読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

冲方丁『十二人の死にたい子どもたち』ネタバレ感想

冲方丁『十二人の死にたい子どもたち』文春文庫 2018年10月刊

 

f:id:seoma:20181123145153j:plain

 

※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

先月の新刊ですね。本屋の新刊コーナーに並んでいたのは見かけていました。Twitterでおもしろいとすすめられて、購入してみました。これはめちゃめちゃおもしろかったです。全然知らない作家の知らない小説でしたので、すすめられてなかったら買ってなかっただろうなと思います。うぶかたとうと読むらしいですね。歴史小説?とかの人らしい。あとSF小説とか? 読み終わったあと教えてもらいましたけど。こういう感じのミステリ系の小説が他にもあるならぜひ読んでみたかったですけど、歴史小説かぁぁ…。

さてさて。序盤はキャラクターを覚えるパートって感じでしたけど、中盤以降はめちゃめちゃおもしろかったです。途中からパズルみたいに頭を使う系の展開になってきて、1番から12番まで誰が誰だか振り返り確認しながら読んでいく必要がありました。6と7のメイコとアンリとか8~10あたりが何番だったかな…ってなりましたね。でもこういう頭使いながら読むタイプの小説はかなり好きです。

来年1月に映画化されるようで、公式サイトでビジュアルが公開されていますけど、割と全員イメージ通りですね。シンジロウは病気で髪の毛が無い設定だったと思いますけど映画ではカツラ設定なのかな。それくらいで、他はどのキャラクターか見ただけですぐわかる。なかなかすごいです。アンリのビジュアルとか、予告動画のメイコの「あなたなんじゃないんですか?」の言い方とか、完全にイメージ通りでした。

 

映画『十二人の死にたい子どもたち』オフィシャルサイト

http://wwws.warnerbros.co.jp/shinitai12/

 

あとはネタバレで語ります。

意外性のある展開&オチでしたけど、読み返したときにユキの主観パートの文章表現なんかはずるいなあと思ってしまいました。さすがに不自然すぎるというか。自分が車椅子を押してきたお兄さんが裸足で引きずられていくのを見ながらこの心情描写ってのは…。さすがにこれは犯人を隠すために描写が不自然になりすぎてるんじゃないかと。そう思いました。読み返したときに「おお~初見では気づかなかったけど伏線がはってある…!」みたいなのを期待したのですけど。

文体が、他の小説であまり見かけない感じの文体で、第三者視点の柔らかい文体というか、とても良かったと思います。地の文で「〇〇は〇〇〇と感じたようだ」みたいな言い回しが出てくる感じ。「〇〇は〇〇〇と感じた」ではなく。不思議な雰囲気で、おもしろかったですね。好感の持てる文体というか。設定やキャラクターはファンタジーよりだったと思いますけど、この文体のおかげで素直に世界観に入り込めてすいすい読めたのだと思います。作者の他の作品が時代小説(?)じゃなかったら順番に読んでいきたかったところでしたね。

最後のオチが予想外に前向きで、最高におもしろかったです。最初から自殺させないつもりだったとは。ここに関しては読み返したらすべてそう見えるように描かれていましたね。実行賛成に手を挙げてなかったり。

ラストはなんだかこのあとみんな仲良く幸せな人生を生きていきそうな雰囲気で、心温まる感じというか、読後感がとても良かったですね。サトシとアンリについても、これはこれで生きる目標ができている感じで。最後の2人の「あと何回かできそうね」という会話はとても良かった。最後に対アンリでみんなの気持ちが一致するという展開もとてもおもしろかったです。

12個のすべての数字を箱に戻して終わりというのも、とても美しい終わり方だったと思います。