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『ナラタージュ』ネタバレ感想

島本理生ナラタージュ』角川文庫 2008年2月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

吉祥寺パルコ地下2階のパルコブックセンターで購入。ランキングコーナーに並んでいて帯に「映画化!」と書いてあったので新作かなと思って買ってみたら平成20年発売の文庫本で、しかも平成17年の小説を文庫化したものだったようで、10年以上前の作品でした。そこからさらに過去を振り返るみたいな設定の物語でしたし。作中でビデオテープとか出てきたり。めちゃめちゃ昔の話だった。割といい雰囲気のときに部屋でタバコを吸う描写があったのも衝撃でした。部屋臭そうだな。というか10年前がもはや想像できないですね。iPhoneとかが世に出た当初くらいかな。

さてさて。この『ナラタージュ』ですが、序盤~中盤くらいはそれほど物語に入りこめなかったのですが、最後は感動でした。柚子ちゃんの性犯罪描写は読んでて嫌な気持ちになりましたけど。主人公にも葉山先生にも共感はあまりできなかったのですけど、最後は落ち着くところに落ち着いたというか、別々にそれなりに幸せな人生を送っていけそうな感じが、よかったなぁと思えるラストでした。

中盤くらいは、小野くんが急にださい人間に描かれるようになって、うーーんって感じてしまう部分もありました。付き合ったあと変貌するってリアルといえばリアルかもしれませんけど、さすがに小野くんに人間味がなさすぎるというか。なんでそんな束縛するようになっちゃったのか…もともとそういう気質だったのか。彼女(主人公)の心が自分へ向いてないことはわかったうえで付き合い始めたような描写でしたけど、付き合っていくうちに多少は仲良くなっていけるだろうと思っていたらそうでもなくて不満がつのった、みたいな? にしても変貌ぶりに違和感が…。でもまぁ、小野くんは物語的には完全に脇役だと思いますし、そこまで語るほどの部分でもないですね。

 最後の最後の主人公と葉山先生のセックス描写の文章が、ほんとに神がかっていたと思います。このシーン読んでるとき作者天才だなあって思った。「彼はまだ余裕のある表情の中に時折、軽蔑しているような眼差しを見せた。そうすることで私のとりたてて秀でたところのない体に意味を与えた。」この辺の描写とか、日本語の力がすごい。よくこんな文章を思いつけるなぁと思います。このシーンはほんと、読んでいて作者が本気出してきたみたいに感じました。あーここがクライマックスなんだな、と。

そして最後は葉山先生が自分の写真をずっと持っていることを知った主人公が泣くシーンで終わるわけですけど、つられて泣けました。「そして私はふたたび彼に出会うのだ。何度でも。」←この文章だけで今も割と泣けるという。見ようによってはキモい事柄だと思うのですけど(写真ずっと持ってるとか)、そういう事柄を感動に昇華させるというのは、なかなかすごいことだと思います。フィクションの力を感じるというか。