読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

『今だけのあの子』ネタバレ感想

芦沢央『今だけのあの子』創元推理文庫 2017年4月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います

 

『悪いものが、来ませんように』がめちゃめちゃおもしろかったので、同じ作者の別の本も買ってみました。この『今だけのあの子』は5つのミステリ短編が収録されている短編集でしたが、どの短編もなかなかおもしろかったです。意外性のあるオチばかりで、それでいて読後感が良いものばかりで。さすがに『悪いものが、来ませんように』ほどのおもしろさはないと感じましたけど、短編集としてのクオリティは高かったと思います。

「あの子は私の友達?」という一貫したテーマ性があるのもおもしろかったです。いろいろな友達のパターンが描かれていましたけど、友情愛情が無いように見せかけて最終的には有ったみたいな物語が多くて、読後感がとても良いものばかりでした。あと、それぞれの物語が少しずつ繋がっているのも良かったですね。私は最後の「解説」を読んで初めて気づいた部分が多かったですけど。

この作者の小説って、なんか心をえぐる系のあるある描写が多いですよね。『願わない少女』の奈央が入学式初日に休むシーン、母親が「娘が熱を出してしまいまして……」と電話をかけるところから始まるシーンですけど、奈央に共感できすぎてめっちゃすらすら読めました。なんか疾走感があるというか。受験に落ちて制服を用意できなかった流れからの入学式初日に休む絶望感、この一連のシーンの描写はほんとすごいと思います。

このままこの作者の他の本も読んでいきたいですね。

『悪いものが、来ませんように』ネタバレ感想

芦沢央『悪いものが、来ませんように』角川文庫 2016年8月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います

 

「おもしろいらしい」とおすすめされて買ってみた小説。広島行きの新幹線の中で半分読み、残りは広島で読破しました。全体的にめちゃめちゃおもしろかったです。最後のオチも完全にだまされました。ちょっと思い付かなかった。

序盤~中盤くらいは、女のめんどくささあるあるネタというか、人間関係のめんどくささあるあるネタというか、そういうノリで話が進んでましたけど、読んでいてあるあると共感できる部分が多くて、すいすい楽しく読めました。

ネタバレで語りますけど、終盤の、女同士の親友関係と見せかけて母娘関係でしたというオチは、本当にびっくりしました。でも序盤からひたすら母娘関係が描かれてきてましたので、なるほどと納得はできました。なんか、奈津子が25歳くらいのはずなのに紗英が30歳というのは違和感があったのですよね。まさか奈津子が49歳というオチだったとは。途中、鞠絵の証言シーンぐらいのときは、なっちゃんが2人いるオチかなぁとかぼんやり思ってました。紗英の友達のなっちゃん鞠絵の友達のなっちゃん、みたいな。それはそれで全然おかしいと思いながらですけども。

この小説は、一度読み終わったあと、すぐに最初からもう一度読み始めてしまいました。それくらいすごかった。二度読みの時の方がおろしろいぐらいでしたし。二度読みしてみると奈津子が49歳というのを匂わせるような部分も結構あっておもしろかったです。「ほつれた白髪」とか「もう体力的にもきついから」とか。産婦人科のシーンが今時こんな横柄な病院ないだろう…昭和か、って感じだったり。ほんとに昭和のシーンだったとは。

この作者の小説を読んだのは完全に初めてだったのですが、他の作品も読んでみたいなぁと思いました。それくらい良かったです。

映画『PARKS』感想

映画『PARKS』公式サイト

http://www.parks100.jp/

 

今年の春くらいに上映されていた映画。井の頭公園100周年を記念して作られた映画らしく、地元民としてはすごく見たかったのですけど見るタイミングがないまま上映が終わってしまってました。それがいま吉祥寺オデオンで1週間限定でリバイバル上映されてまして、ついに見ることができました。水曜夜で、200席くらいのスクリーンが20~30人くらい入っていたと思います。

吉祥寺オデオンって、結構古い映画館だと思いますけど、広くて綺麗でとても良いですね。あと、どういうコネクションなのか知らないですけどスクリーン入り口でチケット切るアルバイトの人たちが女優さんかなってくらいビジュアルが良いことがある。スクリーンの中にいそうなくらいの。まぁ吉祥寺の街はそういう女子を結構見かけますけど。

さてさて。PARKS、ネタバレ有りで語っていこうと思います。でも、主演の橋本愛の歌声が良い、永野芽郁がかわいい、井の頭公園の景色が美しい、それだけの映画ですのでネタバレとかどうでもいいと思います。特に永野芽郁、演技がひたすらかわいかったです。これは朝ドラ主演も納得ですね。ほんと朝ドラの主人公って感じの雰囲気でした。喋る演技が自然な感じでかわいくて、それでいて聞き取りやすくて、まだ10代だと思いますけど演技のレベルが高い。橋本愛も同じく自然な感じの演技で、どちらもとても良かったと思います。

あとは、井の頭公園の景色がとても美しかったですね。いつも自分が見ている景色を映画館のスクリーンで映画として見るというのが、何というか、わくわく感がありました。吉祥寺の街のシーンとかも、よくここで撮影できたなあって思うシーンが多かったです。いつも人混みがやばいのに。

ストーリーについては、ハルの父親とトキオの祖母は結局どうなって別れたのだろう…とか色々と考えさせておきながら、あとはハルが過去編に普通に入り込んでいてミステリぽいオチを期待させたりしておきながら、すべてハルの小説でしたというオチだったのですかね、あれは。だから過去現在に遍在していたり世代が合わなかったりしていた、と。うーーんひどい夢オチだ。色んなシーンに入り込んで手直ししながら最後は納得のいく形で「PARKS」という小説が出来上がってにっこり、みたいな? うーんひどいオチだ。

でもいつも見ている井の頭公園の景色を映画館のスクリーンで見れたのと、永野芽郁がめちゃめちゃかわいかったので、見る価値のある映画だったと思います。