読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

『いじめを生む教室』感想

荻上チキ『いじめを生む教室』PHP新書 2018年7月刊

 

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学校でのいじめの問題について色々な視点から述べられた本。納得できる内容が多くてとても良い本でした。

独身なので普段いじめの問題について考えることも無いのですけど、仮に将来の自分の子供や親戚・友人の子供がいじめの問題に関わったりした場合、実際どう声をかけるか声をかけないか、とても悩みそうですよね。

どうすればいじめを減らすことができるかという話で、逆にどうすればいじめを増やすことができるか考えてみるというのはめちゃめちゃおもしろい視点だなぁと思いました。例えば、児童にストレスを与える、先生が率先して特定の生徒をいじるなどなど。あとは大人が差別的な言動をとり続けるとか、先生を忙しくさせて手が回りにくくさせるなどなど。いじめを増やそうと思ったら色々と手はあるものだなぁと思いました。つまりその逆の環境を作っていければいじめは減らせるのではないかということで、これはなるほどなぁ~と思いました。

あと納得感があったのが、子供に対して「嫌なら逃げてもいいんだよ」と言う無責任さについて語られていた部分ですね。テレビドラマとかでも見かけた台詞ですし世の中でもよく見かける言葉だと思いますけど。逃げ続けるだけの人生を選ばせるわけにはいかないので逃げたあとフォローが必要になると思うのですけど、その辺のことに触れずに「嫌なら逃げろ、何とかなる」と言ってしまうのは、さすがにテキトーすぎん…?と思ってました。「嫌なら逃げろ、何とかしてやる」なら可かなー。大人なら最低でもそう言えるようにならないと。

あとは、道徳の授業でいじめは抑制されないというデータの話や、教室の環境次第でいじめは変わるという話、教員が働かされすぎてる問題の話などなどがありましたけど、どれも納得感がありました。

ブラック校則の話なんかは、まだそういうのあるんだ…?って感じでした。私が学生だった10年~20年前の時代でも「意味の無い校則が多すぎる」って話は普通にあったのですけど。大人になったら無くせばいいのに。当時の子供たちはいま全員大人になっているはずなのですけどね。自分の過去を正当化するために「無意味な校則でもあれはあれで必要だったんだ」と自分で思い込んでいるのかな。だとしたらダサい大人ですねー。私が学校法人の運営者になったら意味の無い校則はすべて無くしますね。

あとがきで「エビデンスに基づきいじめの正体を明らかにする」という趣旨でこの本が生まれたという風に書かれてありましたが、たしかにいじめの問題についてしっかり根拠が示されていてわかりやすく納得感のある内容の本だったと思います。

映画『カメラを止めるな』感想

映画『カメラを止めるな』公式サイト

http://kametome.net/index.html

 

ものすごく評判になっていたのでずっと観に行きたかったのですが、なかなか時間が合わなくって、昨日ようやく観に行けました。吉祥寺のオデオンで観たのですが、もう毎回満席のようで、昨日の20時の回も満席でした。それで、一人で観に行ったのですけど、隣の座席の人の体臭(?)がめちゃめちゃ臭くって、ガチな話かなりの地獄でした。満席の映画館でこうなるともう地獄ですね本当に。前も新宿の映画館で周りの加齢臭がひどくて死にそうになったことがあったのですよね。座席が空いていたら移動すればいい話なのですけど満席だとそういう行動もできなくて。もうこれが映画館の最大の欠点ですよね。昨日は最後まで我慢しながら見続けたのですけど、こういうときは我慢しないで席を立って、一番後ろとかで立って観る方がいいのかなーとは思いました。かなり理不尽というか臭い方が席を立つべきだろうとは思いますけど、満足度を考えたらそれがマシなのかなー。そもそも満席になるような映画館へ観に行くのが間違いと言えるのかもしれませんけど、吉祥寺なんてどこで何をしてもこのレベルですからね…。あと、おそらく映画ファンの人って、なんていうか、身なりに気を使わない系の人が一定数いるのだろうなぁと思います。人と触れ合う娯楽じゃないですもんね。スクリーンの向こう側をただ眺めるだけっていう。

まぁまぁ。そんなわけで映画館は地獄でしたけど映画はめちゃめちゃおもしろかったです。

ネタバレで語ります。

序盤のワンカットのゾンビシーンは、ずっと同じカメラで撮り続けてるのがすごいなーと思いながら観ていました。まったく場面が切り替わらないのがすごいなーと。そこが話題になったのかなぁと思いながら観ていました。この映画が話題になりまくってるのは知っていましたけど内容は一切知らなったのですよね。

ゾンビシーンが終わってスタッフロールが流れたとき、そこで映画終わりなのかなと思って、おもしろかったから2時間あっという間だったなーと思いました。まさかそこから先がめちゃめちゃ長いとは思わなかった。でも、このゾンビのシーンも、女優の本気の表情を撮りたくてゾンビの真似事をしたら女優が本気になって人を殺してしまったというのは、なかなかおもしろいオチだったとは思います。というよりやっぱりこれをワンカットで撮影したのがすごいなぁという感じがありました。

中盤の日常シーンは、正直だるかったです。さすがに冗長を感じながら観ていました。そのときは最後のおまけシーンみたいなものと思って観ていたので、おまけ長いなぁまだ終わらないのか…と。

終盤の撮影舞台裏シーンは、めちゃめちゃ神でした。まさか最後にこんな笑える映画になるとは思いませんでした。全シーンが最高に笑えました。正直いま思い返しても笑えるという。これはすごいですね。まじでこの舞台裏のシーンはすべてが笑えました。趣味の話で場をつないでるシーンから、「カメラは止めない」の台詞でカメラ目線と突っ込まれるシーンも、ウンコのシーンも、カメラマン変わった?のシーンも、斧を拾うシーンも、最後の組体操シーンも。本当に全部笑えましたね。まさかこんなものすごいギャグ映画だったとは。ゾンビシーンで違和感あった部分がワンカット撮りだったせいではなくすべて伏線だったとは…という衝撃がありました。

今まで観た映画の中で一番笑えたかもしれない、ぐらいに笑えたと思います。映画館でも周りからものすごい笑い声が沸き起こってましたね。もう1回観に行きたいくらいです。たぶんもう1回観に行ってもまた笑えるだろうと思います。

住野よる『また、同じ夢を見ていた』ネタバレ感想

住野よる『また、同じ夢を見ていた』双葉文庫 2018年7月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

『君の膵臓をたべたい』の作者の2作目。これもめちゃめちゃ泣けました。君の膵臓~もかなり泣けたのですけど、それと同レベルで号泣できました。しかも、君の膵臓~は女の子が病気で死ぬ話なので、もうそれだけで泣けるだろっていうちょっと反則な感じなのですけど、今作はそういうのではなく普通に感動で泣かせる系の物語でした。私は割と素直に泣けるタイプではありますけど、それでもここまで泣けたのは久しぶりでした。『スロウハイツの神様』最終章を10とすると7~8くらいは泣けました。

今も「また、同じ夢を見ていた」という言葉を見るだけでちょっと泣けます。というか、読み終わった次の日に終盤部分を読み返して、そこでまた泣けました。すごいですね。2作中2作で号泣できる作家ってすごい。今後この作者の小説は全部買っていこうかなってぐらいの気持ちです。

主人公のなっちゃんのキャラクターがとても好感持てました。真っ直ぐで良い子だけどこれは確かに嫌われそうだなぁという性格で。南さん、アバズレさん、おばあちゃんとの触れ合いの中でしっかり成長していく感じがとても良くて、最後、導いてくれた人達のおかげで幸せなまま大人になることができましたという展開は、本当に感動でした。

南さん、アバズレさん、おばあちゃんが主人公の将来の姿だというのは南さんがいなくなったシーンで初めて気づきました。なるほどそういう物語構成かぁと。南さんとアバズレさんはどちらも死のうとしたところで主人公と出会って、主人公と話していくことで救われるという展開で、そこもまた良かったです。主人公が導かれるだけでなく、主人公もまた相手を幸せにするという。

文章の描写がとてもうまくて、それで泣けたという部分もかなりあったと思います。桐生くんの家での会話シーンとか。桐生くんが扉を開けて風が吹いて紙が舞うシーンとか、一緒に学校に行こうのあとの新しくこの世界にその色は生まれた~のシーンとか。あとはやっぱり、最後におばあちゃんの家を出るところの、猫とのシーンですね。彼女の声は私に大事な話があると言っていました、のシーン。このあとの風で振り返ったら原っぱになってるシーンまで、めちゃめちゃ泣けました。描写がストレートで、映像が思い浮かびますよね。

あと、やっぱり「また、同じ夢を見てた」「また、同じ夢を見ていた」という文章が出てくると、おお~っと盛り上がりました。毎回この文章が出るとクライマックスが来た感がありましたね。最後ほんとうに幸せになって良かった。

人生とは、幸せとは、というテーマでずっと語られる作品なので、読後感がとても良かったです。読み終わったあと前向きな気持ちになれる作品でした。