読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

櫛木理宇『少女葬』ネタバレ感想

櫛木理宇『少女葬』新潮文庫 2019年5月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

ミステリではないけど一気読みだったと教えてもらった小説でした。まったく知らない作者の知らない小説でしたけど、新刊コーナーに平積みにされていました。これはたしかに、私も一気読みに近い感じで読み切りました。2日くらいで。文章も読みやすいし展開も気になってどんどん読める系の小説でした。少年少女の描写についてもリアル感を感じる部分が結構ありましたし。

さすがにかわいそうすぎてきついみたいな部分はありましたけど。最後、綾希の方だけでも幸せになってよかったというか。綾希の方は、カフェで読書を覚えていくあたりからはとても安心して読めました。でも眞実の方は最初の数ページで描かれていたひどい感じの終わり方になるのだろうなぁと予想できて、なかなかきつかったですね。でもストーリー展開的は、はらはらどきどきでした。どうなっていくのか続きが気になって、一気読みに近かったです。

こういう生活保護受給者の管理みたいな悪事って、たまにニュースや新書なんかで読んだことがありましたけど、実際リアルでここまでできるのですかね。杉並区だと住居は区が大家さんと直接契約して支払っていくのが一般的だと思いますけど。家賃と生活費を一括で受給者へ振り込むとこういう風に脱法ハウスみたいな安いところへ住んで差額を生活費に使おうと考える人が出てくるから。そうすると生活保護者たちを食い物にしようという人がいたとしても生活費部分からかすめ取るしかないわけで、シェアハウスに住まわせて~みたいなのが難しくなりそうなものですが。シェアハウスに住まわせる意味がないというか。まぁ実際のところはよくわからないですね。 

小林泰三『アリス殺し』ネタバレ感想

小林泰三『アリス殺し』創元推理文庫 2019年4月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

ずっと前からおもしろいらしいと聞いていた小説。最近ようやく文庫化されたので、井の頭線永福町駅啓文堂書店で、仕事の合間に買ってきました。もちろん目立つ位置で平積みされてました。

寝る前に少しずつ読んでいって、3~4日くらいで読み切りました。これはたしかに、かなりおもしろかったです。続きが気になって夢中で読みました。最後のオチも意外性があって、完成度の高い小説だったと思います。最初は不思議の国のアリス風(?)の会話文がいくらなんでも…という過剰さで、うざったく感じられたのですけど、途中からそういう文体も少なめになっていって、後半部分になるとむしろ読みやすい文体と思えてました。慣れたということかもしれません。ひたすら会話文だけで何ページも進むという、めずらしい文体でした。

ネタバレで語ります。

不思議の国のアリスの世界と現実世界がつながっているという設定、オチが読めなくっておもしろかったですね。すべてレッドキングの夢の出来事だからつながっているというのは、まぁ納得感はありました。理由付けが無いよりはこういう説明があった方が安心感があって良いと思います。

主人公がアリスではなかったオチはかなりおもしろかったです。真犯人が判明したあともページ数の残りが結構あったので、この後の展開どうなるんだろうと思いましたが。まさかそこからアリス死亡→眠り鼠だったオチという展開があるとは思いませんでした。

まだ昨日読み終わったばかりなのですけど二度読みしたら亜理=眠り鼠というのがわかる描写になっていてさらに楽しめるかもしれないですね。暗号を眠り鼠が聞いているみたいな展開や、主人公が自分の分身をなかなか警察2人に明かさない(バレバレのはずなのに)という展開なんかはありましたけど、まったく気づきませんでした。真犯人の広山准教授も主人公もどちらも実は別のアバターだったというオチは良かったですね。こういう物語構造だからこそのオチというか。

続編が2冊くらい出ているみたいですけど、この設定でどんな続編が作れるのか謎な気がします。アリスも死んでしまってますし。不思議の国のアリスではなくて別のものがモチーフになるとか? でもそれだと続編ぽくない気がしますね。とにかく、それも文庫化されたら買ってみようと思います。

そういえば、不思議の国のアリスの登場人物をまったく忘れていて、公爵夫人とかトカゲのビルとかメアリーアンとか、どんなキャラだったかなぁ…って感じでした。そういえばいたような…みたいな。スナークはブージャムだった、についてはまったくわからなかったですね。不思議の国のアリス由来のものなのか作者のオリジナルなのか、それすらわからなかったです。不思議の国のアリスの登場人物をしっかり把握したうえで読んでいたらさらに楽しめたのかもしれないですね。

追記。軽く二度読みしてみたのですが、亜理はずっと自分がアリスだとは言ってなかったり、眠り鼠が会話を聞いている風な描写があったり、亜理とハム美が毎日長く会話してるという描写もあったり、おもしろかったですね。

長沢樹『夏服パースペクティヴ』ネタバレ感想

長沢樹『夏服パースペクティヴ』角川文庫 2015年12月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

久しぶりの更新になりました。けっこう前に読み終わっていたのですが、ブログを更新するタイミングがなかった。事務所の新規の仕事が何件かあって多少忙しくなったりもして。でも、もうどんなに時間がなくても2~3行でもとにかく書いていこうと思います。

ということで、消失グラデーションの続編扱いの小説でした。消失~がとてもおもしろかったので、続編も買ってみました。ただ、続編といっても時系列的には消失~の1年前の話ということになるみたいですね。消失~の登場人物は樋口マユ以外まったく出てきませんでした。消失~は主人公の椎名コウくんのキャラクターがとても良い小説でしたので、そこはやはり寂しさというか物足りなさはありました。

ネタバレで語ります。

消失~と同じように、最後でびっくりみたいな展開があって、そこはとてもおもしろかったです。大迫真綾というキャラがその場にいるはずなのにまったく話に出てこないのはどういうことだろう…と、おもしろかったですね。この場の誰かの別名(芸名)が大迫真綾ということなのか…?とか考えたり。まさか序盤の受付係の推定25歳くらいの人が大迫真綾だったとは。意外性がありました。生き残り3名が全員同年代だったのですね。

樋口マユの性別やパーソナリティがぼかされてましたけど消失~の方でオチに使われてましたし、続編でこういう扱いというのは不思議な感じがしましたね。今さら隠されても感というか。でも1年前の話ということで、こっちがむしろ1作目で消失が2作目みたいなノリだと考えるとおかしくもないのかな。

このシリーズは他にも出ているみたいで、それも読んでみたいですね。でも今はおすすめの小説を何冊も教えてもらっているので、それを全部読み終えてからかなー。