読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

麻耶雄嵩『さよなら神様』ネタバレ感想

麻耶雄嵩『さよなら神様』文春文庫 2017年7月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

神様ゲーム』がおもしろかったので、続編も購入してみました。こちらもすいすいと読めて、一気読みに近く、かなりおもしろかったです。

前作は講談社文庫なのに続編は文春文庫ってかなり謎な感じですけど。本の業界って一人の作家が色んな出版社から本を出しますよね。不思議な感じですね。普通は囲われそうなものですけど。作家という職業の立場が強いのかな。というか出版社が作家に払う金額が少ないのかな。囲うなら最低限の報酬が必要になるでしょうけどそういう支払い方じゃなくて売れた数の何%みたいな支払い方しかしないってことなのかな。同じ作家でも本によって売れる売れないの差が大きいってことですかね。あるいは同じ作家でも作品を出すペースがまちまちで計算できないとか? というより単に、本なんてどの出版社から出しても一緒だからそのときタイミングよく営業マンが来たところから出しましたみたいなノリなのかな。保険みたいな。

ネタバレで語りますけど、この『さよなら神様』は前作の『神様ゲーム』よりもオチが丁寧になっていて、伏線もきちんと張られていて納得感があり、完成度が高かったと思います。

主人公も好感度が高かったです。実は女子だというのは割と序盤からわかるようになっていましたけど、顔に出て周りにバレる性格とか、いいキャラクターだったと思います。

各話のオチが毎回ひねってあって、犯人が捕まらないとか、ちょっと別の人だったとか、意外性あっておもしろいオチばかりなのが良かったですね。神様の鈴木くんは毎回嘘は言っていないけど主人公の思った通りにはならない、という物語展開がとてもおもしろかったです。

特に『バレンタイン昔語り』はトリック(?)が神がかっていたと思います。「犯人は〇〇だよ」の犯人が後から登場して後から殺人をするという。しかも主人公のその行動によって殺人が起きるという因果逆転な感じ。神様というファンタジー要素があるから成立するストーリーって感じで、めちゃめちゃおもしろかったです。最後の「鈴木を信じるなら、そうとしか考えられない。他に選択肢はない。」という台詞がとても麻耶雄嵩っぽいなぁと思いました。

麻耶雄嵩『神様ゲーム』ネタバレ感想

麻耶雄嵩神様ゲーム講談社文庫 2015年7月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

「おもしろかったけど最後よくわからなかった」と言われておすすめされた小説。たしかに、最後は「ん???」って感じでした。そっち??っていう。

この作者の小説には昔すごいはまりまして、その当時に出版されていたものを全部買って読みました。たぶん10年前くらいの話です。メルカトルシリーズとかもだいたいおもしろかったですけど、やっぱり『螢』が一番おもしろかったです。完全にだまされました。めちゃめちゃ衝撃で、おもしろかったですね。あとは『貴族探偵』の中の「こうもり」とかも。

そんなわけで『神様ゲーム』です。最初から最後までずっとおもしろかったです。鈴木くんが本当に神様なのかどうか、さすがにこれで本当に神様でしたというオチは無いよなーと思いながら読んだわけですけど、どうやら本当に神様だったオチのようですね。世界観すごいな。

主人公の父親が共犯者だったという推理は、おお~なるほど~と思いました。すべてがつながった感じがありました。なので、最後に母親が天誅をうけるというオチはかなり謎な感じでした。わざわざ「神様は間違えない」「真実のみがある」と書かれてますし、母親の方が共犯者でしたというオチなのでしょうか。うーーん。母親が共犯者で死体の始末などをしたというオチなのだとしたら、父親も共犯者じゃないとおかしいですよね。死体をしっかり確認してこいなんて不自然すぎますし、すくなくともこの電話の時点では父親も共犯者でないと話がおかしい。とすると父親、母親の2人とも共犯者というオチしか無いように見えます。実際に死体の始末をしたのは天誅をくだされた母親の方で、普段あの屋敷でミチルちゃんと会っていたのは父親の方で、みたいな。でも神様の鈴木くんは「ミチルちゃんは共犯者と屋敷でいつも会っていた」みたいに言ってましたし…。とすると、いつも屋敷で会っていたのも母親の方で、母親はLGBT系の人で、ということでしょうか。主人公が両親と血が繋がっていないというのが若干の伏線になるか…って感じですかね。父親はもともとその関係を知っていて、電話で殺害のことを知らされて協力した、とか。

どっちにしても不自然というか、最後に意外性のあるオチにしようとして不自然な作品になってしまったって感じにどうしても思えてしまいますね…。もう一ひねりあった方がいいかな~と作者が思って、最後になって父親じゃなくて母親に変えた、って感じだったのでしょうか。読者からすると特におお~母親だったのかあ~となることもなく、母親ってのは無理すぎん…?って思ってしまうのですけど…。

日野草『GIVER』『BABEL』『TAKER』ネタバレ感想

 日野草『GIVER』『BABEL』『TAKER』角川文庫 2016年8月刊~

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

いつもTwitterでおすすめ小説を教えてくれる人がめずらしくめっちゃ褒めながらすすめてくれた小説。たしかにこれはとてもおもしろくって、1巻をまず一気に読破して、そのあとすぐ2巻3巻を購入してしまいました。最後までおもしろかったですね。

さらに今ちょうどドラマ版が放映されていて、それも毎週みています。演出がかっこよくっておもしろいです。配役もイメージ通りで、原作に忠実な感じ。特に義波くん役の人がめちゃめちゃ良いですね。ビジュアル良くて演技も上手い。

今期のドラマでいうと、「探偵が早すぎる」をとっても期待していたのですけどこちらは原作改変がひどすぎて1話の途中までしか見れませんでした。改変でもおもしろければ全然いいのですけどノリがいかにもテレビドラマって感じでちょっと寒く感じられて。主役がガッキー(の男装)だったらまだ見れたかもぐらいのレベルでしたね。

さてさて。

内容についてネタバレで語りますけど、1話の中で二転三転する感じがおもしろかったです。登場人物がどうなるのか、これから何が起こるのかわからない展開ばかりで、読んでいて緊張感がありました。特に1巻『GIVER』が一番話が読めなくておもしろかったです。2巻3巻になるとどうしても物語のパターンができあがってきて義波くんの登場時点である程度読めるみたいなのがありましたけど。

設定がとっても中二というか、漫画やアニメ的というかそんな感じでしたけど、世界観には素直に入り込めました。殺し屋夫婦に育てられたとかリアル感がまったく無いですけどそれはそれで。ミステリ小説ではなかなか無い設定だなぁとは思いました。

最後も、悪事銀行に追い詰められてどうなるのかなーと思いながら読んでいましたけど、綺麗な終わり方で良かったです。2巻くらいの時点では、3巻はサポーターズvs悪事バンクの全面戦争みたいな展開になるのかなーと思いながら読んでましたけど。最初から最後まで義波くんのキャラクターがとても良くって、最後に心を取り戻しかけてサポーターズの仲間たちと仲良くやっていけそうな雰囲気で終わったのは、いい終わり方だったと思います。