読んだ本の感想など

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『縮小ニッポンの衝撃』感想

NHKスペシャル取材班『縮小ニッポンの衝撃』講談社現代新書 2017年7月刊

 

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NHKの本ということはNHKのテレビ番組で放映された内容の書籍化ということなのでしょうか。あまりその辺の事情は知らず、本屋で平積みになっているのを見かけて購入しました。文章わかりやすくて読みやすい本でした。内容は地方の過疎化について、その中でも現時点ですでにやばい町をいくつかとりあげて紹介していく、という本でした。北海道夕張市(第2章第3章)、島根県雲南市(第4章)、神奈川県横須賀市(エピローグ)など。

 その前に第1章で紹介されているのが東京都への一極集中についてです。この東京一極集中も、現状は地方でまともな仕事に就けずどうしようもなくなった人が東京へ出てきて4人部屋住み込みで日給7,500円の生活をするみたいな「ネガティブ集中」という状況になっているそうです。あとは、東京都内で単身高齢者が警備員の仕事をしているようなケース、以前は高齢になるとそれぞれ地元へ帰っていったそうですが今は家族を持たず帰る場所の無い人たちが会社の寮に住み続けて死ぬまで働き続けるみたいな状況があるようです。うーん、道路で警備の仕事している人たちとか、どの人も「こちらどうぞ~」ってすごい丁寧な仕事ぶりですけど、その中には実際こういうきつい状況の人もいるってことなのかな…。

第2章以降の地方の自治体の現状についても、北海道夕張市は行政サービスをどんどん削っていって小学校が1個しかないとか、島根県では集落が消滅していっているとか、島根県雲南市では「地域運営組織」という住民組織が行政の仕事を肩代わりしているとか、そういう話が続いています。素でびびるというか、驚いてしまう現状の話ばかりでした。今後は住宅を駅前などの1か所に集中していかなければいけないという話も出てくるのですが、スマートシティみたいな最先端的な意味合いではなく、もっと泥臭いというか暗い話で、あっちが消滅したからこっちへまとめるみたいな、本当にタイトル通り「縮小ニッポン」の姿でした。

高齢化が進行している地域や街について「島根県の姿は20年後の日本の姿だ」とか「横須賀市の姿は将来の東京都の姿だ」みたいな言い回しが本の中でありますが(他のところで「秋田県は〇年後の日本の姿だ」という言い回しも聞いたことがあります)、どうもこういう言い回しを聞くと、別に島根県秋田県横須賀市も現状で存続しているわけですし日本も何十年経っても普通に存続し続けるのかなっていうのんきな気持ちにちょっとなってしまいますね。

この高齢化問題について、最近日経新聞で何度も特集を組まれている論点として、高齢者に対する社会保障費(医療費など)をどう削るか、という話がありますよね。ここを削らなければ日本はもたない、と。この本ではこの論点は一切触れられていなかったのですけど、社会保障費をうまく削ることができれば、他のことにお金を使えるので、何とかなったりしないものかなぁと思ったりするのですけど。後期高齢者の自己負担1割を3~5割にするとか。まぁ高齢者を切り捨てるような政策をするわけにもいかないでしょうし、なかなか厳しいですかね。