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長沢樹『消失グラデーション』ネタバレ感想

長沢樹『消失グラデーション』角川文庫 2014年2月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

GWはビジネス系の新書や税金関係の専門書ばかり読んでいました。この『消失グラデーション』はTwitterで教えてもらって4月下旬くらいに購入していたのを、ようやく昨日読み終えました。他にも3~4冊くらい教えてもらっているのですけど、まだまったく読めていないです。あと映画の「キングダム」もおもしろいらしいので観に行きたいのですけど、全然行けてないですね。GW終わってからかなー。まだまだ仕事にも余裕があるので、5月は映画館も読書もかなり時間が取れそうです。

この『消失グラデーション』、結構古い作品だったようで、作者もタイトルもまったく知りませんでしたけど、読んでみたらとてもおもしろかったです。もっとはやく読めばよかった。続編が出ているようなので、それも買って読んでみようと思っています。それくらいおもしろかったです。

ネタバレで語ります。

序盤~中盤くらいまで、主人公の椎名コウくんがこんな不器用で隠キャのコミュ障タイプなのに女子生徒にめっちゃモテる設定なのはファンタジーだなぁと思いながら読んでました。どんなイケメンでもコミュ障はモテない。でも女子だったということで、それなら納得感がありました。女子ということなら、これくらい女子生徒たちと話したり話しかけられたり胸倉つかまれたりしていたのもぜんぜん納得ですね。ただ、中盤くらいからこの椎名コウくんに対してはとても好感持てる主人公像だと思いながら読んでいたので、モテているのもこれはこれで納得かなぁという気持ちもあったのですけど。

まさかこういう叙述トリック系の作品だと思わなかったので、かなり意外感がありました。すべてが腑に落ちる感じで、すごいおもしろかったです。途中から椎名コウくんにはとても好感を持って読んでいましたけど、男女逆だったと判明してからもその好感度は全然変わりませんでした。思春期的な悩みやLGBT系の悩みは男女逆転させても成立するということですかね。もがきながら生きてる不器用な感じは、とても応援したくなるキャラクターだと思います。椎名コウくんが網川緑に対して惚れるときの会話のやり取りも、これは惚れるだろうなぁという納得感がありました。男女関係なく。「バスケやってる椎名が本当の椎名だと思ってるから」の会話シーンですね。

二度読みしてみるとたしかに女子なら納得という描写ばかりでした。心理描写も、周りの反応とかも。背が高かったからバスケをはじめたのに女子の網川緑と同じ背格好という設定もそうですね。主人公椎名コウくんが網川緑と対比されて描かれることもありましたし。網川がだめなら椎名がほしくなるとか顧問の先生に言われてたり。背格好が同じときに自分は摂生してこの体型を維持しているが網川は…みたいな描写も、読み返してみると女子同士じゃないと不自然にも見えますね。初見で読んでいるときは性差をあまり描かない作者なのかなということで違和感なかったのですけど。作中でLGBT的な設定もありましたし、男女が同じ土俵で会話したりライバル視し合ったりする世界観なのかなというくらいの印象でした。現代的だなぁと。

読み返したらゲイ野郎という言葉もたしかに樋口くんに対して言っていたのですね。初見だとまったく自然に主人公あての台詞だと思って読んでました。

とりあえずこのまま続編も買っていってみようと思います。ただ、続編は主人公が樋口くんの方になるのですかね、本の紹介文を見ると。椎名コウくん無しだとこの小説の魅力はかなり低下してしまうような気がしますけど、どうなのか…。続編については期待あり不安ありという感じです。