読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

太田忠司『麻倉玲一は信頼できない語り手』ネタバレ感想

太田忠司『麻倉玲一は信頼できない語り手』徳間文庫 2021年4月刊

 

 

※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

井の頭線永福町駅の2階の本屋で購入しました。2階じゃなくて3階かな。何か小説でも買うか~と思って、棚に並んでいる中から勘で選びました。この永福町駅の本屋も結構よく利用していますね。むかし永福町駅の税理士事務所でサラリーマンをしていたときから利用しています。

久しぶりにこういうミステリーサスペンス系の小説を読んだ気がします。全然知らない作者の小説でしたけど、なかなかおもしろかったです。最後はかなり騙されました。何となく変な感じはありましたけど、そもそもの設定がファンタジーなので、そういう世界観かーと思いながら読んでました。おもしろかったですね。

以下ネタバレで語ります。

死刑が20年以上前に廃止されているという世界観にだまされましたね。リゾートホテルの跡地に終身刑で過ごすとか、冷静に考えて不自然すぎますし生活の感じがまったく描かれていなかったのも違和感しかなかったですけど、そういう世界観の小説かーという感じで読んでいました。細かいことは気にしない系の設定なのだろうなーと。

まさかすべて作り話でしたオチは、すごかったですね。今まで読んでいた時間は何だったのかという気持ちも生まれましたけど、素直に騙されて楽しかったという気持ちの方が大きかったですね。まぁ序盤のうちから話の内容に嘘が含まれているのかなーと思いながら読んでいたというのもありますし。信頼できない語り手というのもずっと匂わされてましたし。

さすがに長谷部さんの兄が全身でレーザービームを浴びて死んだという物語にはとても違和感がありました。麻倉玲一の話に怒って向かっていって死亡というシーン。さすがにそれは無いなーということで何か嘘の話ということなのか、それか他に何かあるのか…という感じで読んでました。このあたりからはオチが気になって最後まで一気読みでした。

無人島から洞窟を通って抜け出せて、その洞窟の風穴の音がミミズクの鳴き声に聞こえるとかそのあたりの設定は小説っぽくて、まったく違和感なかったですね。あるあるみたいな感じで普通に読んでました。

目的が誘拐だったというオチは、とてもおもしろかったですね。なるほどな~って感じでした。取材でも何でもなく単に島で目的を持って過ごしてもらうためだけだったというオチに寂しさを感じないこともないですけど、そういう部分も含めておもしろかったですね。無駄に過ごしただけだったという主人公の状態に対して読者が共感できる感じというか。

一番最後の、主人公の彼女が嘘をついていそうだという展開は何だったのかよくわからなかったですね。主人公の疑心暗鬼さを読者にも味わってもらってシンクロ感、みたいな感じでしょうか。何か伏線とかあって読み飛ばしていたのかな…。

青山美智子『ただいま神様当番』ネタバレ感想

青山美智子『ただいま神様当番』宝島社文庫 2022年5月刊

 

 

※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

吉祥寺キラリナ7階の本屋で購入しました。最近は仕事も落ち着いてきていて、読書の時間も出かける時間も勉強時間もいっぱい取れて、まったりした日々を過ごしています。この本はキラリナの本屋で、読んだことない作家の本を読んでみるかーというノリで、新刊コーナーの中から手に取ってみました。

ということで知らない作者の小説でしたけど、思っていた以上におもしろかったです。買って良かった。前情報とかも一切無い状態で読んでいて、普通の現代日本が舞台の日常小説かと思ったらいきなり神様が出てきて驚きました。ファンタジー要素は想像してませんでした。神様の設定については最後まで何も語られてなかった気がしましたけど、そこはちょっとモヤモヤしてしまいました。何か読み飛ばしたかな。高次元の存在がいる世界観なのか、この神様だけが存在する世界観なのか。その辺の設定がないと何でもありに感じてしまって登場人物の行く末や喜怒哀楽が茶番に見えてしまう。バス停に宿る神様ということで良いのだろうと思いますけど。場所も時間も限定的で世界を壊すほどの能力ではないということで良いのだろうと思いますけど。

神様の願うことが実は本人が願っていることという設定は、とてもおもしろかったです。神様というおせっかいキャラが勝手に左手を動かしてきて、巻き込まれるみたいに話が進んでいくけど結果的にはうまくいく、みたいな展開で。登場人物それぞれが前向きな気持ちになっていくというストーリーで、読後感がとても良かったです。どの話も終わり方が良かった。最後の零細企業社長の話が一番おもしろかったかなーと思いますけど、どれも良かったですね。

短編集としてさらさらっと読めて、なかなか良い小説でした。たまにはこういう感じの小説も読んでいってもいいかもと思いました。

竹下隆一郎『SDGsがひらくビジネス新時代』感想

竹下隆一郎『SDGsがひらくビジネス新時代』筑摩書房 2021年9月刊

 

 

だいぶ前に購入していたのですが、地味に感想を書きづらくて溜めておいた本でした。慶応大学の同期なのですよね、この著者の竹下くん。一緒に遊んでました。卒業してからあまり会う機会がなかったのですけど、何かのメディアの編集長としてニュースで見かけて、お~竹下くんだ~と思った記憶があります。新聞社に入社するというところまでしか聞いてなくって。

竹下くんとの思い出は色々あるのですけど、一人暮らしをしている私の家に泊まりに来たときに色んな家を泊まり歩いていて3日くらい家に帰っていないと言っていたとき、すごい人だなぁと思いました。そんな生き方があるのかと。大学には普通に顔を出していたと思うのですけど。あとは、一緒に10人くらいでバスケのサークルを作ったときに、代表は自然と竹下くんになっていましたね。1年ぐらいでサークルは消滅してしまいましたが。とてもなつかしいですね。

さてさて。そんな竹下くんのこの本ですが、現代のSNSやメディアの事例を紹介しながら今はこんな感じの時代になってきてますと語っていく内容の本でした。私はこういうのには疎い方かなと自分では思っていましたけど、事例の半分くらいは知ってましたね。SDGsというとぼんやりしすぎているから、色々な事例からこの社会を読み解くことでSDGsを腹落ちさせていこうという趣旨ですね。グレタさんのスピーチの話とか、育児休暇の取得の話とか、ローソンのプライベートブランド商品のデザインが消費者の意見ですぐ変更された話とか。

消費者にとって正しさが力になっていっているとか、企業が優等生化しているとか、この本で語られているような社会の変化はとても実感しますよね。10年前と今で社会の感覚が変わっている感じ。たぶん今と10年後でもだいぶ変わっているのでしょう。個人的には、今のところどんどん良い社会になっていってるなぁと思っていますけど。特にジェンダーとか、セクハラとかのハラスメント関係は昔の時代が異常すぎたというか。私の時代は教師の体罰とかもありましたし。子供心に頭おかしいなぁと思ってました。だいぶマシな社会になってきてるなぁと思います。10年後20年後の社会も楽しみですね。

SDGsのような社会目標はたしかにぼんやりしていますけど、社会の色々なリスクや不自由が少しずつ改善されていけばいいですよね。今っぽい事例がいっぱい集められていて、現代の社会について考えることができる良い本でした。