読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

『ブラックバイト』

『ブラックバイト』今野晴貴 著 岩波新書 2016年4月刊


ブラック企業」の人の新刊でした。

ブラック労働の中の大学生アルバイトの事例に特化した内容の本です。
今の大学生って、過去最高に真面目で明るくてコミュ力高い世代だと思います。それを変な環境ですり減らしてしまうのは、罪だなぁと思いますね。社会の大罪と言っていい。

なんかもうフィクションかな?と思うような事例が本の中で並んでいますけど、温野菜のパワハラすき家のワンオペも普通にニュースになってましたし、どれも事実なのでしょう…。
こういう話に対してはバイトなんだから嫌なら辞めたら?という考えが私も素直に沸いてきてしまいますけど、企業の方は辞めさせないための手法をあれこれ駆使してくるという。なかなかおそろしい世界ですね。
そもそも嫌なら辞めたらって言ったって、また履歴書を書いて面接に行ってバイト仲間の輪に入って…って相当めんどくさいですもんねぇ。

吉祥寺駅徒歩圏内に飲食・小売のお店が500店とか1,000店とかあるとして、それぞれのお店で複数のアルバイトの人たちが働いているでしょうから、何千人とかのアルバイトの人たちが今この瞬間も吉祥寺駅周辺でお仕事がんばっているわけですよね(お疲れさまっす)そう考えると中にはブラックな環境で消耗している人たちがいたとしても、おかしくない…のかな。
でも消費者としての私の体感から言うと、飲食店も服屋も本屋もカフェも、働いてる若い店員さんって本当にどの人もめっちゃ感じが良いです。改めて考えるとすごいなって思いますけど。ブラックな環境で働いているようには見えないなぁ。見えないだけで皆それぞれ闇を抱えているのかもしれませんが…。
というか何かブラックなお店がぱっと見てわかるような能力でもあればいいのになって思いますね。禍々しいオーラを感じる的な。そしたらそのお店は回避するのですけどね。

作中で指摘されていた「正規・非正規共通の下層労働市場が形成されている」という話は、その通りに思えます。
コンビニなどのフランチャイズのシステムって、本部中心のピラミッド構造で、下へ下へと損失をかぶせていくシステムになっていますよね。店にいっぱい仕入れさせて廃棄させて、店は店長自らレジに立ったりバイトの数を減らしたりして人件費削って、みたいな。そのシステムの下流の方の層はまさに作中で言われる通り「下層労働市場」なのだと思います。何とかしないと国がやばいレベルの大問題ですよね。

この手のブラック企業問題を経営者視点で考えてみると、例えば時給2,000円で雇うべき人材を時給1,000円で雇えたとしたら差額の1,000円が利益になるからおいしいですよね。しかしただ単純に「2,000円の仕事を1,000円でやってね」と言って呼びかけても誰も集まらないです。そこで例えば「お金ではなく感謝の気持ちを集めていけば人間は幸せになれるのです!」といった感じの理由付けが必要になってくるわけです。このこと自体は別に良いことでも悪いことでもないと思います。お金ではなくありがとうで家族を養っていこうと考える人がいたとしても別にその人の自由だと思います。ただ、やはりそういうことは身内だけでやるべきだろう…って思いますよね。どこか山奥にでも施設を建てて。街でおおっぴらに行なうのはやめてほしいな。