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小林泰三『殺人鬼にまつわる備忘録』ネタバレ感想

小林泰三『殺人鬼にまつわる備忘録』幻冬舎文庫 2018年10月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

Twitterでおすすめしてもらって購入しました。吉祥寺キラリナの本屋でもアトレの本屋でも売ってなくって、結局Amazonで買いました。もう半年前の本ですし、本屋からは消えていたようです。

全然知らない作家だったのですが、アリス殺し?みたいな名前の小説の作者で、それもとてもおもしろいらしいです。それは大きなサイズのやつでしか出ていないみたいなので、文庫本で出たら買おうと思っています。この殺人鬼に~もおもしろかったので、期待できそうですね。なんか今年中に映画化されるらしいので、そのタイミングで文庫化ですかね。楽しみにしてようと思います。

そんなわけで、この殺人鬼にまつわる備忘録。かなりおもしろかったです。1日2日くらいで読み切りました。ちょうど仕事も暇な時期になってきたので、読書が進んで良いですね。最初どういうジャンルの物語になるのかまったく読めなかったのですけど、途中から完全に能力バトル展開になってきて、それがおもしろかったです。かなりわくわくできました。文体が全部「これはじいちゃんのドラゴンダイブ!?」みたいなノリでしたね。読者への説明のために会話してるみたいな。完全にハンターハンターの世界で、慣れてるノリだったのですいすい読めました。どういう展開で殺人鬼を倒すのか、最後まではらはらできました。

序盤は殺人鬼がフィクションとはいえクズすぎて読んでてきつい感じがありましたけど、割とはやい段階でギャグ寄りの描写に移行してましたので、そこから先はエンターテイメントとして素直に読めました。いくらなんでも殺人鬼の沸点が低すぎて簡単に殺人しすぎだし、すぐ捕まりそうなものですけど、そういうところも完全に能力バトル的な世界観でしたね。記憶を操作する能力よりもカメラを無効化する能力の方がすごい。

歯の黄色い女の人は、最後まで謎でしたね。終わり方めっちゃ怖かったですけど。一瞬これが話し方教室の京子先生なのかと思って読み返してしまいました。でも何者なのかまったく描写されてなかったですね。主人公の記憶が抜け落ちている設定だからこその描写の抜け落ちということでしょうか。なかなかおもしろいと思いました。

主人公のキャラクター設定もとても良かったです。記憶障害でありながら冷静に何重にも思考するキャラで。それに対して殺人鬼のキャラクター設定が強力な能力を持ちながら迂闊なタイプということで、主人公vs殺人鬼がいいバランス成り立っていて、とても良かったと思います。能力バトルはバランスが大事ですよね。