読んだ本の感想など

電車の中やカフェで読んだ本の感想などを。

辻村深月『かがみの孤城』ネタバレ感想

辻村深月かがみの孤城』ポプラ文庫 2021年3月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

すごい評判が良くて文庫化されたら絶対買おうと思ってました。発売してすぐに購入していたのですけど、ようやく読めました。下巻は一気読みでした。これは本当に評判通りめちゃめちゃおもしろかったです。久しぶりに、続きが気になりすぎて本を読むのが止められない状態でした。『スロウハイツの神様』がこの作者の最高傑作と思っていましたけど、これが超えたかもしれない。それくらいおもしろかったです。

なぜか漫画版だけは前にwebで少しだけ読んだことがありました。いつか小説で読もうと思っていたのであまり読みたくなかったのですけど、第1話の完成度はすごい高いと思います。

 

 

たしか漫画版で読んだときは2話以降はあまり盛り上がらなくて、こんなものかーという感じだったと思います。実際この小説版の方でも、上巻の途中くらいまでは盛り上がっていなかったですね。上巻の後半から一気におもしろくなって、下巻はおもしろすぎて一気読みって感じでした。

スロウハイツの神様も最終章が神でそれまでの章はすべて最終章のためにあるという感じでしたけど、かがみの孤城もそういうところありましたね。最後に伏線がつながる感じがすごかったです。

以下ネタバレで語ります。

転校生とはじめから顔見知りというのを夢見るエピソード、ここから始まってここで終わるというのが完璧すぎて感動でした。ハッピーエンド感がすごかったですね。このエピソード自体もわかりみがありますし。こういう共感できる感じがこの作者のすごいところだと思います。

主人公が全員の心情をとてもよく察しているとか、喜多嶋先生が主人公のことを完璧に理解してくれていたり、救いのある物語って感じで安心して読めましたね。7人がだんだん仲間になっていく過程とかも、とても納得感がありました。このあたりが丁寧に描かれていましたので、中盤以降の7人の仲間意識にひたすら共感しながら読めました。応援という感覚で読めました。

クラスの女子や担任の先生の嫌な感じとかも、絶妙にうまく描かれていたと思います。本人の心情を親も他人も理解してくれない感じとか。リアル感ありましたね。逆に喜多嶋先生は理解してくれすぎているせいでファンタジーキャラ感があって、この人の能力で城が生まれてるオチなのかなとも思ったりしました。最後は本当に納得でしたけど。

年代がばらばらだというのは察しがついたのですけど、匂わせすぎていて逆にひっかけなのかなとも思いました。そもそも年代がばらばらだと出会えないのでハッピーエンドにならないんじゃないか…とかも思いましたね。でも結果的には、記憶はなくなった状態で繋がりができるという感じで、とても良い落としどころだと思いました。最後のリオン君が話しかけてくるシーンは本当に泣けました。きっとそれぞれの子供たちが前向きに大人になっていったのだろうと予感させる終わり方で、そういうハッピーエンド感にも泣けました。

全小説の中でトップクラスにおもしろい小説だったなと思います。大人が読んでも超絶楽しかったですけど、たぶん中学生が読んでもおもしろいと思います。安心して人に薦められる小説と思いました。

次もまた評判の良さそうな作品があったら絶対買っていこうと思います。

朝日新書『新型格差社会』感想

山田昌弘『新型格差社会朝日新書 2021年4月刊

 

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現代日本の色々な格差について述べられた本。コロナによってさらに格差が広がっていくだろうという内容でした。家族格差、教育格差、仕事格差などなど、どれも一理ある感じでした。

最近は私の事務所では緊急事態宣言の影響で売上が50%減した人への一時支援金の仕事がとても多いのですけど、色々な業種で売上減少があると実感しています。その一方で、まったく影響がない業種もかなりある印象です。IT系や不動産系など、一切影響ないですね。

本の中では、リモートワーク可能かどうかなどでも格差が生まれていると述べられていました。税理士事務所なんかはリモートワーク可能な職業なので運が良かったと感じていますけど。たまに電車に乗ると以前より間違いなく空いていますので、リモートワークの人が増えたのかなぁと思ったりします。あるいは仕事がなくなって出勤しなくなった人が増えたのかもしれませんが…。

個人的に都内は人が多すぎるのでもっと分散されていくのが良いと思っていますけど、なかなかそうはならないみたいですね。むしろ環境が良いとされるところに人が集まってどんどん環境が良くなっていってさらに人が集まる、みたいな感じなのでしょうか。この本の中でも教育格差だったり地域格差だったりはどんどん固定化されていく方向と言われています。

この本によると都内の収入面や教育面でのランキングは港区が1位で、杉並区は10位に入るか入らないかくらいのところらしいです。まぁそうだろうなというランキングではありますけど。杉並区は幅がありますよね。タワーマンションとか無いですし。

色んな格差が少なくなっていけばいいなとは思いますけど、現状で全然住みやすくて良い国だなぁという思いもあります。国というか周りの杉並区周辺くらいしか知らないですけども。国や自治体に入った税金が、教育やこれからの若い世代にどんどん使われていけばいいなと思っています。

日経プレミア『安いニッポン』感想

中藤玲『安いニッポン』日経プレミア 2021年3月刊

 

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日経新聞の連載シリーズをまとめた本。日経新聞は毎日読んでいるので、当時のこの記事にも見覚えはありました。こういう趣旨の記事って定期的に目にしますよね。日本は他国と比較して物価がものすごく安くなってしまったと。日本人の私の感覚だと他の国の人から聞く物価の高さの話に驚いてしまいますけど。居酒屋で3000円くらい飲んで食べたときに、これアメリカだと余裕で1万超えるとか聞いたり。アメリカはラーメンの一風堂の値段も高いとか。海外旅行とか気軽に行けないですよね。物価を考えたら。

日本の物価や賃金が低いのは、経済が不景気という理由だけではなく、安いのが良いことという日本人の気質の問題もあると本の中で述べられています。これはなるほどですよね。あとは賃金を上げる交渉をしようとしないとか。私もサラリーマン時代に給料上げてほしいと言ったことはなかったですね…。給料については、もっと転職が楽になれば、不満があったら他のところへ行くみたいな感じでどんどん条件の良いところを探していけるようになるかもしれないですね。

物価については、物の値段だけではなくサービスの値段も日本は安いと述べられていました。本当にそういうニュース記事めちゃめちゃ目にしますね。税理士なんかもサービス業ですけど、報酬の水準は全体的に安い方なのではないかと思います。私も何とか考えて高くしてもらったりしていますけど、もっとスムーズに報酬アップを要求できるようになればいいなぁとはいつも思っています。報酬を上げてもらうとき、私も日本人気質なのか、来月から報酬アップでお願いしますとはなかなか言いづらくて、とりあえず1年間は今のままの報酬額でやりますけど来年相談させてください、みたいな感じでお願いしていますね。アップする予定の金額だけ今お伝えして。それくらい値上げには気を使ってしまっています。

なかなかこの国でインフレや賃上げはむずかしいだろうというのがこの本の結論のようですね。労働生産性を高めたり、日本人を意識を変えたりする必要があると。これはすぐには実現しないだろうなと思います。逆に言えば今この国である程度稼ぐことができたら安い物やサービスを爆買いできてボーナスステージということになりますね。私は典型的な現代日本人でまったく物欲がないので、仮にボーナスステージで爆買いできたとしても買いたいものが無いですけども。アウトレットに行って何も買わずに帰ってくるとかありますし。時間に余裕ができたらこうやって本を読んだりして過ごしていますし。こういう現代日本人がいるから物価や賃金が上がっていないということなのかもしれませんが…。

ちなみにこの本、ちょうどYoutuberの人が解説動画をアップしていました。

https://www.youtube.com/watch?v=Zxg8L7Nka1g

この人のチャンネル結構好きですね。仕事中によく流しています。この動画内で、もともと日本資本のテレビ局や芸能事務所(お笑い事務所?)で仕事をしていたのが今はアメリカ資本のYoutubeで仕事をしているというのが象徴的だと語られています。そのうち色んな業界でこういうことが起こってくるのかもしれないですね。