原田ひ香『三千円の使いかた』中公文庫 2021年8月刊
※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。
吉祥寺キラリナ7階の本屋で平積みになっているのを見て購入しました。新刊ではなくて去年の本だったみたいですね。まったく知らない作家さんの小説だったのですが、なかなかおもしろかったです。夜寝る前に読み進めていって、3~4日くらいで読破しました。
姉妹と母と祖母のそれぞれの視点から描かれる短編集という形式の本でした。内容はお金の悩みにどう向き合うかというようなもので、現在お金が足りなくて収入を増やそうという悩みだったり、将来のために貯金しようとして節約する悩みだったり、ちょっと共感できる系の話ばかりで読みやすかったです。全体的に優しい世界観だったので読んでいて安心できました。お金のことを考えていくうちに家族の仲や理解度が深まっていく、みたいな。
こういう複数視点の小説は、他の視点からはこう見えていたけど実際は…みたいな展開がおもしろいですよね。みんなそれぞれ悩みを抱えている感じというか。世界観に深みが出る感じ。
あと、この本を読んでいてとても思ったのですけど、独身でお金が無かったころに読んでいたらもっと共感できただろうなぁということです。今はもう年をとってしまって3千円は誤差の範囲です。仕事もすべて1万円単位で請求ですし。3千円の使いかたを気にすることもなくなってしまいました。20代~30代前半くらいのときは超貧乏サラリーマンでしたので、そのタイミングで読んでいたらもっと世界観に入り込めただろうなぁと思います。