読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

映画「ドライブ・マイ・カー」感想

映画「ドライブ・マイ・カー」公式サイト 

https://dmc.bitters.co.jp/

 

吉祥寺オデオンで見てきました。もともと東京リベンジャーズを見ようと思っていたのですけど、漫画版を全巻一気読みしてはまってしまって映画もという流れだったのですけど、予告編の映像を見たらそこまでテンションが上がらなかったので、そっちはやめて、でもせっかくだから代わりに何か映画でも見るか―というノリでした。けっこう満席に近い感じでびっくりしました。1日で映画の日?とかで安くなっていたからかもしれません。でも年齢層がすごい高くって、シニア割引で来てそうな人が多かったです。

ちなみに原作の村上春樹「女のいない男たち」は未読です。というか村上春樹は有名なやつを10年~20年くらい前に何冊か読んだことがあるくらいです。正直そこまではまっていない作家でした。

やはりというか、映画の雰囲気になじめない部分はありました。村上春樹ファンならこういうのがはまるのだろうなぁとは思いましたけど。1~2世代くらい上というか、作中の雰囲気が20年前くらいの感じに思えました。タバコ、セックス、オナニー、みたいな。昭和感というか。東京リベンジャーズが12年前の過去へ戻る物語ですけど、それよりもさらに過去の時代設定という感じでしたね。

私は普段ミステリか漫画ばかり読んでいるので、作中のキャラや出来事にきちんと意味が無いと納得できないというか、伏線が回収されないと気持ちが悪いというか、そういう感覚があります。そういう意味で、この映画のように主人公の心情とかが最後まで説明ないまま終わるのはちょっとモヤモヤ感が残りました。なぜ俳優を褒めないのかとか、なぜ演出意図を説明しないのかとか、それなのになぜプライベートでは役者と仲良くするのかとか、主人公のキャラクター像がいまいちよくわからなかったですね。

妻が語っていた物語に続きがあったという話は、伏線が回収された感があってめちゃめちゃおもしろかったです。階段を登ってきたのはヤマガ本人でも親でもなく空き巣だったとか、その空き巣を殺したのにそのまま日常が続いていたとか、おもしろかったですね。

瀬戸内の景色の描写は、とても良かったと思います。主人公が過ごす家の窓から瀬戸内海の海が見えるのも、とても雰囲気ありました。広島の平和記念公園の先の海の雰囲気も良かったですね。そういう場所でいちいちタバコを吸うのは20年前のセンスだなぁとは思いましたけど。ホテルのバーでタバコとかも。どうしても全体的に臭そうな雰囲気がしてしまいますよね。服とか髪とか。家のトイレで立って用を足していそうな主人公像というか。あと、序盤で主人公夫婦の中年男女のセックスシーンが割と長い尺で描かれていたときは結構きつさを感じました。映画監督からセクハラされてるみたいな感じで。中盤からは全然なくて良かったですけど。セックスのあとに創作が始まるという設定は、セックス描写の言い訳みたいになっていて、そこはちょっとおもしろかったと思います。

現代日本人にとっては、タバコ、セックス、オナニーって、全部やっていたとして、人生の中で1割未満の重要度だと思いますけど(他にコミュニケーション手法や娯楽がいくらでもありますし)でもおそらく、村上春樹の世代の日本人はタバコセックスオナニーが人生の5割くらいを占めていたのかなぁと、思いました。コミュニケーション手法の少ない時代の悲しみを感じました。