辻村深月かがみの孤城』ポプラ文庫 2021年3月刊

 

f:id:seoma:20210522171033j:plain

 

※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

すごい評判が良くて文庫化されたら絶対買おうと思ってました。発売してすぐに購入していたのですけど、ようやく読めました。下巻は一気読みでした。これは本当に評判通りめちゃめちゃおもしろかったです。久しぶりに、続きが気になりすぎて本を読むのが止められない状態でした。『スロウハイツの神様』がこの作者の最高傑作と思っていましたけど、これが超えたかもしれない。それくらいおもしろかったです。

なぜか漫画版だけは前にwebで少しだけ読んだことがありました。いつか小説で読もうと思っていたのであまり読みたくなかったのですけど、第1話の完成度はすごい高いと思います。

 

 

たしか漫画版で読んだときは2話以降はあまり盛り上がらなくて、こんなものかーという感じだったと思います。実際この小説版の方でも、上巻の途中くらいまでは盛り上がっていなかったですね。上巻の後半から一気におもしろくなって、下巻はおもしろすぎて一気読みって感じでした。

スロウハイツの神様も最終章が神でそれまでの章はすべて最終章のためにあるという感じでしたけど、かがみの孤城もそういうところありましたね。最後に伏線がつながる感じがすごかったです。

以下ネタバレで語ります。

転校生とはじめから顔見知りというのを夢見るエピソード、ここから始まってここで終わるというのが完璧すぎて感動でした。ハッピーエンド感がすごかったですね。このエピソード自体もわかりみがありますし。こういう共感できる感じがこの作者のすごいところだと思います。

主人公が全員の心情をとてもよく察しているとか、喜多嶋先生が主人公のことを完璧に理解してくれていたり、救いのある物語って感じで安心して読めましたね。7人がだんだん仲間になっていく過程とかも、とても納得感がありました。このあたりが丁寧に描かれていましたので、中盤以降の7人の仲間意識にひたすら共感しながら読めました。応援という感覚で読めました。

クラスの女子や担任の先生の嫌な感じとかも、絶妙にうまく描かれていたと思います。本人の心情を親も他人も理解してくれない感じとか。リアル感ありましたね。逆に喜多嶋先生は理解してくれすぎているせいでファンタジーキャラ感があって、この人の能力で城が生まれてるオチなのかなとも思ったりしました。最後は本当に納得でしたけど。

年代がばらばらだというのは察しがついたのですけど、匂わせすぎていて逆にひっかけなのかなとも思いました。そもそも年代がばらばらだと出会えないのでハッピーエンドにならないんじゃないか…とかも思いましたね。でも結果的には、記憶はなくなった状態で繋がりができるという感じで、とても良い落としどころだと思いました。最後のリオン君が話しかけてくるシーンは本当に泣けました。きっとそれぞれの子供たちが前向きに大人になっていったのだろうと予感させる終わり方で、そういうハッピーエンド感にも泣けました。

全小説の中でトップクラスにおもしろい小説だったなと思います。大人が読んでも超絶楽しかったですけど、たぶん中学生が読んでもおもしろいと思います。安心して人に薦められる小説と思いました。

次もまた評判の良さそうな作品があったら絶対買っていこうと思います。