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『今だけのあの子』ネタバレ感想

芦沢央『今だけのあの子』創元推理文庫 2017年4月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います

 

『悪いものが、来ませんように』がめちゃめちゃおもしろかったので、同じ作者の別の本も買ってみました。この『今だけのあの子』は5つのミステリ短編が収録されている短編集でしたが、どの短編もなかなかおもしろかったです。意外性のあるオチばかりで、それでいて読後感が良いものばかりで。さすがに『悪いものが、来ませんように』ほどのおもしろさはないと感じましたけど、短編集としてのクオリティは高かったと思います。

「あの子は私の友達?」という一貫したテーマ性があるのもおもしろかったです。いろいろな友達のパターンが描かれていましたけど、友情愛情が無いように見せかけて最終的には有ったみたいな物語が多くて、読後感がとても良いものばかりでした。あと、それぞれの物語が少しずつ繋がっているのも良かったですね。私は最後の「解説」を読んで初めて気づいた部分が多かったですけど。

この作者の小説って、なんか心をえぐる系のあるある描写が多いですよね。『願わない少女』の奈央が入学式初日に休むシーン、母親が「娘が熱を出してしまいまして……」と電話をかけるところから始まるシーンですけど、奈央に共感できすぎてめっちゃすらすら読めました。なんか疾走感があるというか。受験に落ちて制服を用意できなかった流れからの入学式初日に休む絶望感、この一連のシーンの描写はほんとすごいと思います。

このままこの作者の他の本も読んでいきたいですね。