読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

『校舎五階の天才たち』ネタバレ感想

宮司いずみ『校舎五階の天才たち』講談社タイガ 2017年9月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

今年の9月に発売されたばかりのミステリ小説。twitterで存在を知って購入しました。同じ講談社の文庫シリーズの『探偵が早すぎる』もtwitterで存在を知って購入したらめちゃめちゃおもしろかったという流れだったのですけど、この『校舎五階の天才たち』も、最近読んだ本の中で一番おもしろかったです。

(ちなみにこのブログに感想書いてないですけど最初の方だけ読んでそのままになってる小説なんかも結構あります)

最初は天才たちの描写にファンタジー要素を感じてしまってあまり世界観に入り込めなかったのですけど、主人公が素直な性格設定で共感できるキャラクターだったので読みやすく、どんどん読み進めているうちに世界観にも普通に入り込めてました。

ネタバレで語りますけど、天才たちもそれぞれがひねくれているというか、こじらせているというか、そういう人間臭い性格を持っていることが明かされていって、最後には共感できるくらいのキャラクターになっていました。現代文の問題をわざと間違えているんじゃないかって話とか、すごい良かった。登場人物の感情を答える問題に正解してしまえば(平凡な)クラスメイトたちの気持ちがわかると認めることになるからだ、っていう。良いシーンでしたね。

レミニセンス〇〇の意味が読み終わったあともよくわからなくって、読み返したら初めてイニシャルだということがわかりました。読み返してみたら渡部くんもめちゃめちゃ中二病的な描写でしたし、モノローグの加藤さんはたしかに1人で会話してる風な感じの描写でしたね。このモノローグは普通に加藤さんと篠崎くんの会話という認識で読んでいました。加藤さんの回想シーンかな、みたいな。最後の方のモノローグで「あんたでも篠崎良哉の考えはわからなかったか。」という台詞が出てきて、あれ!?って感じでした。このシーンの「あんたも偽物なのにな」って台詞も良かったですね。読んでいて、どういうことだ…?って、かなりおもしろかった。

最後の終わり方も、とても良かったです。途中読んでるときはこんな綺麗に終わるとは思わなかった。主人公が渡部くんの手をつかむシーンはめちゃめちゃ良かったですね。これから仲良くなりそうな感じで、美しいラストシーンだったと思います。帯に「青春ミステリの傑作」と書いてありましたけど、たしかにこれはとても良い青春ミステリだなぁと思いました。

『底辺への競争』感想

山田昌弘『底辺への競争』朝日新書 2017年10月刊

 

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吉祥寺アトレ2階のブックファーストで購入。今の社会では貧困・下層へ落ちないような競争が行われているという本。読みやすくて、内容も納得感がありました。ここ何年か日経新聞でもこういう貧困系の話はよく見かけるようになっていますよね。それ以外のメディアではもっとずっと前から。非正規雇用の拡大などで収入の少ない層が生まれて、下層化、非婚化、階級固定化という。実際そういう時代なのだろうなと思います。

何かあると非正規雇用へ落ちたりして下層化する、これが「下流移動」のリスクと本の中では言われていました。例えば勤務先の会社の倒産や、親の介護問題や、自分が病気になる、などなど。そうなるともう冗談じゃなく人生詰みますよね。私もそうなったら悲惨だなーという気持ちはやっぱり常にあります。例えば病気して働けなくなったら人生終わるなぁと。まぁ何万分の1とかの可能性のことを考えても仕方がないかな。というか病気になったら働けなくなって…なんていつの時代も一緒か。

下層階級が拡大していっているのは日本だけではなく世界全体の流れだと紹介されていました。日経新聞でもこういう論調の記事がほんとここ最近多いですね。製造業の時代は1つの大企業が世界で何百万人も社員を抱えていたが現在のIT産業の大企業は社員数が数万人だったりする、と。大企業社員という「エリート」になれる人口が少なくなって、その分、勝者総取りの時代になったとか。そういう。

本の中では、1つ・個人の努力、2つ・政府の支援強化、3つ・地域や社会ネットワーク作りという3重のセーフティネット構想が語られていました。政治については層の厚い高齢者層が全員死んでこの国の年齢層が平準化されれば高齢者優遇も終わるのかなって気はしますけど、それは30年後~40年後とかになるのかな。なかなか先は長いですよね。

というか私も事務所の売上が増えていかなければ底辺へ落ちる危険性はめっちゃあるのかもしれない。色々とがんばっていかないといけないですね。研修に出たり講師や指導員の活動をしたり紹介してもらったり。

『黒い家』ネタバレ感想

貴志祐介『黒い家』角川ホラー文庫 1998年12月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

ホラー系だけどおもしろいとおすすめされて、購入しました。これは古い作品と知っていながら購入。この作者のデビュー作らしいですね。ちょうどこの小説を読んでいる途中に、この作者の「エンタテイメントの作り方」という新書を読みました。本屋で平積みされていて、タイムリーだなぁと思って。そっちも良い本でしたね。

ちょっとネタバレというか、その「エンタテイメントの作り方」という本の中で、菰田幸子というキャラクターが~~みたいに重要人物っぽく語られていて、あ、実は夫じゃなくてこっちが主犯なのか~とわかってしまいました。これ知らなかった方が衝撃度は高かっただろうなぁと思いました。

あと、その新書の中で『黒い家』というタイトルは審査員の人が変更したという話も明かされていました。元々は『モラルリスクの黎明』というタイトルだったそう。モラルリスク~の方のタイトルは最後までまったくピンと来なかったですけど、あの終わり方を考えるとそっちも良いタイトルだったかもしれないと思えました。最後まで読んで初めてタイトルの意味がわかる、と。菰田夫婦は始まりに過ぎなかったということで、恐怖感のあるタイトルになっていたんじゃないかと思います。黒い家は黒い家でいいと思いますけど。

後半はほんとに一気読みだったのですけど、特に恐怖感あったのが、主人公がコンビニに行って帰ってきたら菰田幸子が来ていて合鍵で部屋に入られたシーンですね。ここほんと恐怖感あっておもしろかった。あとは、そのあと黒い家へ忍び込んで三善の死体を見つけるシーン。もうこのあたりから最後まで本当に一気読みでした。深夜2時すぎまでかけて。ホラーというかサスペンスというか、はらはらどきどき感がめちゃめちゃおもしろかったですね。