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阿津川辰海『名探偵は嘘をつかない』ネタバレ感想

阿津川辰海『名探偵は嘘をつかない』光文社文庫 2020年6月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

Twitterか何かで知って買おうとして、本屋で並んでいなくて(売り切れていて?)Amazonで注文して買いました。最初からAmazonで良かったですね。まぁこの本以外にも何か買うものが見つかるかもしれませんからね。だから本屋へ行く、と。

というわけで、名探偵は嘘をつかない、めちゃめちゃ分厚くって、読み切るまで1週間以上かかりました。毎晩寝る前に読み進めていって、何ページか読んで寝る、みたいな日々が続いていました。でも内容おもしろかったので最後まで読み切ろうとは思ってました。

実際、内容はとてもおもしろかったです。探偵が普通に職業として存在する世界観という、その中で探偵の弾劾裁判という謎設定で、正直いまいちピンと来なかったですけど、どういう展開になるのか読めなくて、わくわくしながら読めました。死者が生き返るというファンタジー設定がいきなり出てきたのも、すごいおもしろかったです。まったく先が読めない感じで。

この阿久津という探偵のキャラクターがいまいちはっきりしないというか、内面がまったく見えない感じがまたおもしろかったですね。真犯人Xがいるのかいないのかも最後まで読めなかったです。阿久津の主張が正しくって真犯人Xが存在するのかなーとも思えましたし。幽霊が阿久津の犯行だとネタバレするという展開はめちゃめちゃおもしろかったですね。かなりわくわくしました。ここからどうなるのだろうと。幽霊側が嘘をついているのかも…とも思わせる展開で、最後の方までどきどきでした。

終盤は割と一気に読み切りました。ネタバレで語りますけど、死者が生き返るというファンタジー設定がミステリ展開に思いっきり絡んでくるのがすごかったです。死体に死者を呼んで証言させようとする展開は最高にわくわく感がありましたね。終盤の、1時間44分の時間の説明ができないから~という展開も、考えてみればファンタジー度が高すぎてやばいですけど、作中でルール付けがしっかりされてあって、普通に納得して読めました。死者復活のルールがインパクトあってわかりやすかったですし、読者視点でそのルールも込みで考えながら読めたというか。なかなかこういうファンタジー要素がミステリに思いっきり絡んでくる小説は読んだことがなくって、新鮮でした。すごい自然にファンタジー設定を受け入れることができましたね。

偶然の殺人(事故)を探偵が隠すためにあれこれしていましたというオチも、まぁなるほど感はありました。ずっと探偵のキャラクターが薄くて定まらない感じだったのも、こういうオチならまぁ…というか。最後に、なるほどそういうキャラクターだったのか、という感じでした。

これだけ分厚くても最後までおもしろく読めて、いいミステリ小説だったなと思います。この作者の本はまた次も買いたいですね。楽しみに待っていようと思います。