読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

道尾秀介『カラスの親指』ネタバレ感想

道尾秀介カラスの親指講談社文庫 2011年7月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

いつもTwitterで小説を教えてもらっている人が今読んでいると言っていた本。ちょうど寝る前に読む本がなくなっていたので、それならばということで自分も買ってみました。かなり古い作品だったみたいですが、作者は聞いたことのある人でした。何度か読んだことがあると思います。終盤のオチにびっくり系の小説の人って印象でした。よくこんな物語構成&オチを思いつくなぁ系の人というか。すごいですよね。

というわけでネタバレで語ります。

この小説も、最後のオチにおどろく系の作品でした。かなり予想外で、驚きました。でもそう言われるとすべてが納得、という感じでしたね。たしかに不自然といえば不自然なストーリー進行が多かった気がしますし。都合のいい展開というか。でも小説なんてそんなものという意識で読んでいましたので、違和感は全然ありませんでした。序盤~中盤もかなり緊張感があって一気読みに近い形で読めましたけど、それがすべて仕組まれたもの&演技だったというオチは、かなりおもしろかったですね。すごいなぁと思いました。普通に緊張感を持って読んでましたので、完全にだまされました。

こういう最後にびっくり系のオチって、それがなかったとしても物語として成立するというのが大事ですよね。そうでないと、読んでいて、このまま終わるのはおかしいから何かあるのだろうな→やっぱりな、という印象になってしまいますし。

業者のフリをして事務所へ突撃する展開はすごい緊張感ありましたし、最後にすべてが明かされる展開もすっきりできましたし、二重に楽しめた小説でした。すべてがつながる感じは、とても良かったですね。すごかったです。

芦沢央『バック・ステージ』ネタバレ感想

芦沢央『バック・ステージ』角川文庫 2019年9月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

広島旅行のときに新幹線の中で読みました。広島の福山駅に着いたときもまだ途中で、そのあと福塩線という電車に乗り換えたあとも車内で読み続けて、ちょうど高木駅というおばあちゃんちの最寄り駅に着いたときにあと少しで読み終わるというタイミングで、もうこのまま乗り過ごして最後まで読み切っていこうかと思ったのですけど、さすがにおばあちゃんが待っているので断念して電車を降りました。それくらいおもしろかったです。夢中で読めました。結局おばあちゃんちに着いたあとはおばあちゃんと話したり買い物へ行ったり夜ご飯を食べたりしてましたから、その日の寝る前になってようやく最後まで読むことができました。

最初から最後までおもしろかったですね。基本は短編集って感じでしたけどそれぞれ繋がりがあったり同じ場所が舞台だったりで、一連の物語という感覚で読めました。

読み終わったあと、1話目の母親の話だけが舞台と無関係で謎だなぁとちょっと思ったのですが、よく考えると2話目も舞台とそんなに関係なかったですね。どちらもオチが意外性ある感じで、それでいて最後はいい雰囲気で終わって読後感も良く、いい話だったと思います。

でも3話目が一番おもしろかったですね。脅迫状が届く展開も、舞台の役柄のために体の関係を持つ展開も、ストーリーに緊張感がありました。オチも良かったです。ジャンプ漫画のアクタージュみたいなノリでしたね。舞台に命かけてる、みたいな。この話は短編としてはトップクラスにおもしろかったと思います。いま思えば妥当なオチという気もしますけど、新幹線の中で読んでいるときはおお~すごいオチだなあ~くらいに思いました。

最後の最後にいい雰囲気で終わるのも良かったですね。「もう解散したって答えてもいいですか」という台詞は名文だなぁと思いました。この終わり方は圧倒的なセンスを感じる。

この作者の次の作品も楽しみですね。今の最新作のカインは~みたいな名前のやつも評判がとても良いっぽくて、文庫化されるのが待ち遠しいです。

今村昌弘『屍人荘の殺人』ネタバレ感想

今村昌弘『屍人荘の殺人』創元推理文庫 2019年9月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

いつもTwitterで小説を教えてもらっている人から、ずっと前から教えてもらっていた小説でした。文庫化されたら買おうとずっと思ってた。映画化されるということは聞いていまして、たぶん映画化されるタイミングで文庫化されるのだろうなと、ずっと待っていました。

永福町の駅ビル2階の本屋で購入しました。今はどこの本屋でも新刊コーナーの一番目立つ場所に平積みにされていますよね。全然知らない名前の作者だなぁと思っていたら、新人だったらしい? この作品がデビュー作だったらしい? すごいですね。

読み始めてから3日くらいで読み切ってしまいました。とてもおもしろかったです。評判通りでした。特に後半は一気読みでした。

ネタバレで語ります。

最初は会話文の独特な感じがなじめなかったのですが、中盤以降はそれも気にならなくなってきて、ストーリーの続きが気になって一気読みでした。どういうオチになるのか読めなかった。

まさかゾンビものの小説だとは思わなくて、びっくりしました。かなり意外性がありましたね。現代が舞台で普通にこういうゾンビものの作品があり得るとは、と思いました。オチがどうなるのかほんと読めなかったです。ゾンビが本当にゾンビで明智さんとかが本当に死んでゾンビになったまま戻らないオチとは思わなかったです。何かトリック的なオチだと思っていたので、普通にそのまま終わったことに対して逆に意外性を感じました。超常現象があるタイプの世界観だったとは。ミステリだと超常現象に見えて実は…みたいなオチばかりでしたので。これはこれで新鮮でおもしろかったです。逆に騙された感がありました。

犯行動機とか犯人とかにもひねりがなく、ゾンビウイルスの詳しい仕組みも明かされないまま終わるという展開でしたけど、最後まで楽しく読めたので不満は無いですね。次回作へと続く感じなので、また楽しみです。

でも終盤でちょっと主人公犯人オチを匂わせる展開になったのは、おもしろかったです。引き込まれました。扉から外に出たときに目を合わせたのはおかしいというのは、まったく気づかなかったです。見取り図は何度も振り返りながら読んでいたのですが、そこは思いつかなかったですね。なるほどぉ~と思いました。

エレベーターに入れて1階へ降ろしてゾンビに殺させるみたいなトリック(?)はさすがにうーーん?って感じでしたけど、この終盤のあたりまでくるともう世界観に慣れてきたというか、ゾンビものだなという感じで読んでましたので、これはこれで勢いがあって良いって感じでした。このゾンビウイルスの製作者とか首謀者の人の目的なんかも一切説明がないまま話が進んでいってそのまま終わりましたし。ちょっと他の小説とは違うノリというか、でもこれはこれでいいと思います。

主人公の葉村くんとヒロインの剣崎さんに対しては正直そこまで魅力を感じなかったのですが、それでこれだけおもしろかったので、2作目以降も本当に楽しみです。この同じシリーズの続編も読みたいですし、まったく別シリーズも読んでみたいです。