読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

『ユリゴコロ』ネタバレ感想

沼田まほかる『ユリゴコロ』双葉文庫 2014年1月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います

 

今どこの本屋でも平積みにされている小説。ちょっと古い作品のようですが、来月(2017年9月)に映画化されるらしいです。「最初から最後まで失速なしでオチも良い」とおすすめされて購入してみました。本当にその言葉通り、最後までめちゃめちゃおもしろかったです。私がここ最近読んだ小説の中では『探偵が早すぎる』以来のおもしろさでした。それぐらい良かった。最後めっちゃ泣けましたし。しかも、いま映画版の予告動画というものをYoutubeで見てみたのですが、セーターについた種をひとつひとつはがしてもらいながら愛情を感じるシーンで、もうすでに泣けました。これ映画館でみたら号泣できるかもしれない。声質がちょっとイメージと違いましたけど。ノート書き手役はもっと綺麗な声の人が向いてたんじゃないかと思う。まぁ実際見たら見たでこれも有りかなって思ってそうですけど。

さてさて。序盤のノートを読む展開から最後まで、本当にずっとおもしろかったです。終盤も、主人公が人殺しするつもりで展望台へ向かうシーン、かなりわくわく感がありました。ノート部分でいうと序盤の殺人描写や中盤以降のアナタへの愛情の描写も、文章表現が綺麗でとても良かったですね。

細谷さんが母親だったオチもびっくりしました。でもすべてがつながった感じで。母親としてずっと近くにいたんだなぁと。最後泣けたのですけど二度読みしたらさらに泣けるシーンが結構ありましたね。「殺してやる」→「そんなことを考えてはいけません」のシーンとか。

とりあえず、来月公開の映画版は見に行きたいですね。予告動画の時点で泣けましたし。最近の小説の映画化でいうと「君の膵臓をたべたい」とかも映画を見に行きたかったのですけどまだ見れてないです。小説は読んでますけど映画館で見たらまた泣けそう。でも「君の膵臓をたべたい」は主人公の呼ばれ方が作中でどんどん変わっていく部分を映画では表現できないからどうなるのかなーって感じはありますよね。それと比べるとユリゴコロは問題なく映像化できる作品ですよね。ノート部分を「過去編」にするだけですし。 

『殺人鬼フジコの衝動』ネタバレ感想

真柴幸子『殺人鬼フジコの衝動』徳間文庫 2011年5月刊

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

名前だけはずっと前から知っていましたけど、この前おすすめ?されて初めて読みました。3日くらいで読破でした。

序盤~中盤は藤子の貧乏物語って感じのストーリーにまったく共感できなくってきつかったのですけど、最後どうなるのかなぁと気になって読み進めていく感じでした。そして、最後のオチ、めちゃめちゃおもしろかったです。びっくりしました。コサカさんのお母さんがなぜか何度も物語に出てきていたのはこういうことだったのかぁと。予想外のオチでした。ミステリー感あった。なので読み終えたときの満足度はかなり高かったです。

序盤~中盤はほんと、世界観になじめないというか、いじめで自殺するクラスメイト女子とか貧乏姉妹が体操着を共用とか、いくらなんでも…って感じの共感できない話が続いて、きつかったです。しかし共感できない具合でいったら中盤以降の方がすごかった。藤子の人殺し連発物語。でも中盤くらいになるとこの世界観にも慣れてきたというか、ある程度納得しつつ読むことができていました。子供時代からしっかり背景が描かれているから、読者として補完できるのかもしれない。

藤子が何をしても不幸になっていく感じが読んでいてかわいそうでしたけど、エンターテイメントとしてはすらすら読めました。これ最後どうなるのかなーと続きが気になって。それで最後、まさかこんなミステリー的なオチが用意されているとは思わなくって衝撃を受けましたし、めちゃめちゃ満足度高かったです。子供は殺人鬼にならずに済みそうな感じでその部分については救いもありましたし。

『保育園問題』感想

前田正子『保育園問題』中公新書 2017年4月刊

 

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今の日本の保育園関連の色々な問題について、網羅的に書かれた本。わかりやすくて良い本でした。この分野に関しては何とかしないと国がやばいレベルの問題が山積みですよね。関連する働き方問題とか未婚非婚問題なども含めて。

本の章ごとに感想を書いていきます。まずは序章「保活」について。これは本当に、友人夫婦や仕事の取引先の夫婦の方々の話を聞いていてもびっくりしてしまう話ばかりです。子供を保育園へ入れるということがどれだけ大変か。子供を保育園へ入れるために生活を変えるみたいな話も普通に聞きますよね。アルバイトだと子供を保育園に入れるのはまず無理なのでフルタイムで働くとか。とにかく保育園へ入れるために色んな苦労をしている話を、周りでかなり聞きます。私は独身ですけど結婚して子供ができたらまずここが本当に大変そうだなぁと思いますね、話を聞いていて。

第1章「保育制度」について。認定保育園の話などですね。何年か前に幼稚園保育園の一体化ってニュースになってたことだけ知っていましたけど、中身をこの本で初めて知知りました。あんまり普及していないそうですけど、実際周りでも幼稚園保育園一体型のところへ預けている人の話は聞かないかも。

第2章「待機児童」について。計上のやり方によって数字がぶれる問題とか、常にニーズが増え続けているので保育園を作っても作っても足りない問題とか。まぁニーズなんて基本100%なんじゃないですかね。保育園1ミリも要らないって家庭の方が例外って気がします。なので、極端な話ですけど、小学校中学校レベルまで保育園を作るくらいしないと待機児童は0にならないんじゃないかなと思います。しかしそうすると国の予算が足りないという問題だったり、これから先どんどん子供の数が減っていくので作りすぎると10年後に確実に持て余してしまうという問題とか色々あるようですけど。

第3章「保育士不足」について。新聞などでも給与の低さによる保育士不足問題は何度も何度も見かけていますけど、それだけではなく責任の重さだったり拘束時間の長さだったり、色々と大変な部分が多いようです。仕事自体は楽しくやりがいのある仕事というアンケート結果もあるようですが…。不足すればするほど給与も上がって待遇もよくなっていきそうなものですけど、この辺はいまいち他の業界でもそうならないことも多いようですね。介護業界とかも、人手不足なのに給与低いままとか。低い給与で人材募集してもなんだかんだ誰かは応募してくるってことなのかなぁ。

第4章「保育園の量と質」について。例えば線路下の保育園、騒音があって環境はよくないけど住民の反対を受けずに新しく保育園を作ろうとするとそういう場所になってしまうという問題。新しく保育園を作ろうとすると必ず住民の反対があるそうですね。これもめっちゃニュースを見ますね。まぁたしかにすぐ隣でめっちゃうるさかったりすると嫌な人には嫌かもしれませんが…。ちなみに私は新幹線などで隣で赤ちゃんがガン泣きしていても平穏な心で読書を続けられる人間です。なので家や職場の隣が保育園でも問題ないですね。

第5章「働き方問題」について。子供の保育の問題に関連して大人の長時間労働などの問題がそもそも有るよねという話。これは本当に100理ありますよね。労働時間が長いとか休みが取れないとか、こっちはこっちで本当に何とかしないといけないこの国の大問題だと思います。夫よりも妻の方が家事・育児の時間が長くなる問題も、労働時間問題と関連していますよね。

以上、保育園に関連した色々な問題について、網羅的にわかりやすく語られた本でした。現代日本で子供を産み育てるのって本当に大変な苦労を伴うものだなぁと思いますね。とりあえず、この国は老人層に使うお金を削って若者層や教育に投資するべきだと思います。でもそんなことしたら選挙で負けるからできないという、民主主義のワナ。