深水黎一郎『ミステリー・アリーナ』講談社文庫 2018年6月刊
※小説の感想はすべてネタバレ有りで書いていこうと思います。
ここ何ヵ月かで読んだ小説の中で一番おもしろかったです。
本屋の新刊コーナーで見かけて購入しました。全然知らない作者の知らない小説でしたけど、何年か前にでっかい本で出ていたのが文庫になったという経緯の本のようでした。最初から最後までおもしろくて、久しぶりに「スポーツジムに行くか小説の続きを読むか」で迷ってしまいました。普通にジムを選択しますけど。
回答者の人たちの回答がひたすら叙述トリックの連発で、序盤から主人公が犯人とか男女の錯誤とかいろんなパターンを出し尽くす勢いだったのが本当におもしろかったです。最後の方になっても意外性のある回答が続くのがおもしろい。全員犯人説とか。
司会の人と回答者の人たちの会話のノリもおもしろかったですね。笑えるシーンが多かった。主人公の名前がまだ出てきていない、からのいきなり「三郎」とかも、かなり笑えました。
最後の、全部の回答が間違いになるようにシナリオを複数用意してましたオチはちょっとしらけましたけど、ミステリーヲタなら常識でしょで強引に押し切るノリはめちゃめちゃ笑えました。屋敷もので地下室があると言ったら誰かが隠されている、とか。一人多くなりそうだったらたまを猫にして少なくなりそうだったらたまをバレリーナにすればいい、とかの理屈も笑えましたね。
この作者の他の小説にも興味が出てきましたけど、何となくこれを超える作品は無さそう。ギリギリのバランスで成り立ってる感というか、ちょっと間違えればしらけたまま終わる可能性もある小説だったと思いますし。