読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

住野よる『よるのばけもの』ネタバレ感想

住野よる『よるのばけもの』双葉文庫 2019年4月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

Twitterで色々とおすすめ小説を教えてもらっていたのですが、本屋の新刊コーナーでこの本を見つけて、すぐに購入しました。そして他の本をすべて後回しにして、これを読みました。昨日の夜に深夜3時までかけて一気読みしてしまった。そして今日また軽く二度読みしてしまったという。昨日も泣けたけど今日も泣けた。

この作者の小説は『君の膵臓をたべたい』『また、同じ夢を見ていた』と読んできて、これが3作目になります。前の2作もかなり泣けましたけど、この『よるのばけもの』も本当に感動できました。前作に続いて、悲しくて泣ける系じゃなくて前向きな感動で泣ける系なのがすごい。いま井上真偽と並んで一番好きな作家ですね。

前作『また、同じ夢を見ていた』もそうだったのですけど、主人公に好感を持てて、全力で応援したくなりました。前作主人公のなっちゃんも今作主人公のあっちーも、素直でストレートに思考するけど不器用で、それでも少しずつ色々なことに気づいていって成長していく感じがとっても好感もてました。なかなかこんな良い主人公像は無いと思います。矢野さんのことを振る舞いが下手なんだと言っていたのに、その矢野さんからへったくそだなあと言われてしまうあっちーくん、ほんと良いですね。

あっちーくんの心理描写や行動にも納得感がありましたけど、他のクラスメイトたちもそれぞれの立場とそれぞれの考えがあって行動してるというのが描写されていて、世界観のリアルさ、深さを感じました。作中で描写されていない部分でもそれぞれのキャラがそれぞれの悩みを抱えながら生活しているのだろうというのが感じられました。細部まで丁寧というか、作者がこの小説に対してガチってる感じが伝わってきて、良かったですね。ハンターハンター王位継承編みたいな、脇役キャラもそれぞれの思惑があって行動している感じ。

教室内の空気や、いじめ描写、それぞれの立ち位置や行動についての描写なんかも読んでいてとても納得感がありました。リアル感があった。夜の化け物描写は完全にファンタジーでしたけど、昼の教室描写はリアル志向で、真逆でしたね。これはやっぱり昼の教室描写の方が作者の描きたかったことで、しかしそれ単体で描くと重たくなってしまうからファンタジー要素を追加した、みたいな流れなのでしょうか。夜の顔と昼の顔という設定のときに、夜がファンタジー設定だったので楽に読めたという部分はあったと思います。振れ幅が大きくて。最初がファンタ―描写から始まる小説だったから、教室内空気の描かれ方がとても丁寧なのが、読んでいて落差を感じて、驚いてしまいました。なんていうか、思うところがあって書いているという作者のパワーを感じました。それでいて重苦しくもなく、最後まですいすい読めました。夜の顔と昼の顔どっちがほんとうなのかという問いかけも、最初はファンタジー的な意味合いでの問いかけから始まって、最後は人間としての深い部分の問いかけになるという、とてもうまい構成だったと思います。

もうこの小説の良いところはひたすら語れるのですけど、文章もとても読みやすくて最高でした。会話文も地の文も変に気取ったところがなくって、ストレートで読みやすくて、情景が思い浮かぶ感じ。文体のセンスがとても良いと思います。なかなかこういう文体で書ける作家さんって少ないと思うのですけど、こういうストレートでリアル感を追求する感じの文体が一番好きですね。現代的で、一番かっこいいと思います。

緑川双葉というキャラクターも、最初は単なる脇役と思いましたけど、まぁ脇役ではありましたけど、矢野さんの元親友で矢野さんのために上靴をぼろぼろにしたり野球部の部室を壊したり、それをあっちーくんはまったく気づかないけど矢野さんはすべて気づいているという、作中で描かれていないところでもドラマがある感じがとてもおもしろかったですね。それぞれの思惑があって行動してる感じ。緑川双葉視点であっちーとは会話を続けたがっているような描写もありましたし、いつかみんな仲良くなる未来もあるのかなと想像できますね。あっちーくん以外のキャラはみんな基本的に見ていないようでよく見ているというか、あっちーくん視点なのでそういう構造になるのも当たり前でもちろん実はそれぞれ知らないことばかりなのでしょうけど、それで、周りからあっちーくんはフラットな視点で物事を見ることのできる人物と思われていて1対1で信頼して話してもらえるという位置づけになっていたのも、あっちーくんの心理描写や不器用で素直な行動描写から納得感がありました。これは好かれるだろうなと。

この作品についてはめっちゃ語れる。

最後の終わり方は本当に泣けました。おはようからのやっと会えたねという流れ。あっちーくん&矢野さんには幸せになってほしいですね。応援したくなる系のキャラクターだったと思います。

この作者は次の作品も出たら即買おうと思います。

麻耶雄嵩『あぶない叔父さん』ネタバレ感想

麻耶雄嵩『あぶない叔父さん』新潮文庫 2018年3月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

twitterでいくつかオススメを教えてもらったうちの1冊でした。なんとなく名前は知っていたけど…という印象の本でした。この作者の小説はいくつか読んだことがありまして、『螢』という小説が特に好きでした。トリックがすごいおもしろくて。 それ以外にもなかなかおもしろい小説が多かったと思います。ただ、例えば『貴族探偵』とか、設定はおもしろいけど少し冗長感があって最初から最後までずっとおもしろいわけではない、みたいな作家だったと思います。この『あぶない叔父さん』もまさにそんな感じの小説でした。

最初の1話2話くらいは素直におもしろかったです。叔父さんがどういう意図で行動しているのか読めない感じがおもしろかった。叔父さんが殺意をもって殺していたのか、本当に偶然なのか、それとも実は主人公が殺していたオチなのか。でも3~4話あたりから展開がわかってきて、叔父さんは本当に偶然殺してしまっただけっぽくて主人公も別に殺人をしていなくて、あとは最後まで多少の冗長感を感じながら、何か驚きのオチが待ってたりしないかなーと期待しながら読み切った感じでした。

最後の屋上の幽霊はよくわかりませんでした。選ばないといけないというのが明美と真紀の2人から1人を選ぶことかと思わせておいて何か別の選択のことだったということなのでしょうか。もう一度読み返したらわかるのかもしれませんけど…。正直後半部分は最後のオチに期待しながらささっと読んでいたので、何か見逃していたのかもしれません。明美が幽霊だったオチなのかと思いましたけど学校や病院や自宅で通常通り生活しているようなシーンもありましたし、屋上の幽霊は過去に屋上で死んだ女子の幽霊だったということなのかな。でもその幽霊にどんな意味があったのかは初見だとよくわかりませんでした。

あとは、真紀の「あなたが何をしたか知っている」みたいな台詞の意味も、隣町に叔父さんと同じような境遇のニートがいるのを知ってるという主人公の台詞も、よくわからないまま読み終わってしまいました。二度読み三度読みするとわかるようにできているのかもしれませんけど、一度読みの時点で冗長感を感じていましたし、二度三度読むのはきついかな…。

色々な伏線の意味がわかったらおもしろいのだろうと思いますので、たぶん長さが半分くらいだったらちょうど良かったのかもしれません。それくらいだったら神作だったのかもしれません。

深水黎一郎『最後のトリック』ネタバレ感想

深水黎一郎『最後のトリック』河出文庫 2014年10月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

本屋で平積みにされているのを見て『ミステリーアリーナ』の人の新作だなぁと思って購入しました。そしたら、新作ではなかったのですね。いまこの文章を書くために本の後ろの方を見て、それで初めて知りました。完全に騙されましたね。この小説のオチ以上に騙されましたね。まぁ騙されたというより私が勝手に勘違いしたという状況ではありますが…。

読者が犯人のミステリと作中で明言されているのがおもしろくて、最後までオチが気になって読み続けることができました。超能力がどういう風にオチに結びつくのかも予想つかなくておもしろかった。文章も読みやすくて、さらさら読めました。

ネタバレで語りますけど、読者が犯人というミステリは不可能だと作中で語られていましたけど、私は読者が犯人のミステリを以前読んだことがある気がしていて、読者が犯人ってすでにあるんじゃ…と思いながら読んでいました。でもそのタイトルをまったく思い出せなくって、もしかしたら自分の妄想だったかなーという感じでした。ちなみにそのすでに知っていた読者犯人オチというのは、人に認識されるとダメージを受ける能力の持ち主というような設定です。そしてダメージが蓄積されると、死ぬ。人に読まれることによってダメージを受けていく、というものです。つまり読者が、読むことによって、殺す。というものです。でもそれってこの『最後のトリック』のオチとかなり近いのですよね。まぁ読者が犯人というとそういう展開しかないということかもしれませんが。というか、単に私がこの『最後のトリック』のオチを誰かから聞いたことがあったということかもしれません。この小説は新作じゃなかったみたいですし。

最後の方で、「このトリックを実現するためには、深水黎一郎はそれまで、そこそこ読める本格推理小説を、何冊かは上梓しておく必要があった。」という一文が出てきたときは笑いました。あ、これ主人公=作者なのかぁ、と。

正直ミステリーアリーナの方が全然おもしろさは上だったと思いますけど、またこの作者で何かおもしろそうなものが出たら買ってみたいなーとは思いました。