読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

柚月裕子『ウツボカズラの甘い息』ネタバレ感想

柚月裕子ウツボカズラの甘い息』幻冬舎文庫 2018年10月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

Twitterで「読みやすくてさくさく読める」とおすすめされて購入しました。今月の新刊ですね。新刊コーナーの目立つ位置に置かれてました。名前は見たことがある作家なので、たぶんこの作者の本を買ったのは2~3冊目かな?と思います。

言われた通り読みやすくてさらさら読めました。文体も読みやすいし、展開もはやくて、続きも気になってすいすい読めた感じでした。おもしろかったですね。最初から最後まで安定しておもしろかった。終盤でようやく話が繋がったときは、おお~~っと感動できました。

最近は月曜から土曜まで毎日別の飲み会みたいな生活なので読書の時間が全然なくて、読破するまで1週間くらいかかったと思います。しかもこのブログに感想を更新するのにも3~4日かかってます。読み終わって4日くらい経ってますね今。ちなみに今はもう次の『朝が来る』という小説を読み始めています。やっぱり本の感想は読み終えてすぐ書かないとですね。絶対その方がいい。時間ないなら「おもしろかったっす」だけ2~3分で更新するだけでもいいし。今度からそうしていこう。

ネタバレで語りますけど、文絵パートの方がどういうオチになっていくのか読めなくって、物語展開がおもしろくて、かなりわくわくしながら読めました。月50万円の報酬を本当に払うとなると主人公が得しかしてないし…という感じで、オチが読めなかったですね。主人公を狙い撃ちにして舞台を整えて声をかけてきたのだろうとは想像できましたけど…。主人公が心の病気で、いない子供をいると思い込んでいる設定だからこその何が本当かわからない感じは、上手かったと思います。

オチも納得感があっておもしろくて、いい小説でした。どんどん小説を読んでいきたいけど今は時間がとれないのが悲しい。小説だけじゃなくて仕事の勉強の本ももっともっと読んでいきたいのですけど…。

結城充考『プラ・バロック』ネタバレ感想

結城充考『プラ・バロック光文社文庫 2011年3月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

Twitterで「ミステリではないけど、一気読みだった」と教えてもらって購入しました。古い本だったみたいで吉祥寺駅ビルの本屋で売ってなくって、Amazonで購入してます。

最近めちゃめちゃ飲み会が続いたり大事な仕事が入ったりで夜ゆっくり本を読む時間が取れなくて、結局読み切るまで1週間かかってしまいました。おもしろかったのですけど。

文体がものすごく特徴的というか、一言でいうとキモい感じで、薦められてなかったら絶対読んでなかっただろうなぁとは思いました。最初に読んだ日にすぐに「ちょっとこれ文体キモないー?」ってリプってますね。独自の世界観を作ってやろうという作者の狙いが中二っぽいというか。これで作者がリアル中学二年生ならぜんぜん許せてたと思いますけど、普通にいい歳したおっさんなのだろうと思いますし、たぶん。

まぁそれはいいとして。文体は最後の方は慣れました。全体的におもしろくて、特に後半部分は結末が気になってすいすい読めた感じです。主人公にも好感が持てましたし。ネタバレで語りますけど、主人公のお姉さんが普通に殺されたのはなかなか衝撃でした。そういうのアリなんだ…?って感じで。緊張感ありましたね。子供も殺される世界観という。

あと、電脳世界の描写がなかなか古臭くって、すぐに現実で出会えてしまう世界の狭さとか、20~30年前くらいの作品なのかなーと思ったのですが、今このブログを更新するために調べたら2011年の作品でびっくりしました。7年前くらいの作品だったとは。意外と最近の作品でした。

秋吉理香子『聖母』ネタバレ感想

秋吉理香子『聖母』双葉文庫 2018年9月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

Twitterで色々とおすすめ小説を教えてもらって本屋へ行ったのですが、すべてスルーしてこの小説を買ってきてしまいました。本屋の新刊コーナーで見かけて。『暗黒女子』の人の新刊だなーと思って購入しました。この作者の小説は『暗黒女子』『放課後に死者は戻る』と読んできて、どちらもとてもおもしろかったです。

この『聖母』もかなりおもしろかったです。また帯でものすごいネタバレがされてますけど…。たぶんこの帯がなければ1.5倍くらいおもしろかっただろうなとは思います。こういう帯ってよくありますし映画の予告編でもテレビドラマの次週予告でも本当によくありますけど、作者側ってこの手のネタバレに対してどんな気持ちなのですかね。満足度が低下してもとにかく見てもらえればおっけーという感じなのでしょうか。読者視点だと自分の作品をこんな思いっきりネタバレされちゃって作者さんかわいそうだなぁと思ってしまいますけど。

さてさて。内容についてネタバレで語りますけど、真琴くんが女子だったというオチも、保奈美→真琴→薫という親子関係も、完全に騙されました。でも真琴のキャラクター像は男子としてとても不自然だなーと思いながら読んでいましたので、女子でしたというオチには納得感がありました。全体的に男性キャラクターが不自然すぎるというか、かなり偏ったキャラクター設定ばかりなので、真琴くんの不自然なキャラクターにも逆に違和感がなくて、騙されてしまいました。この小説の世界観はこんなものなのかなくらいの感覚でした。保奈美の夫はいくらなんでも無神経すぎて不自然ですし、警察官の坂口は部下に対して懐が深すぎて不自然ですし、綿貫くんは気くばりがすごくて良い人すぎて不自然ですし。とは言え、このタイトル・この内容で男性について深く掘り下げて描かれてもそれはそれでおかしいと思いますし、男性キャラクターはあくまでも記号であるというノリの作品だったのだと思います。

読み返してみると真琴の性別は一度も作中で明言されていませんでしたし、保奈美が蓼科に執着していたことにも理由があって、最後にはすべて納得できるオチになっていました。真琴の性別は、女子生徒から告白されたり言葉使いが男っぽかったり、あとは真琴=異常な性犯罪者として物語が進んでましたので、思いっきり騙されましたね。薫がいなくなったあと「男の人と公園を出ていった」と言われるという流れもありましたし。この辺もとてもうまかったと思います。

叙述トリックのミステリは二度読みでさらに楽しめるのが良いですね。トリックだけではなく、殺害に至るまでの理由付けも二度読みで意味がわかるようになっていておもしろかったです。蓼科の殺害も、車を探して家へ来ていたというのが判明して、もし殺していなかったら…という感じでしたし。

娘のためなら母親は悪魔になれるということに収束するラストはとても良かったです。読み返すとすべてがそういうことだったという。序盤からひたすら母性や母親というものについて語られてきていたので、とても納得感のある終着点だったと思います。