読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

秋吉理香子『自殺予定日』ネタバレ感想

秋吉理香子『自殺予定日』創元推理文庫 2019年5月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

急に仕事がいっぱい入って、小説を読んだり美術館へ行ったりする時間を取れなくなってしまいました。はやく高井戸駅前にオフィスを移転して従業員を雇っていきたい。今から探すとして(不動産物件はもう探してもらってますけど)来年になる頃にはどちらも見つかっていたらいいなぁと思っています。

そうしたら平日は映画館や美術館行ったりしながら人に会う仕事をして、土日にPCに向かう仕事したり勉強したりしていこうかなと思っています。

というわけで、秋吉理香子『自殺予定日』。これは夜眠れなかった日に一気読みして、2~3日くらいで読み切りました。この作者の本は、暗黒女子からずっと全部買っています。毎回おもしろいですけど、今作も、なかなか読みやすいエンターテイメント小説だったと思います。

ネタバレで語ります。

読みやすくってさらさらと最後まで読めました。母のれい子が実は悪者ではないというオチは予想できましたけど、幽霊ではなかったオチはなかなか意外でした。少し無理があるような気がしますし…。

メールにログインして田辺院長との保険金についてのやり取りを読むシーンはわくわくしました。逆に何かオチがあるのだろうなとはこのあたりで思いましたけど。

主人公に対しても好感を持てました。不器用さと素直さがあって、作中で成長していく感じで。風水に頼るけど風水だけではだめという考えは、とても良かったですね。最後に友達と仲直りするのも風水ではなく自分の力でという流れで、いい終わり方だったと思います。

この作者の次の作品も楽しみですね。出たら買っていこうと思います。

芦沢央『許されようとは思いません』ネタバレ感想

芦沢央『許されようとは思いません』新潮文庫 2019年6月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

今月出たばかりの新刊ですね。今月に入ってから仕事が少し忙しくなってきて、寝る前に小説を読む時間があまり取れてませんでした。でもこの小説は3~4日くらいで一気に読み切ることができました。めちゃめちゃおもしろかったです。短編集なので1つ読み終えたら寝る、みたいにできたのも良かったです。

この作者の小説は毎回心にくる系の描写が多いのですけど、今作もかなり響く描写が多かったと思います。最初の「目撃者はいなかった」の主人公が逃げ続けていく描写もありえそうな感じが出ていて、引き込まれました。かなりおもしろかったです。最後どういうオチになっても主人公がかわいそうで終わるのだろうなーと思って読んでいたら、無実を証明するために警察に証言することになるという展開で、これはかなり秀逸なオチだったと思います。オチがうますぎてかわいそうな気分にも嫌な気分にもならなかった。ただなるほどそうくるか上手いな~という読後感でした。この話はほんとオチまでの流れがすごかったと思います。

次の「ありがとう、ばあば」も、ばあばの教育の面倒くささ、うざさが絶妙に描写されていて、ほんとにうまいと思いました。これはうざいなぁというところを絶妙についてくる感じ。ばあばも母も子供心を無視した教育方針で、でもあるあるな感じで、読んでいて心に響くものがありました。「もちゅうってなに?」に対して「何でもすぐ訊かないで自分で調べなさいって、ばあばいつも言ってるでしょう」と返答する感じとか、本当に絶妙にうざくて、うまいなぁと思いました。この作者はいつもこういう描写がうまいですね。しかもこの台詞がオチへつながっているのがまたおもしろい。あと、杏がサイコパス系だったので変な教育のせいで精神を歪められた的なかわいそうな話ではなかったのがまた良いですね。この教育のせいで誰も犠牲になってないというか。結果としてそういう構図になるのがとてもうまいと思いました。大人の教育方針によって子供が犠牲になるみたいな展開は話としてかわいそうすぎますし。

最後の「許されようとは思いません」もオチがとても良かったです。いままでちょっと嫌な感じにひねったというかサイコパス的なオチが続いていた中で、まさかのプロポーズオチという。幸せなエンディングで、最後の話にふさわしかったと思います。

やっぱりこの作者の小説は毎回とてもおもしろいですね。人間関係のあるある描写が心に響くものが多い。それに加えて今作は物語の構造的にもおもしろいものが多くて、完成度が高い作品だったと思います。

次の作品も楽しみですね。これからも出たら買っていこうと思います。

『囀る鳥は羽ばたかない』最新6巻までネタバレ感想

ヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない』大洋図書(最新6巻 2019年5月刊 まで)

 

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※BL漫画です。

※感想はネタバレで書いていこうと思います(6巻まで)

 

この手の漫画のガチ勢の人から借りてきました。実はこのジャンルの漫画を読むのは初めてではなく、むかーし仲良かった人がこの手のものを読んでいて、当時自分も多少読んだことがありました。もう10年くらい前の話だと思います。まぁそれはいいとして。

今回この漫画を貸してくれた人と2人で飲みながらなぜかBL漫画について色々と力説してもらいまして、この『囀る鳥は羽ばたかない』とあともう1つくらいおすすめがあって、これは今度映画化される予定で、テレビ局の壁に映画化ポスターが貼ってあって、みたいな。結構おしゃれな雰囲気のバーのカウンターでワイン飲みながらだった気がします。なかなか新鮮な飲みでした。

というわけで『囀る鳥は羽ばたかない』、想像以上におもしろかったです。普通に良かった。1巻でいきなり泣けたのですよね。ネタバレで語りますけど、主人公の矢代が百目鬼妹に対して「君とは逆に セックスなしじゃ生きられない体になっちゃった」(この台詞の引用がはてなブログの倫理的に大丈夫なのかどうかわかりませんが)と言うシーン、矢代がかっこよくって泣けました。ここはワンピースのルフィ的なかっこよさがありましたね。相手の気持ちを思ってあえて明るく笑う、みたいな。この喫茶店のシーンの台詞回しはすべて良かったと思います。傘を返すのが自己満足という言い回しとか、「君のお兄ちゃんと三人で」からの「ああ 来ないけど?」とか。スピード感があって1ページ1ページが濃かった。

全体的に台詞回しがすごい好きですけど、特に1巻はおもしろい言い回しが多かった印象です。矢代の独白台詞はだいたいおもしろかった。「自慢じゃないが俺は俺のことが結構好きだ」あたりの台詞とか。

2巻で矢代が撃たれる展開は意外性があってなかなかおもしろかったです。そこからヤクザ内の抗争が6巻までずっと続くとは思いませんでしたけど。2巻の表紙だけ雰囲気が違うのは何か理由があるのですかね。表表紙と裏表紙でワンシーンになっていて良い表紙だと思います。表紙でいうと6巻もかっこいいと思いますけど。

借りる前に、主役の2人が全然Hしないというのは力説されていました。5巻くらいでようやくする、みたいな。なので、1巻からいきなりエロシーン(?)が大量に出てきたときは結構びっくりしました。あと、1巻から普通に口でしているのも意外でした。まぁしているというかしていないとも言えますけど。でも男の感覚だと、口でしてるのってセックスしてるのとそんな変わらないじゃん?みたいなのはありますよね。もちろんこの漫画の世界観の中で意味合いが別物というのはよくわかりますけど。むしろしていなかったのがしたという二重の意味で別物ですし、大事に思うがゆえにずっと拒絶していたのを一線超えたという大きな意味合いもあるわけですけど。

作中でホモであることにきちんと理由付けがあったり、むしろホモではないというキャラが多くて、それが意外でした。なんかBL漫画って理由無しで男と男が恋愛をするみたいなイメージもありましたけど。大前提になっているというか。それがこの漫画だとあくまで通常通りの世界観の中で理由があって男同士でしているみたいな描かれ方なので、世界観に違和感を持たなくて済んで良かったです。女子キャラクターも普通に出てきますし。男女間でも恋愛がおこなわれていますし。

そういえばいつもTwitterでおすすめ小説を教えてもらってる人にこの漫画を読んでいることを言ってみたら「BLは純愛らしい」と言っていたのですけど、たしかにこの漫画はめちゃめちゃ純愛ですね。すごいストレートというか。「綺麗な人だと思いました」という理由でずっと恋愛してるわけですし。でもその辺は少女漫画とかの男女間の恋愛漫画でも同じなのかな?そっちもあまり読まないのでよくわからないですけど。これがBLじゃなくて男女間だったら成立するのだろうか?ということは読んでいて考えましたね。こういう上司と部下の間の信頼と敬意みたいなのは男同士の方が成立しやすい気はしますけど。矢代が女子でも百目鬼が女子でも二人の関係性に無理が出てくる気がする。矢代が女子だとどうしてもかわいそうな感じが出てしまって痛々しい物語になってしまいそうですし、百目鬼が女子でこういう関係だったら矢代がひどいというか今度は百目鬼がかわいそうになってしまいそう…。

この矢代という主人公は本当にとても好感が持てました。かわいそうな過去からずっと描かれてきてますから、最後は幸せになってほしい。過去から描かれているから、思春期の少年みたいなキャラというか、こじらせてる系というか、そういう部分に対しても納得感がありますし、共感しながら読めます。百目鬼に対して「二度と戻ってくんなバーカ」と言ったりするときは女子っぽいキャラになったり、でも基本は仕事ができて部下に慕われるかっこいい男キャラとして描かれていたり。いいキャラですね。下の名前がいまだに明かされていないのはなぜだろう。ヤクザ内部の人間関係とかも設定は色々と決まってそうですけど描かれてない部分が多そうですよね。

そういえば、百目鬼が1巻からずっと矢代のことを「綺麗だと思ってました」と言っていて、その最初の出会いのシーンがいつ描かれるのかなーと思っていたら、なんか4巻くらいのおまけの冊子でさらっと描かれていて、結構衝撃がありました。大事なシーンのように思いますけど本編では描かれないのですね。

なんかこの漫画についてはもっと色々と語れそうなのですけど長すぎるのでここまででー。最終巻では二人に幸せになってもらいたいですね。