読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

『羊と鋼の森』ネタバレ感想

宮下奈都『羊と鋼の森』文春文庫 2018年2月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

今どこの本屋でも最前列にずらーっと並べられている本。「本屋大賞」を取った本が文庫化されたという経緯の本らしいです。全然知らない作家さんの小説だったのですが、推されまくっていたので、つい買ってしまいました。寝る前に読み進めて3日くらいで読破しました。本屋大賞だけあって(?)おもしろかったです。すいすい読めました。普段ほぼミステリしか読まない人間なのですけどミステリ以外の小説もなかなかおもしろいものだなぁと思いました。

ピアノの調律師という職業が完全に未知の世界だったのですけど、現実にもあるのでしょうか。調律師の会社というものが成立するほど世の中のピアノの数って多いのかな。出張で修理してもらって何万円…?となるとピアノって結構お金のかかる楽器なのだろうか。部屋を防音にするのも大変そう。PCやスマホとかではなく人間の手で調整をするってのもおもしろいですね。そしてその世界の中で技術や才能の差があるというのが、知識ゼロなのでまったくぴんと来なくて、ちょっともったいない気持ちになりました。この業界のことを知っていたらもっとこの小説を楽しめたかもしれないなぁと。もし現実にも調律というものがあるなら、一度、調整前のピアノと、技術の無い人の調整後のピアノと、技術のある人の調整後のピアノを、聴き比べてみたいですね。食べ比べ飲み比べみたいに。

主人公の、ピアノや調律のことだけに一生懸命で他のことには無頓着という変人っぷりが、とても好感もてました。こういうキャラクターが作中で最後の方までずっと凡人扱いされるのがなんだか新鮮でしたね。フィクションだとこの手のキャラクターは天才型って感じだと思いますけど。コミュ障のように見えて意思をしっかり伝えられて丁寧な会話もできて、素直な性格で、凡人扱いされながら着実に成長していく、不思議な主人公像でしたね。ピアノの調律以外の日常生活シーンが描かれないせいか生活感がなくて、それも不思議な空気感に繋がっていたと思います。

最後、主人公が「外村さんの見習いになりたいです」と言われるシーンは、感慨がありました。すごくいい着地点で、壮大な物語だったなぁと思えました。 

東京都庭園美術館「装飾は流転する」

東京都庭園美術館「装飾は流転する」へ行ってきました。期間が2月25日までだったので、駆け込みで、平日火曜の午前中に目黒まで足を運んで。

 

東京都庭園美術館

http://www.teien-art-museum.ne.jp/

 

火曜の午前中という時間帯のおかげで館内が空いていて、とても快適に見学できました。目黒駅の周辺のカフェも空いていましたし、やはり平日はとてもいいですね。何なら土日に仕事して平日に美術館やカフェ巡りする生活もいいかもしれないなぁと思ってしまいました。開業税理士なので可能と言えば可能です。

「装飾は流転する」は7組のアーティストの「装飾」をテーマとする作品が展示される展覧会でした。この手の展覧会ではめずらしくオール撮可でした。7組それぞれとても良かったですし、東京都庭園美術館の建物もかっこよくて、しかも館内すべて撮可という、満足度の高い展覧会でした。

順番に写真を載せていきます。

 

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山縣良和さんというアーティストの作品。入口にどーんと置いてあって、この展覧会のメインの作品という感じでした。人形が着ていてもかっこいいですね。丸でありながら襟でハート型に見えるのがおもしろい。

 

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私は7組のアーティストの中で、この山縣良和さんというアーティストの作品が一番心に刺さりました。この人の作品ばかり写真に撮りまくってきました。この赤ずきん服も、かわいさとかっこよさが同居していてすばらしいと思います。

 

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トイレとお風呂と洗面台の部屋の中に立つ人形。この方向からのみ覗いて観ることができる作品でした。赤という色の圧倒的な鮮やかさを感じます。

 

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色とりどりの布を垂らした作品。これもパッと目を引く色鮮やかさ。

 

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着物のような服にカラフルなデコレーションが追加された作品。これも部屋に入った瞬間におお~っと思ってしまうくらいパワーを感じました。子供用のお面やぬいぐるみの量がすごい。楽しさ、明るさ、華やかさを感じます。

 

思わず調べてしまった山縣良和さんの会社の公式サイト

http://www.writtenafterwards.com/

他の作品も機会があれば観に行きたいですね。

 

 

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ここからは別の方の作品。ヴィム・デルヴォワさんというアーティストの作品です。細かさがすごい。

 

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銀色にきらきら輝く色合いと、装飾の細かさがとても美しかったです。あと作品のでかさも単純にすごかったですね。この大きさでこの細かさっていったいどれくらいの時間がかかったのだろう…と考えてしまいました。

 

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おまけの日本庭園。梅?が咲いていました。平日のお昼ごろで人も少なく、のんびり散歩できました。

東京都庭園美術館って、建物もかっこいいし、庭園を散歩もできるし、とても良い美術館だと思います。次の展覧会もまた行きたいですね。

『ナイルパーチの女子会』ネタバレ感想

柚木麻子『ナイルパーチの女子会』文春文庫 2018年2月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

新刊コーナーの目立つ位置にずらーっと並んでいて、〇〇賞を受賞という文言に釣られて購入しました。帯には高校生~と書いてあって高校生向けの小説なのかと思いましたが、実際に読んでみたら30代女性同士の関係の話でした。でも主人公2人は精神的には高校生女子っぽくもあり、高校生が読んでも楽しめるだろうとは思います。

全体的に、ちょっとデフォルメしすぎというか、大げさすぎてリアル感がなく白ける部分もあったのですけど、あるあると感じる部分もあり、文章にパワーもあって、最後まで楽しく読めました。2~3日くらいで読み切りました。でも大げさすぎるからこそエンターテイメントとして成立して楽しく読めるというのがあるかもしれません。リアルさを追求したら大手商社の社内でこんなこと無いだろう…で話が終わってしまいますし。

とにかく女友達がいないということを色々な方向から語りまくる内容の小説なのですけど、主人公が周りからひたすらディスられるのがかわいそうすぎて、どうか最後は前向きに終わってほしいなぁと思いながら読んでました。主人公が全方位からディスられて「だからお前には友達がいない」と言われるという、なかなかものすごい小説ですよね。でもところどころ納得感があるので、かなり心をえぐられました。

主人公2人の中では栄利子の方に多く共感できましたね。友達を渇望する気持ちもわからないでもないですし。楽しみにしていたのにいざ行ってみると旅館で眠れないところとか、物語は共感が大事という考え方も、わかります。もちろん栄利子ほどじゃないですけど。

この作者の小説は完全に初めてだったのですけど、文章にとても勢いとパワーがあって読んでて刺さる部分が多かったので、他の題材の小説も読んでみたくなりました。作者はこの「女友達」という題材に特別思うことがあってこれだけのパワー文章になっているのでしょうかね。でも著書数の多い作者のようなので特別思うところがある題材ならこれまでの著書でとっくに使っているかな。純粋に文章力がすごいってことかも。