読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

渡辺優『ラメルノエリキサ』ネタバレ感想

渡辺優『ラメルノエリキサ』集英社文庫 2018年2月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

本屋の新刊コーナーに並んでいるのを見て購入。全然知らない作者さんでしたけど、本を開いたところに顔写真が載っていました。他にも芦沢央さんとか『何者』の作者の人とかも本の中で顔出しをしていましたけど、こういう顔出しって本人希望なのかな、それとも出版社から「ビジュアル良いから顔出ししていきましょう」とか言われるのかな。というか私も税理士として本名&顔出しでtwitterとかしていますけどもちろんナルシストで自分の外見や能力に自信を持っているから顔出ししているわけです。まぁナルシストっていうか普通に。たぶんこういう顔出ししている小説家の人たちもそんな感じなのでしょう。

帯に「一気読み必至」と書いてありましたけど、たしかに続きが気になってすぐ読み切ってしまいました。読みやすかったですし。主人公のキャラクターにも好感を持てました。共感できる感じで。最後のシーン、主人公とお姉ちゃんの車の中の会話、本当にめちゃめちゃおもしろかったですね。

ネタバレで語りますけど、主人公のキャラクターが、ネジが外れているようでいて常識的な感覚の持ち主という感じで、とても良かったです。中二病的な感じというか、好感持てますね。それに対してお姉ちゃんが常識人のようでありながら頭がおかしいという。お姉ちゃんが主人公に「迷惑かけないように死んでくれないかな」と言い出すシーンめちゃめちゃおもしろかったですね。ここから最後までは本当に一気でした。最後のお姉ちゃんとの会話シーンも、ページをめくったら「大っ嫌い。なんか癇に障んのよね、あのババア」で、ちょっと「ヴァン・ダインです」感ありましたね。すごいおもしろかった。この辺の主人公とお姉ちゃんの会話シーン、全部おもしろかったですね。読みやすくてさらっと読めて、いい小説でした。

井上真偽『その可能性はすでに考えた』ネタバレ感想

井上真偽『その可能性はすでに考えた』講談社文庫 2018年2月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

いつの間にか文庫化されていたということで、買ってきました。『その可能性はすでに考えた』タイトルかっこよすぎますね。全小説の中でもトップクラスにかっこいいタイトルだと思う。大きめの本ですでに読んでいるので、二度読みということになりました。加筆修正されているようですが、どこが変わっているのかは、前の本を捨ててしまったため(当時は本棚がなかったため)わかりませんでした。

ちなみにこの本は、吉祥寺のキラリナ7階の啓文堂書店では1冊も売ってなくって、アトレ2階のブックファーストでは新刊コーナーに2列平積みで売られてました。アトレのブックファーストは『探偵が早すぎる』もレジ前の棚にどーんと置かれてましたし、井上真偽をめちゃめちゃ推してますね。ちなみにパルコブックセンターでも新刊コーナーに並んでいて『探偵が早すぎる』も棚の目立つ場所に置かれていました。1冊も置いていない啓文堂書店の方が異端と言えるのかもしれない。

さてさて。内容について。この小説もまたキャラクターが美男美女ばかりで台詞も気取ってる感じなのですけど、そういう部分に対して作中でしっかりつっこみが入りながら話が進んでいくので、自然に読めます。普通の人の感覚から語られているというか。この作者の小説はどの作品もそんな感じなので、物語設定やキャラクターがファンタジーよりでも違和感なく世界観に入れますね。

敵役がとんでも推理を披露して探偵役が「その可能性はすでに考えた」と反論していくという流れ自体がおもしろいですけど、御神体が現実の人間の死体だった説はほんとおもしろかったです。御神体の正体を知っていた人間が全員消えたからその可能性は誰にも潰せない、という。この何でもアリ感がめちゃめちゃおもしろかった。作者天才だなぁと思いました。あと、「その可能性はすでに考えた」という言葉がほんとかっこいいですね。名言だなぁと思います。

続編の『聖女の毒杯』も文庫化されてほしいですね。文庫化されたら絶対買ってまた読みたいと思います。 この作者の小説は本当に好きです。頭を使いながら読んでいくところが。論理を積み上げていくところが。頭の体操みたいな感じで、寝る前に読むのに最適な作家だと思います。

『今夜、君に殺されたとしても』ネタバレ感想

瀬川コウ『今夜、君に殺されたとしても』講談社タイガ 2018年1月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

twitterでおもしろそうな感じで紹介されていたので購入しました。本屋の新刊コーナーでも表紙がとても目立っていましたね。ちょっと石野理子っぽい感じの女子の絵の表紙。インパクトありました。

話のテンポが良くてさらさらっと読めて、最後までおもしろい小説でした。読み終わったあと作者の人のツイキャスまで聴いてしまった。なかなかイケボで聞き取りやすい声で「コンキミ(と略すらしい)は評判が良かったので色々と展開できるようになりました」と言ってました。続編という意味なのか漫画化ドラマ化という意味なのか、それはまだ言えないそうですが。

あと、作者の人のツイキャスでは「コンキミは人を選ぶ作品」とも言われてました。これは私もそう思います。キャラクターや舞台設定がとてもファンタジー寄りですし、会話文も芝居調というのか、ファンタジー調で、変な雰囲気ありましたし。私もこういう会話文はどちらかと言えばしらけてしまうタイプです。会話文はリアル寄りの方がいい。それでも読んでいくうちに気にならなくなってきて、最後の方は普通に読めました。(女子高生探偵との台詞のやり取りは読んでいてきつい部分が最後までありましたけど。)

殺人者の異常性についての描写がどれも妙に納得感あっておもしろかったです。髪の毛で楽器を作るとか、誰かが名札に気づいたときに自分を捨てるかどうか試すとか、異常性を感じさせる描写でありながら妙にリアル感がある。ほんとにこんな異常者いそう感というか。そしてこういう異常者のことをわかるアザミとわからない主人公の対比もおもしろかったです。最後まですいすい読める小説でした。もし続編が出るのだとしたら、買いたいですね。