読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

『浪費図鑑』感想

劇団雌猫『浪費図鑑』小学館 2017年8月刊

 

f:id:seoma:20170822134220j:plain

 

いつも品川駅から新幹線に乗るときに品川駅構内の本屋で本を買っています。漫画のことが多いですけど、今日は入り口新刊コーナーの一番目立つ位置にどーんと置かれていたこの本『浪費図鑑』を購入してみました。新幹線内で読破。

「○○で浪費する女」として10つくらい実例が紹介されていましたけど、どの文章もめちゃめちゃ笑えました。文章のパワーがすごい。内容的には共感できるものと共感できないものがありましたけど、基本というか大前提として、好きなことにお金使うのってめちゃめちゃ楽しいですよね。ほんと楽しい。私の場合はお金のかかる趣味が特にないのですけど、何事に対してもけちらずにお金を使っていきたいとはいつも思っています。そういうお金の使い方ができるように仕事がんばっていこうって感じで生きています。

さてさて。この本の中で特にめちゃめちゃうけたのが、「別に楽しくねーよ」(課金してるゲームに対して) 「推しを産みたい」「推しに遣うお金は養育費」(アイドルに対して) 「なんてお得! 実質無料!」(TDRの年間パスポートに対して) この辺ほんと新幹線の中で声だして笑いそうになってしまった。勢いがすごい。

ちなみに私も同じアイドルのリリイベとかライブに何度か行ってチェキ撮って認知を得られている状態なのですけど、ほぼいつも一人で行っているのでライブ後の特典会待ちタイムが手持ち無沙汰だったりで、全通とかは一切できていないですね。1~2ヶ月に一度くらいだけ行く感じで。遠征とか昼夜まわすとかも、なんだろう、羞恥心が邪魔をしてできないというか、いまいち説明できないですけどそんな感じです。というか、ライブやリリイベもいいのですけど、それよりも1対1でカラオケとか行きたいですよね普通に。絶対その方がいっぱい話せる。

あとこの本の中で納得だったのは、浪費する人アンケートでほぼ未婚だったところですね。既婚と未婚でお金の使い方はがらっと違ってくると思います。そこまでの高給取りでもない私が一切けちらず何にでも好きなだけお金を使えているのは、もう私が未婚だからとしか言いようがないと思います。子供がいたらこんなお金の使い方はとてもできない。だから未婚最高って言いたいわけではなくてむしろお金の面で不便になってもいいので今すぐ結婚したいけど相手がいないからできてないだけなのですけど。しかしいま未婚であるのならそれはそれで、未婚にしかできない人生の過ごし方を、好きな物やサービスに好きなだけお金を使って好奇心を満たしまくるという人生の過ごし方を、今後もしていこうと思っています。

『彼女はもどらない』ネタバレ感想

降田天『彼女はもどらない』宝島社文庫 2017年7月刊

 

 f:id:seoma:20170809100643j:plain

 

※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

この作者の前作の『女王はかえらない』がおもしろかったので、本屋の新刊コーナーで見つけてすぐ購入しました。それを昨日読破。

正直、序盤~中盤はそこまでおもしろくなかったです。この作者じゃなかったら途中で読むのをやめていたか、ぱらぱらと最後だけ読んでいたか、そんな感じだったかもしれません。でもこの作者の前作が叙述トリックで騙されて二度読み系の作品だったので、今作もきっと叙述トリックがあるのだろうと思って、そう信じて、読み続けました。前情報まったく無しの新刊でしたし不安でしたけど。結果的にはめっちゃ衝撃オチで、完全にだまされて、最後まで読んで大正解でした。叙述を信じて良かった。

一応、中盤くらいにこれはきっと伏線だろうな~というのが結構ありましたので、あとで一気に明かされるのだろうなぁという気持ちはありました。利一が「まあ、いろいろ面倒でさ」と言うだけで内容は語られなかったりとか、いちごバンビという存在とか。

楓と棚島の2人が夫婦(事実婚ですが)だったオチはめちゃめちゃ驚きました。すごいおもしろいオチだった。まずweb上で罵り合っていた2人が実は夫婦という設定がおもしろいですし、しかも夫婦ではなく不倫相手だったという二重オチもとても良い。レビューで同じ日に同じ店に行っているのが判明してストーカーか?という物語展開からのこのオチ、おもしろかったですね。

でも二度読みしたら、これでなぜ自分は気づかなかったのだろうってぐらいそれっぽい伏線が多かったですね。「やっぱり大人だけっていいよな」みたいな台詞が何度かありましたけど、これも子供がいないと出てこないものだなぁって思いますし。

しかし棚島のクズっぷりはひどい…。結果として美空ちゃんがかわいそうすぎる話でしたね。子供の気持ちとすれ違う親の行動という展開がずっと続いていましたけど、この辺の描写はなんだかリアル感あったと思います。

『木漏れ日に泳ぐ魚』ネタバレ感想

恩田陸『木漏れ日に泳ぐ魚』文春文庫 2010年10月刊

 

 f:id:seoma:20170809100900j:plain

 

※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

直木賞?と本屋大賞?という賞をとったとかで、ついこの前まで本屋でひたすら推されていた恩田陸という作家の本。私は一冊も読んだことありませんでした。ちなみに人に聞いたときは「そんな夢中になって続きを読むような作家ではないー」という話でした。まぁでも本屋でずらーっと並んでいたのでどれか読んでみようと思いまして、選んだのがこの本でした。

この本は吉祥寺のアトレ2階の本屋(ブックファースト)で文庫本ランキング第1位になっていてものすごく平積みされていたのですけど、パルコ地下の本屋(パルコブックセンター)ではランキングにも入らず平積みにもなっていませんでした。これは何を意味しているのか。もうこんなの誰が見ても同じ結論だと思いますけどブックファーストのランキングの方がテキトーなのでしょう。売れているランキングではなく売りたいランキングなのでしょう。この機会に直木賞作家の本を売ってやろうと考えて、2010年の文庫本を引っ張り出してきてランキング1位ということにしたのでしょう。私みたいに1位というのを見て買う人間もいますからね。ちなみにブックファーストの1位を見てパルコブックセンターで買いましたけどね。

さてさて。本の中身については、1位だけあって(?)めちゃめちゃおもしろかったです。少しずつ真相が明かされていく中で二転三転も有り。オチも納得感ありました。兄妹ではなかったと気付いたことによって、そこから考えを巡らせていって父親(ではなかったわけですが)の死因の真相に思い至る経緯、説得力があっておもしろかったです。

最初の数ページを読んだときは台詞の圧倒的な臭さ・寒さに耐えられずに本を捨てようかと思ったくらいだったのですが、捨てずに読み進めてよかったです。途中からは全然くさくなかった。最初の数ページはほんと村上春樹を目指して失敗した人みたいな感じでした。何だったのだろう。「気持ちのいい夜だね」彼女は、窓を見ながら言った。←唐突にこういう無意味な芝居台詞が湧き出てくる文章って謎すぎる。2010年の本なので当時はこういうのが流行ってたのかもしれませんけど。