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深水黎一郎『最後のトリック』ネタバレ感想

深水黎一郎『最後のトリック』河出文庫 2014年10月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

本屋で平積みにされているのを見て『ミステリーアリーナ』の人の新作だなぁと思って購入しました。そしたら、新作ではなかったのですね。いまこの文章を書くために本の後ろの方を見て、それで初めて知りました。完全に騙されましたね。この小説のオチ以上に騙されましたね。まぁ騙されたというより私が勝手に勘違いしたという状況ではありますが…。

読者が犯人のミステリと作中で明言されているのがおもしろくて、最後までオチが気になって読み続けることができました。超能力がどういう風にオチに結びつくのかも予想つかなくておもしろかった。文章も読みやすくて、さらさら読めました。

ネタバレで語りますけど、読者が犯人というミステリは不可能だと作中で語られていましたけど、私は読者が犯人のミステリを以前読んだことがある気がしていて、読者が犯人ってすでにあるんじゃ…と思いながら読んでいました。でもそのタイトルをまったく思い出せなくって、もしかしたら自分の妄想だったかなーという感じでした。ちなみにそのすでに知っていた読者犯人オチというのは、人に認識されるとダメージを受ける能力の持ち主というような設定です。そしてダメージが蓄積されると、死ぬ。人に読まれることによってダメージを受けていく、というものです。つまり読者が、読むことによって、殺す。というものです。でもそれってこの『最後のトリック』のオチとかなり近いのですよね。まぁ読者が犯人というとそういう展開しかないということかもしれませんが。というか、単に私がこの『最後のトリック』のオチを誰かから聞いたことがあったということかもしれません。この小説は新作じゃなかったみたいですし。

最後の方で、「このトリックを実現するためには、深水黎一郎はそれまで、そこそこ読める本格推理小説を、何冊かは上梓しておく必要があった。」という一文が出てきたときは笑いました。あ、これ主人公=作者なのかぁ、と。

正直ミステリーアリーナの方が全然おもしろさは上だったと思いますけど、またこの作者で何かおもしろそうなものが出たら買ってみたいなーとは思いました。