読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

中村文則『あなたが消えた夜に』ネタバレ感想

中村文則『あなたが消えた夜に』毎日文庫 2018年11月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

なんか写真がぼやけてしまってますが、撮り直しはめんどいので、このままで…。

Twitterでおすすめされて購入しました。つい先月に出たばかりの新刊ですね。ただ、おもしろいと言われていたのですが、私が購入して読み始めたくらいで「途中からぐだぐだになった」と言われました。もう買っちゃったよ…。

てことで最後まで読み切ったのですけど、まぁたしかに、中盤からは冗長感がありました。もうネタバレで語りますけど中盤からは犯人視点の手記パートで、裏側が明かされる感じなのでおもしろい部分もあったのですけど、主人公&ヒロインがいっさい出てこなくなって、ぽっと出の犯人キャラの話がひたすら続くという、ものすごい物語構成でした。割としらける感じがありましたね。長さ半分くらいで良かったんじゃないかな、という。

主人公とヒロインはとても好感もてました。この2人のキャラクターがこの小説の魅力の大部分だと思います。特にヒロインですね。変な人って感じのキャラクターでしたけど、発言がおもしろくて、年上相手に素直に発言して許されてるあたりが天才っぽいのも好感もてる。最初に美人設定と言ったあとはひたすら貶めるような描写ばかり続いてましたけど、バランスとるためなのか、それもまたおもしろかったですね。

序盤の、2人が通行人に話しかけてそのまま逮捕するシーン、自然にと話していたのにいきなり「すみませーん」と声をかける展開からの、ペダルに右足をかけたからすぐ近くに行くためにそういう声のかけ方をしたという流れはめちゃめちゃおもしろかったですね。結果的にはこの数ページがこの小説の中で一番おもしろかった。一番わくわくできた。

というわけで、後半の手記パートは主人公とヒロインがいっさい出てこなくって寂しかったですね。めっちゃおもしろいと思ったら失速…みたいな作品だったと思います。でもこの作者の他の小説は、またおすすめされたら買ってもいいかなくらいには思いました。

『なんでその価格で売れちゃうの』感想

永井孝尚『なんで、その価格で売れちゃうの?』PHP新書 2018年11月刊

 

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タイトルと表紙だけ見たら微妙そうな本ですが…。でも読んでみたらおもしろくてわかりやすくて、良い本でした。

物の値段について色々な事例が紹介された本。安く売っても利益をしっかり出しているお店の話や、高い値段をつけてもどんどん売れているお店の話などなど。基本無料サービスにしてトータルで利益を出している会社の話や、売るではなく貸すという商売の話なども。紹介される事例の数が多く、しかも読んでいてなるほどと思えるような事例ばかりで、おもしろかったです。

私は開業して2年目に入った税理士事務所なのですが、正直値段については安すぎるかなーと思えるぐらいの設定にしています。お客さまゼロからのスタートでしたので、とにかく仕事がほしくて同業他社よりも安く設定していました。でも今2年目に入り、ここ何ヶ月間かは毎月2件くらいずつ顧問先が増えてきていますので、そろそろ値段を同業他社と同じくらいに引き上げようかなーという感じです。将来的には駅前のオフィスビルにかっこいいオフィスをかまえて複数の会計士・税理士で「〇〇税理士法人」みたいな会社名にして、同業他社よりも高い価格設定にしていきたいです。事務員のような方々も雇って、簡単な仕事は仕組み化マニュアル化して誰がどの仕事でもできるような状況にしておいて、テキトーに出社して仕事の山の中から1個取って好きな時間だけ仕事してテキトーに退社してもらう。まぁそれはいいとして。

正直仕事が楽しすぎてとにかく色んな業界の色んな会社や個人を見ていきたいというだけの気持ちなので値段は何でもいいといえば何でもいいのですけど、毎日飲み会でお金もかかりますし、広くて綺麗なオフィスにしたいですし、結婚もしたいですし、そうすると多少は稼いでいかないといけない。今は売り手市場なので値段をあげても変わらず仕事はくると思いますけど10年後20年後もそうとはかぎらないですし(いや10年後はまだ相続の仕事で安泰かな)、やはりただ値段を上げてそれだけじゃなくて、ストーリーというか根拠というか、そういうものが必要なのだろうと思います。税理士事務所にも。ちなみに私の場合は他の税理士の先生方から仕事をまわしてもらったりヘルプで入ったりが収入源になっているという現状もありますので、そのあたりの値段設定はまた特殊な話なのかもしれません。あんまりべらべら言うとよくない話かもしれませんが。

まぁまぁ。そうやって自分の商売の値段設定の話なんかとも結びつけて考えたりもできて、この本は読んでよかったなぁと思います。

松岡圭祐『マジシャン 最終版』ネタバレ感想

松岡圭祐『マジシャン 最終版』角川文庫 2018年9月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

万能鑑定士の人の小説。特におすすめされたわけではないですけど、こういうのが出てるみたいに言われて、買ってみました。まぁまぁおもしろかったって感じでした。読みやすくて2~3日で読破できました。

万能鑑定士は昔かなり好きで、途中まで買い続けていました。さすがにシリーズが長く続いてるうちに冗長に感じてきて買わなくっていったのですけど、いつの間にか完結していたみたいですね。最初のハイパーインフレが一番おもしろかった印象かなー。

そういえば万能鑑定士は死人が出ないミステリでしたけど、この『マジシャン』は普通に殺人事件が起こって、なんだか新鮮な感じがありました。そういうのありなんだ?というか。

マジックの小ネタがおもしろかったですね。6本目の指とか。すり替えるトリックとか。作中で色んなマジックがどんどん出てくるので飽きずに読めた感じでした。

万能鑑定士もそうでしたけど、ものすごくノリが古いというか、作者これ絶対50代とか60代とかだろうなーって感じなのですよね。別にそれが悪いというわけではないのですけど、私が50代とか60代とかになったら共感できて楽しく読める作品なのかなーとは思いますよね。