読んだ本の感想など

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文春新書『負動産地獄』感想

牧野知弘『負動産地獄 その相続は重荷です』文春新書 2023年2月刊

 

 

いらない不動産を相続してしまうことの大変さについて記された本。今もいらない不動産は日本全国で多く存在すると思いますが、これからもっと生まれてくるだろうという内容の本でした。読みやすくわかりやすい本でした。東京都の杉並区に住んで税理士業をしていると、いる不動産の話の方が圧倒的に周りに多いわけですが。それでもたまに聞きます。地方の方にいらない不動産を抱えていて困っているという話を。

空き家が増えている問題や、貸アパートで需要がなくなる問題や、郊外のマンションやリゾート物件の価値が下がっている問題などなど。あとは独身のまま亡くなる人の財産問題なども。どれもあるあるだろうなぁと思いながら読みました。杉並区でも空き家は普通に存在していて、杉並区役所で「専門家による空き家対策相談会」というものが定期開催されているのですが、その税理士担当員の仕事を私は何年も続けています。色々なパターンの空き家があって、皆さんそれぞれで困っているようです。私が受ける相談は売却したときの税金のことや固定資産税のことが多いですけど。

この本で語られていた地方の実家問題は、私の家も他人事ではないのですよね。地方の私の家系の土地建物が私へ降りてくる可能性は普通にあります。そのときどうすればいいのか、まったくわからないですよね。住まないことは100%確定していますし管理できないことも確定していますけど。親族の誰も住まないなら売るしかないのかな…というところです。そのとき売れなかったときの悲惨さ、ということですよね。そういう感じの話がこの本で書かれてました。

「おひとりさまの相続」については、実は現時点でも結構あるのですけど、これからもっと相談が増えるだろうなと思っています。現時点でも私が後見人的な立場になって財産管理をしたり、将来そういう立場になることを依頼されたり、けっこう多いです。たぶん今後もそういう依頼は続くだろうと思っています。税理士の本業とは違うような気もしますので、どこまでこの方向の仕事を受けていくべきなのか、いまいち自分の中で定まっていないですけども。

この本の中でも触れられていましたけど、2023年4月から相続した土地を国に帰属させる制度がスタートしましたよね。いらない土地を国にあげられるようになれば、こういう「負動産」の問題はだいぶ解決しそうだなと思いますが。更地で平らな土地などの条件があるみたいです。実際どれくらいの土地が対象になるのでしょうね。将来私が実家の土地を相続したとして売れなかったら国にあげたいなと思いますけど。結局売れるような土地だけが対象ということになったら悲しいですよね。売れるなら売った方が得って話ですし、売れないからこそ国にお願いしたいわけでしょうし。

こういう要らない不動産問題はこれからもっと深刻化するのだろうなと思います。仕事で相談を受けるケースももっと増えてくるでしょうから、しっかり勉強していかないとなーと思っています。