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辻村深月『朝が来る』ネタバレ感想

辻村深月『朝が来る』文春文庫 2018年9月刊

 

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※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。

 

何日か前に読破していました。ちょうど手元の小説をすべて読み終えたタイミングで本屋の新刊コーナーに並んでいるのを見て、購入してきました。この作者の本は『スロウハイツの神様』はガチの神作だったと思いますが、他の作品は良かったり良くなかったり、まぁ普通だったり、そんな感じの認識でした。なので特に期待せず読んでいたのですが、なかなか引き込まれる物語展開と題材で、2~3日くらいで読み切ることができました。序盤中盤と心えぐられる系のしんどい描写が続く小説でしたけど、最後はかなり泣けましたね。良い小説だったと思います。

不妊治療という題材がもう他人事ではないというか、私も完全に30代後半ですし、これから結婚できたとしても高齢出産ということになります。出産はしないですけども。ちなみに検査とかも人生で一度もしたことないですし自分の精子が大丈夫なのかどうか一切わからないですね。リアルに不安になるかもしれない。

どういう物語展開か知らずに読み進めましたけど、前半部分と後半部分でがらっと違う物語になってびっくりしました。でもどちらもめちゃめちゃ引き込まれて続きが気になる感じでした。前半部分を読んでいるときは佐都子夫婦は不妊治療をがんばるものすごく不幸な人たちと思えていましたけど、後半部分を読んだあとはしっかり稼いで金銭的に余裕のある恵まれた人たちという風に思えたのがおもしろかったですね。

最後、ひかりが佐都子&朝斗に歩道橋で見つけられる終わり方は、本当にほっとするというか安心感のある終わり方だったと思います。この最後のシーンはかなり泣けました。これから幸せな人生を歩んでいってほしいという気持ちで。ずっと心えぐられる系の描写が続いてましたし。

最初の方を読み始めたときはママ友同士のめんどくさい人間関係あるあるネタの小説なのかなーと思ったらがらっと雰囲気が変わって、また後半部分でもがらっと変わって、おもしろかったですね。ストーリー的にはファンタジーを感じる部分もありましたけど、文章も読みやすくて展開もスピード感があって、やっぱりいい作家だなぁと思いました。そういえば『かがみの狐城』ってやつを、文庫化されたら読んでみたいのですよね。めちゃめちゃ評判いいみたいで。