読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

『きみのお金は誰のため』感想

田内学『きみのお金は誰のため』東洋経済新報社 2023年10月刊

 

 

永福町駅啓文堂書店で「第1位」として紹介されていたのを見てkindleで買いました。いつも思いますけどAmazonは街の本屋へ手数料を払ってもいいですよね。インフラにただ乗りしているというか。私にどうすることもできないですけど。

この本はお金や社会についての考え方の本で、お金のためではなく誰かのために働くことができればお金を単なる道具として見ることが可能になるという内容の本でした。納得感のある内容ばかりで、とても良い本でした。人を愛することが大事という最後の話も、納得でした。私も独身のときよりも結婚して子供ができた今の方がこの社会のことを真剣に考えていると思います。作中で「社会が他人事ではなくなる」という表現が使われていましたけど、その通りだなぁと思いました。

マネー本あるあるだと思いますけど、ストーリーは別に要らないというか、キャラクターの掛け合いで話が進んでいく感じに白けてしまうことがよくあります。Youtubeとかでもあるあるだと思います。作者が自分の意見を自分の口で素直に語ってくれてもいいのになーと思ってしまいます。別に技術を使おうとしなくてもいいのになーというか。でもこの本の場合は中盤くらいから気にならなくなりました。

国の借金が1000兆円あっても国から支払われた側の人たちがそのお金を持っているという視点は、なるほどと思いました。国内で支払われて国内で使われている間は問題ないわけですね。問題があるとすれば格差が起こりうるということですね。作中でも指摘されていましたけど。借金した1000兆円が一部の人に流れるようなことになってしまったら良くない。

格差の話では、お金の格差と暮らしの格差があるという話もとても納得感がありました。今は金銭的な格差はとても広がっているみたいですが、生活の豊かさの格差については広がっていないという話で、たしかにみんなが同じスマホで同じ情報を手に入れることができていますし、生活的にはみんなが豊かな社会になったと言えますね。

お金の話から社会の話へのつなげ方がスムーズで、とても読みやすい本でした。後半の贈与や愛についての話も、社会を良くするためにはという視点で語られていて、好感の持てる本でした。読後感が良かったです。

『女子とお金のリアル』すばる舎 感想

小田桐あさぎ『女子とお金のリアル』すばる舎 2023年8月刊 

 

 

確定申告も終わり、ゆっくり読書できるようになりました。小説も新書も漫画もこれからのんびり読んでいきたいと思います。こういうお金関係の本も読んでいこうと思います。税理士なので普通の人の100倍くらいはお金について詳しいですけど、マネー本を読んで勉強になることって結構多いです。この本はマネー本の中では明らかにプロ向けの本では無いと思いますけど、共感できる部分が多くてとてもおもしろかったです。

お金に対する心持ちや考え方について書かれた本でした。こういう考え方をすればお金のある人生になるという内容で、共感できて納得感のある内容が多かったです。お金は人からの感謝を集めた結果という話や、ビジネスとはいわばプレゼント選びという話などなど。貯金せずに自分に投資するという考え方も、とても共感でした。私も家族旅行にひたすらお金を使っていますけど、あとから思い返して楽しい気分になったりしていますね。そういうお金の使い方はとても良いと思っています。ついでに言うとうちの家も一人のためにお風呂を入れますし、エアコンは付けっぱなしです。細かい金額は誤差なので気にしないように生きています。もしエアコンの付けっぱなしで喧嘩したりイライラしたりすることがあるとすればそれは本当にお金で解決できる問題だと思います。

嫌なことをしないで好きなことだけするという考えも、とても納得でした。好きなことだけしていれば好きなことのスキルが積みあがっていくという考え。その通りだなと思いました。好きだから楽しく続けられますし、楽しく仕事を続けた結果クオリティが上がって稼ぎも増えるというのは理想的で、とても良いと思います。

一番ズルイと思う人を真似するとか、他人の得が許せないアンチとか、作者の人の言い回しがおもしろくてすいすい読めてしまいました。作者の素直な感じというか、欲望にストレートであろうという姿勢が伝わってきて、好感を持てました。さっと読めて印象に残る良い本でした。

遠藤かたる『推しの殺人』ネタバレ感想

遠藤かたる『推しの殺人』宝島社文庫 2024年2月刊

 

 

※小説の感想はすべてネタバレありで書いていこうと思います。

 

久しぶりに小説を読みました。そもそも確定申告期間中は読書する時間も無いのですけど、たまたま立川のららぽーとの本屋に入ったときに平積みに並んでいるのを見て、そのうち読むかなーと思って購入したら2日で読破してしまいました。おもしろかったです。

最近まったくライブに行かなくなってしまったので地下アイドル自体がとてもなつかしいものになってしまいました。独身のころはライブに色々と通っている間に有名どころはだいたい知っているくらいになっていたのですけど。

それはいいとして、この先ネタバレで語ります。

最初の殺人のときは、あーこれは別人が犯人パターンかぁと思ったのですけど、そんなことなかったですね。いきなりレンタカーを使って死体を運んだときは殺人バレ展開しかなさそうだけど大丈夫なのか…と思いながら読みました。途中でドッキリ展開が出てきてからがめちゃめちゃおもしろかったです。このドッキリのシーンは文章のスピード感と緊張感もすごくて、名シーンだったと思います。アイドルとしての覚悟という台詞を持ってくるのが良すぎた。色々な展開があり得ると思わせてドッキリオチというのは、良かったですね。そのあとの展開の流れも説得力がありました。

最後の終わり方も良かったですね。ライブで終わるのは美しい。ここも色々な展開があり得ると思わせる雰囲気で、うまい終わり方だと思いました。

地下アイドルの年齢制限あって有限な感じや地上に行けずに停滞している閉塞感が殺人隠ぺいの焦燥感と重なりあって、良い空気感になっていたと思います。全然知らない作家の作品でしたけど(デビュー作?)これは他の作品も読んでみたいですね。