読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

竹下隆一郎『SDGsがひらくビジネス新時代』感想

竹下隆一郎『SDGsがひらくビジネス新時代』筑摩書房 2021年9月刊

 

 

だいぶ前に購入していたのですが、地味に感想を書きづらくて溜めておいた本でした。慶応大学の同期なのですよね、この著者の竹下くん。一緒に遊んでました。卒業してからあまり会う機会がなかったのですけど、何かのメディアの編集長としてニュースで見かけて、お~竹下くんだ~と思った記憶があります。新聞社に入社するというところまでしか聞いてなくって。

竹下くんとの思い出は色々あるのですけど、一人暮らしをしている私の家に泊まりに来たときに色んな家を泊まり歩いていて3日くらい家に帰っていないと言っていたとき、すごい人だなぁと思いました。そんな生き方があるのかと。大学には普通に顔を出していたと思うのですけど。あとは、一緒に10人くらいでバスケのサークルを作ったときに、代表は自然と竹下くんになっていましたね。1年ぐらいでサークルは消滅してしまいましたが。とてもなつかしいですね。

さてさて。そんな竹下くんのこの本ですが、現代のSNSやメディアの事例を紹介しながら今はこんな感じの時代になってきてますと語っていく内容の本でした。私はこういうのには疎い方かなと自分では思っていましたけど、事例の半分くらいは知ってましたね。SDGsというとぼんやりしすぎているから、色々な事例からこの社会を読み解くことでSDGsを腹落ちさせていこうという趣旨ですね。グレタさんのスピーチの話とか、育児休暇の取得の話とか、ローソンのプライベートブランド商品のデザインが消費者の意見ですぐ変更された話とか。

消費者にとって正しさが力になっていっているとか、企業が優等生化しているとか、この本で語られているような社会の変化はとても実感しますよね。10年前と今で社会の感覚が変わっている感じ。たぶん今と10年後でもだいぶ変わっているのでしょう。個人的には、今のところどんどん良い社会になっていってるなぁと思っていますけど。特にジェンダーとか、セクハラとかのハラスメント関係は昔の時代が異常すぎたというか。私の時代は教師の体罰とかもありましたし。子供心に頭おかしいなぁと思ってました。だいぶマシな社会になってきてるなぁと思います。10年後20年後の社会も楽しみですね。

SDGsのような社会目標はたしかにぼんやりしていますけど、社会の色々なリスクや不自由が少しずつ改善されていけばいいですよね。今っぽい事例がいっぱい集められていて、現代の社会について考えることができる良い本でした。

新潮新書『野村萬斎』感想

中村雅之『野村萬斎新潮新書 2022年3月刊

 

 

狂言師(兼俳優?)の人について書かれた本。正直よく知らない人だったのですけど、一度狂言を見たことはあったらしいです。何年か前から仕事の関係でお能を観るようになっていて、最初はただ新鮮で楽しいという感じでしたが、色々な美術館でお能の関連の美術品を見かけて、お能を知ることで美術館がもっと楽しくなっていくかなぁと思っています。ちなみに明日5月29日に国立能楽堂道成寺という演目のお能を観てくるのですが、先月くらいに伊豆へ旅行で行ったときにふらっと寄った美術館でこの道成寺の鐘と蛇の絵が飾られてました。お能の演目の1シーンとして。お~これが今度観に行く道成寺のストーリーかぁと思いながら鑑賞できました。

この本は、野村萬斎という人の生い立ちから始まって、家系図の先代や先々代の話など、偉人の伝記みたいな内容でした。父方も母方も良い家柄の人だったみたいですね。正直、家系の話については知識ゼロであまりピンと来なかったです。でもお能の世界は本当に家系が大事らしいですね。なかなか大変な世界だなぁと思います。

この野村萬斎という人、『七つの会議』という映画の主演をしていたそうなのですが、その映画、観よう観ようと思って結局観れなかったのですよね。Amazonプライムに入っているらしいので、近いうちに観てみようと思いました。たしか半沢直樹の人の原作作品だったような気がします。なので、この令和の時代に観ておもしろいのかどうかはとても不安ですが…。

お能については一生の趣味になりそうですし、もっと勉強していきたいですね。美術館も色んなところにどんどん行ってみたいです。1~2年前に世田谷区の静嘉堂文庫美術館というところでお能の仮面の展示会をやっていて、なかなか楽しかったです。ああいう展示会がまたあったら絶対行きたい。静嘉堂文庫美術館、丸の内に移転が決まりましたね。いま移転中で、今年の10月に丸の内で開館するみたいなので、そしたら行ってみたいですね。

原田ひ香『三千円の使いかた』ネタバレ感想

原田ひ香『三千円の使いかた』中公文庫 2021年8月刊

 

 

※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

吉祥寺キラリナ7階の本屋で平積みになっているのを見て購入しました。新刊ではなくて去年の本だったみたいですね。まったく知らない作家さんの小説だったのですが、なかなかおもしろかったです。夜寝る前に読み進めていって、3~4日くらいで読破しました。

姉妹と母と祖母のそれぞれの視点から描かれる短編集という形式の本でした。内容はお金の悩みにどう向き合うかというようなもので、現在お金が足りなくて収入を増やそうという悩みだったり、将来のために貯金しようとして節約する悩みだったり、ちょっと共感できる系の話ばかりで読みやすかったです。全体的に優しい世界観だったので読んでいて安心できました。お金のことを考えていくうちに家族の仲や理解度が深まっていく、みたいな。

こういう複数視点の小説は、他の視点からはこう見えていたけど実際は…みたいな展開がおもしろいですよね。みんなそれぞれ悩みを抱えている感じというか。世界観に深みが出る感じ。

あと、この本を読んでいてとても思ったのですけど、独身でお金が無かったころに読んでいたらもっと共感できただろうなぁということです。今はもう年をとってしまって3千円は誤差の範囲です。仕事もすべて1万円単位で請求ですし。3千円の使いかたを気にすることもなくなってしまいました。20代~30代前半くらいのときは超貧乏サラリーマンでしたので、そのタイミングで読んでいたらもっと世界観に入り込めただろうなぁと思います。