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朝永理人『幽霊たちの不在証明』ネタバレ感想

朝永理人『幽霊たちの不在証明』宝島社文庫 2020年3月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

出たばかりの新刊ですね。小田急百貨店10階の本屋で購入しました。2020年3月、東京がロックダウンされるかもみたいな話があった時期の話です。いま思えばのんびりした時期というか。普通に仕事して普通に買い物していました。まぁ今ものんびり在宅で仕事していますけど。

全然知らない作家さんの小説でしたが、これがデビュー作のようです。帯に「このミステリーがすごい大賞」と書いてありますが、大賞ではなく優秀賞というものらしいです。大賞が1位で優秀賞が2位?らしいですね。その1位の作品を買えばよかったなとちょっと思いました。でも帯に騙されるのはいつものことというか、ネタバレでないだけマシですよね。全然良い帯だと思います。

序盤~中盤くらいはキャラクターというか台詞というか掛け合いのノリにまったくなじめなかったのですが、終盤はめちゃめちゃおもしろかったです。調査編の途中くらいからおもしろくなってきたという感じでした。色々と伏線がつながってきた感じで。解決編で、1分単位で犯行時刻を特定させるという展開になったときは、とてもわくわくしました。死の定義=殺人者が首を絞める力を緩めた時、みたいな話が最初に出てきたときは謎でしたけど、犯行時刻を〇時〇分まできっちり特定するためだったと判明したときは、すごいおもしろかったですね。論理を組み立てていく感じで、今までの伏線が回収されていくのがおもしろかった。共犯者ならこう言うはずだから共犯者ではない、とか。入れ替わりの算段を立てていたならそんなこと言うはずがない(→入れ替わりは突発的なものだった)とか。こういうのはめちゃめちゃ好きです。

主人公が好かれていなかったというオチも、なかなか良かったです。そもそも抱き着いてきたのも別の人だったというオチで、恋愛感情について知らなかったからこそ抱き着いてしまった、というのも上手いなーと思いました。最後、主人公も甲森さんも切ない感じで終わりましたけど、これもまた青春小説っぽくて、良かったですね。幽霊たちの不在証明というタイトルについても、最後の最後になるほどなーという感じでした。

この作者の小説は、次もまた買いたいですね。楽しみにしてようと思います。