読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

『ぼくのメジャースプーン』ネタバレ感想

辻村深月『ぼくのメジャースプーン』講談社文庫 2009年4月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います

 

辻村深月を連続3作目かな。スロウハイツの神様がめちゃめちゃおもしろかったので、ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ → ぼくのメジャースプーンと読んできてます。やっぱりスロウハイツの神様最終章が一番おもしろかったとは思いますけど、ぼくのメジャースプーンも、最後どうなるのだろうとどきどきしながら3~4日くらいで読破してしまいました。おもしろかったです。

主人公の「ぼく」が悩み考え続るシーンが半分以上なのですけど、ずっと真剣に考えて答えを出そうとし続けているところが好感度高いというか、素直な気持ちで読み進めることができました。秋山先生も主張や教えに納得感があってとても良かったです。秋山先生と主人公の対話はどのシーンもとても良かった。

ネタバレで語りますけど、最後の主人公の自分の首をしめろという「声」の能力は意外性があって、それでいて納得感もあって、とてもおもしろかったです。それまで秋山先生の友達の「許せない人間に対して自分ならこうする」という話がいくつか紹介されてきていて(それも極端な例ばかりでおもしろかったですけど)、主人公の選んだ結論がそのどれとも違うパターンでありながら、それまでの主人公の悩みの過程を思うと納得感が高いという、すごくいい物語展開だったと思います。

最後の最後で、ふみちゃんに対しては能力を使っていなかったと明かされる展開もめちゃめちゃ良かったですね。それはちょっと予想してなかったおもしろいオチでした。

辻村深月もっと読んでいきたいところですけど、また最近の新作でいくつかおすすめを教えてもらったので、次からはその辺を読んでいこうと思いますー。

『ウォーク・イン・クローゼット』ネタバレ感想

綿矢りさ『ウォーク・イン・クローゼット』ネタバレ感想 講談社文庫 2017年10月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

今月出たばかりの新作。吉祥寺パルコ地下のパルコブックセンターで購入。ここは新作コーナーが見やすくていいです。地下2階のせいか適度に空いていますし、好きな本屋ですね。

綿矢りさ作品を読んだのはたぶん数年ぶり?くらいだと思います。何冊か読んだことはありまして、文章うまい作家という認識でした。今作も文章表現が全体的に良かったと思います。「時間は有限だ。でも素敵な服は無限にある。」1行目から良い文章。さらさらと読める小説で、一気に読み終えた感じがしました。軽くて読みやすい内容というか。普段ミステリばかり読んでいるので、こういう小説もいいなと思いました。

1作目「いなか、の、すとーかー」も2作目「ウォーク・イン・クローゼット」も、どちらも続きが気になりつつすいすい読めて、最後はさわやかに終わる感じで、読みやすく読後感の良い小説でした。「いなか、の、すとーかー」の方は途中でオチが読めた感じはありましたけど、最後は主人公が本業がんばっていこうと覚悟を決めるという終わり方で、このさわやかなオチは読めなかった。「ウォーク・イン・クローゼット」の方は物語展開がはやくておもしろくて最後まで一気読みでした。オチとか無い話でしたけど、ユーヤくんが洗濯話に乗ってくれる終わり方は後味良かったですね。

1作目も2作目も、陶芸の話、洗濯の話と馴染みの無い世界の話でしたけどどちらも妙にリアル感があったのがおもしろかったです。ほんとに全然知らないので実際のところはわからないですけど。色んな世界が描かれるのが小説のおもしろさだなぁと思います。

『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』ネタバレ感想

辻村深月『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』講談社文庫 2012年4月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

スロウハイツの神様に続いて、辻村深月の本を買ってみました。結構ボリュームがあって、毎日寝る前に少しずつ読んでいって、読み切るまで1週間くらいかかったと思います。正直言うと序盤~中盤くらいまではそこまで入り込める物語ではなかったと思います。終盤は一気読みでしたけど。

テーマが母娘関係なので、もともと男が読んでも共感しづらい物語なのだろうと思いますけど、主人公の母親の「虐待」の描写がさすがにフィクションっぽさが強く感じられて、あんまり主人公に対して共感できず…でした。地方社会の合コン描写や女性の生き方描写に対しても別世界すぎて共感できなかったですし。とはいえ最後どういうオチになるのだろう…という気持ちはありましたし、文章表現もうまくて、最後まで読めました。

終盤に真相が明かされていく展開も、終わり方もとても良かったです。最後はちょっと泣けました。伏線回収も無駄がなくて、美しい物語構成でした。最後に明かされたタイトルの意味も、31歳の誕生日のシーンがあったのにまったく気づきませんでした。母から娘への言葉がそのままタイトルにになっていたというオチは、とても良かったですね。

辻村深月、他のも読んでいきたいですね。文章表現がすごいうまい。寝る前に読んでいて「この人めちゃめちゃ文章いいなあ」って思ったシーンが2~3か所あったのですけど、今どこだったかなーとぱらぱら見返してみても思い出せない。

あと、このチエミという登場人物が本も読まない映画も見ないという人物だったわけですけど、ちょっと前にまさにそういうタイプの人と知り合って、流れでその人に小説や漫画をあげたのですけど(たしか『幸福な生活』と『3月のライオン』)、その人3月のライオンを読んだ感想が「これで終わりなの?」だったのですよね。当時何巻だったか忘れましたけどもちろん連載途中ですよ。というか感想それだけだったという。あれは本当にカルチャーショックというか、知らない世界を垣間見たって感じで新鮮な体験でした。別に、明るくて話おもしろくて美人でいい人なのですけど。

あ、文章うまいなって思ったところ、例えば、主人公の初潮のときの思い出シーン、母がタンスからポーチを持ってきたシーンですけど、「母の趣味ではない、三毛猫の絵が描かれていた。私の趣味でもなかったけど、私の趣味だと他人が誤解する程度には雰囲気がある、かわいい猫だった。」という文章、めちゃめちゃ良かったです。というかこのシーン、全部の文章が切れ味すごい。やっぱ他の作品も読んでいきたい作家ですね。