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多島斗志之『黒百合』ネタバレ感想

多島斗志之『黒百合』創元推理文庫 2015年8月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

Twitterでおすすめの小説をいくつか教えてもらったうちの一つ。なかなか自分で小説を見つけていくのも限界がありますので、こういうのはとてもありがたいですね。寝る前に少しずつ読んで、1週間くらいかけて読破しました。ミステリではないのかなーと思いながら読んでいったのですけど、最後まで読んだらめちゃめちゃミステリでしたね。

子供3人の話とその親たちの話が順番に語られていくという物語構成で、ちょっとわかりづらさを感じながら読み進めてました。2つの時代の話がどう繋がるのがいまいちわからなかった。途中で、親が親を殺したというような関係なのかと思って、そのあたりが後半で物語に絡んでくるのかと思いましたが…。

 

もうこれはネタバレ全開で語ります。

何となく叙述トリック系の小説っぽい感じで紹介されていたので少し覚悟しつつ読んでいたはずなのですけど、相田真千子→日登美さんの相手→一彦の母親という流れは完全に予想外でした。かなり衝撃でした。でもこれですべてがつながった感じがあって、めちゃめちゃおもしろかったです。そのまま最初から2周目を読んでしまった。

登場人物の人間関係がとても複雑ですよね。時系列的には、香の父親(倉沢貴久男)と黒ユリお千(相田真千子)が恋仲になるが相田真千子がドイツへ行かされている間に倉沢貴久男は結婚、(香は別の女性との間の子供)、相田真千子はそのあと倉沢日登美と恋仲になり、そのことを倉沢貴久男に問い詰められて倉沢貴久男を殺害、相田真千子はそのあと一彦の父親(浅木謙太郎)と再会し結婚という流れですよね。複雑ですけど、この人とこの人が実はイコールで…と、パズルみたいでおもしろいですね。たぶん年表も書けますね、これ。

昭和10年(1935年) ドイツで浅木謙太郎30歳、寺元さん32歳、相田真千子20歳(19歳)が出会う。寺元さんに長男(進の兄)が生まれる。

昭和11年(1936年) 香の兄(正妻の子)が生まれる。

昭和13年(1938年) 進、一彦、香(愛人の子)が生まれる。この年に、浅木謙太郎・相田真千子が東京で再会。

昭和15年~昭和20年(1940年~1945年) 倉沢日登美と相田真千子が恋仲に。

昭和20年(1945年) 相田真千子、倉沢貴久男を殺害。

昭和21年(1946年) 一彦が相田真千子と初めて会う。浅木謙太郎と相田真千子が結婚。

昭和27年(1952年) 14歳の進、一彦、香が仲良く夏休みを過ごす。相田真千子、倉沢貴代司を殺害。

という流れでしょうか。黒百合というタイトルもそうですけど、相田真千子が物語の中心にいたということですね。

あと、最後の「ちょっと上目づかいで写っている私」という文章で、主人公の進くんがいきなり女の子に思えてきて、あれ??って思いながら最初から確認してしまいました。もしかしてこっちも…?みたいな。わざわざ「寺元さんに長男が生まれた」という文章があって一見するとこれが進くんのように見えるけど2年ずれているから進くんに作中で語られていない兄がいてこれは兄のことだったという構造になっているのも、とても引っかけっぽいです。でも作中で「ボーイフレンドをふたり従えて」と言われたり、進くんの文章で「少年の私たちよりは~」とあったり、絵も「2人の少年」と言われたり、男の子っぽいですね? 一緒に池で泳いだ描写もありましたし。うーん。相田真千子の写真が「青年の写真」「美青年」と表現されたり、女同士の恋愛が普通にあり得る世界観ではありますけど…。少なくても地の文章などで進くんが「男子」や「次男」と明言されている箇所はなかったわけですが…。